第十九話 魔神の言葉
賢者会議の後、ペアになって魔人を探すために近隣の森や草原を隈なく捜索するが、一向に魔人の姿は現れなかった。
会議から一週間経っても魔人の情報はない。毎日賢者が交代で魔人を捜索するが、それでも見つからない。
「くそ!どこにもいねーじゃねーか!」
苛立ちのあまりバーンは会議室で声を荒げた。
「落ち着きなよ、バーン。それはみんなが思っていることだ」
「そうよ、それに...ムカついているのはあなただけじゃないのよ...」
バーンはアークとレインの言葉を聞いて落ち着きを取り戻した。
「...悪かった」
「まぁしょうがないよ...今回はユアン君が関わってくるかもしれないんだ。誰だってそうなるさ」
「...ねぇ...もしもの話だけど...もし、ユアン君が生き返ってラウレス側についたらどうする...?」
二人は難しい顔をしながら黙って下を向く。
ユアンが敵になるってことは、人類の終わりを意味する。対抗できるのはほんの数人だが、それに合わせてラウレスや他の魔人達がいるとなるとこの世界は終わりだ。
「そうなったら...俺らの手には追えないな...」
「でも、ケント君やアイちゃんに任せるのも...」
そう...もしユアンが生き返ってラウレス側についた時には、ユアンを敵として処理しなければならない。それはユアンを殺すということ。それをあの二人に任せても良いのか...
「もし、そうなった場合は私たちの手でユアン君を殺さないと...あの子達には荷が重すぎるわ」
もう二度と親友が死んでほしくないし、ケント君達の手でユアン君を殺してほしくない。
レインはユニバの話を聞いた時からなんとなくこんなことになると予想していた。
「まぁ...そうだな。それに、ユアンがあっち側につかないことを祈るしかねえな...」
その願いはみんな同じ気持ちだった。
今日の魔人を捜索するのは、ケントとアイだった。
ケントはいつも通り周辺の森で、アイはヴァントが亡くなった付近の草原を探していた。
「はぁ...全然見つからない...」
思わず愚痴をこぼしてしまう。それぐらい魔人を見つけることが困難だった。
ユアンが死ぬ前までは、魔人の報告がいくつもあったが、今は数が減り報告が一切上がってこない。
アイはユアンが生き返る可能性があると聞いてから、ちゃんと寝れていなかった。それだけ気になってしょうがなかった。
ユアンに再び会えるかもしれないという嬉しさと、一生会えないかもしれないという悲しさで、胸が押しつぶされそうな感覚で眠れていない。
一刻も早く魔人を見つけないと...
必死になって探していると、背後から聞いたことがある声が聞こえてきた。
「クックック...何をそんなに必死になって探している?」
その声を聞いてアイは背筋を凍らせた。咄嗟に背後を振り向き距離を取る。
そこには、驚くべき人物が立っていた。
「な......なんで......お前が!?」
瀕死の状態でボロボロだったはずのラウレスが今目の前に立っている。
アイはすぐに信号弾を空に向けて放とうとするが、ラウレスに止められる。
「今、その信号弾を撃てば俺は消えるよ。そうなれば君の欲しがっている情報は手に入らなくなるけど...」
それを聞いてアイはゆっくりと信号弾を下ろした。
「そうそう...やっぱり君は物分かりがいいね...」
「あなた達の目的は何!?それに...どうしてその姿に戻っているの!?」
「まぁ...落ち着けって...順番に話していってやるよ。まずは、俺たちの目的はこの世界をぶっ壊すこと。そのためならなんでも手段は問わずにだ。そしてお前らにとって特にに嫌なことをして潰すつもりだけどな」
その言葉を聞いてアイはラウレスを睨みつける。
「そして、二個目の質問についてだが...これはダミーだ。実際の俺の体はユアンのおかげでバラバラだ。だけど、俺にはコピー粘度を持っていてな、それに触れることで触った対象者の形元のままでコピーできる。まぁ、戦闘力は十分の一ぐらいには下がるけどな。だから今の俺の戦闘力は、あの英雄の子孫達でも簡単に倒せるってことさ」
そう言うと、ラグレスはその場を去ろうとするが、アイは最後の質問をした。
「ラウレス...あなた...ユアンを使って何かしようとしてるの...?」
すると、ラウレスは嬉しそうな顔をしながら「さぁな」とだけ言ってその場から立ち去ってしまった。
ラウレスの反応で全てが確信となった。
ラウレス達はユアンを生き返らせて何かをするつもりだ。そうなれば、止められるのはアイとケントしかいない
アイは急いで報告するために城へと戻った。
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