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第五十二話 進む道

 ラグレスとリキトが無断で森に入ってから数日が経った。ラグレスとリキトが騎士団で修行している間、アイはケントに、身体強化の修行をつけてもらっていた。

 毎日朝起きてから夕方になるまで組み手ばかり。アイの体だけあざだらけになっているが、本人は一切弱音を履かなかった。


 たまに、ラグレスとリキトの様子を見に、騎士団に出向く時があるが二人はボロボロの状態で今にも死にそうな姿をしていた。その姿を見て、私とケントは驚きのあまり言葉が出なくなりそのまま騎士団を後にした。

 そんなこんなで、ケントに修行をつけてもらっていると一人の兵士が訓練場にやってきた。


 「失礼します!アイ様。お客さまです!」

 「私にお客さん...?誰だろう...」

 「さぁ?とりあえず行ってみたら?なんなら一緒に行こうか?」

 「うん。お願い」


 お言葉に甘えてケントにも一緒に来てもらう。私のあざだらけの姿を見てお客さんが驚かなければいいけど...


 アイとケントは王城の前にある門のところまで歩いていくと、三人の人影があった。

 そこには、ルーカス王とジェロンド、時の魔女の姿があった。


 「る、ルーカス王!?それにジェロンドさんまで...!」

 「アイ、久しぶりだな。驚かせるつもりはなかったが、今回は緊急ということでアポなしで来させてもらったよ」

 「アイちゃん久しぶりだね。元気にしてた...というよりかは随分と無茶しているみたいだね...」

 「私、身体強化が苦手で、隣にいるケントに修行をつけてもらっているんです」

 「へぇ...隣があのケント君か」

 

 ケントは軽く会釈をする。

 ジェロンドはケントの顔をマジマジと見る。


 「なるほどね。ケント君がアイちゃんと同じぐらいの強さを持ってることがよくわかるよ」

 「見ただけでわかるんだ」

 「そりゃね。君とアイちゃんの魔力は普通の人と違うからね。ユアンの時もそうだったけど、神の魔力を使える人の魔力は量と質が違うんだよ」


 門の前で長話をしていると、ルーカス王が軽く咳払いをする。


 「オホン!そろそろここにきた目的を話した方が良くないか?」

 「それもそうですね」


 ルーカス王は丁寧にことの顛末を聞かせてくれた。

 ユアンが死んだことでお墓前りと今後のことについて話し合いに来たということだ。移動は時の魔女が刻を止めながら高速で運ばれたらしい。


 「それでは、先にユアンの墓まで案内してくれるか?挨拶しないとユアンに怒られそうだからな」

 「まぁ、あいつのことだから化けて出てやるとか言いそうだけど...」

 「それ、手紙にも書いてありました」


 ケントの発言を聞いてその場で軽く笑いが起きる。短い期間しかいなかったのにユアンのことをよく知っているなぁと思った。


 「さて、わしはエオメルにこのことを話してくるからジェロ坊たちは終わったら戻ってこい。良いな?」

 「ああ、わかったよ」


 そう言って時の魔女は王城の中へ入り、俺たちはユアンの墓石へと案内した。ユアンの墓跡は王城の庭にあり、歴代の王たちの隣に建ててもらった。最初はそこまでしなくてもいいと言ったのだが、陛下が断固として譲らなかった。


 墓石の前に立つと、ルーカス王とジェロンドは片膝を突き、手を組んだ。


 「ユアン。濃霧の森の件感謝する。後のことは我々に任せてゆっくり眠ってくれ」

 「ユアン。お前が一番辛い時にそばにいてやれなくてすまなかったな。今度あの世で会うことがあったら、こっちで起きたこと全部話してやるから楽しみに待ってろよ」


 二人の言葉を聞いた瞬間、泣かないと決めていたはずなのに涙がポロポロと流れ出た。


 「あれ...どうしてだろうな...」

 「私も...涙が止まらない...」


 それを見たジェロンドは、私たちの頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でた。


 「いいんだよ。好きなだけ泣けよ。自分のために泣いてくれる人がいるってすごい幸せなんだぞ。だから思いっきり泣けよ」


 それを聞いてさらに涙が止まらなくなる。

 一緒に生きていて欲しかった、ユアンの苦しみを一緒に背負っていきたかった。色々な感情が混ざり合い、嫌なことがたまにあったけど、死んでしまった後にはもうそれは無くなってしまう。


 五分ほどでようやく涙が落ち着いてきた。そのタイミングで私たちは来た道を戻り門の前へと戻った。すると、時の魔女が城から出てきて、「早く来い」と言い王城の中に入った。王城に入ってすぐに陛下がいる執務室へと通され、ノックもなしにドアを開けると椅子に座っていた陛下が立ち上がりこちらまで歩いてくる。


 「これは、ルーカス王。遠いところわざわざ」

 「いやーエオメル王もご無沙汰です。すみませんな、約束もなしに来てしまって...」

 「いやいや、それより立ち話もなんだからどうぞ座ってください」

 「これはどうも。私たちもあまり長いはするつもりではないので手短にお話しします」


 そう言って二人の会話が弾んでいく。護衛となる俺たち三人は部屋の外で待機となった。

 することもなかったからジェロンドさんにあれこれ質問をした。


 「ジェロンドさんはどの神の加護を持っているんですか?」

 「俺は風神だよ。確かユアンが雷神で、アイちゃんが女神だったよね?ケント君は?」

 「俺は炎神です」

 「炎神か...ユアンと同様聞いたことがない神だな。アイちゃんの女神の加護は有名だけど...」

 「まぁ...私のは初代勇者と同じ加護でしたから...」


 初代勇者と聞いて空気が少し重くなる。


 「そんなに初代勇者...ラウレスは強かったのかい?」

 「はい...それはとてつもなく。ユアンが負ける相手ですから...」

 「そんな相手がまだ生きているんだもんな...俺も修行するかな...」

 「だったら!今度俺と戦ってください!アイから話は聞きました。ユアンと戦った時、ほぼ互角だったって」

 「そんなことはないと思うけど...まぁ俺は別に構わないよ。ケント君と戦うの」

 「本当ですか!?じゃあ今度俺がクローム王国に行きます」

 「ああ、その時はお互いいい勝負をしよう!」


 二人が約束を決めた瞬間、ドアがガチャリと開いた。


 「ジェロンド、もう話は終わったから帰るぞ」

 「え?もうですか?」

 「こちらにあまり長居するわけにもいかないし、仕事をルリネに任せたままだしな」

 「別にあの仕事くらい全部あいつに任せても良くないですか?」

 「いや、流石に可哀想だと思わんか?」

 「思いませんね」


 ジェロンドがキッパリ言うとルーカス王は「はぁ...」とため息をつきながらジェロンドと一緒に帰って行った。

 門のところまで見送りに行くと、一瞬で三人は姿を消した。


 「こうして知らない間に時が止まっている時に、あの三人は高速で移動してると思うとゾッとするよな...」

 「うん...ほんとに時の魔女がすごいってよくわかるよ...」

明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!

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