第四十四話 見極め
「い、今からですか!?」
シエラの言葉で他の賢者たちは動揺した。
「そうだよ?早い方がいいでしょ?」
「ですが、今彼らは学園に...」
「そんなもの、賢者が呼んでいるって言えばどうとでもなるよ」
アークは何かいいたそうな顔をしながら「わかりました」と力ない声で答えた。ラグレスたちを呼びに行くために、アークは部屋を出て学園へと向かった。
兵士を使って間接的に呼びに行くよりも、賢者本人が呼びに行った方が信頼性もあると考えたのだろう。
アークが直接予備に行ったおかげか、十数分でラグレスたちが城へと到着した。ラグレスたちが案内された場所は訓練場がある第一訓練場だった。
すでに、賢者全員第一訓練場に集まっており、最後に到着したラグレスたちで全員揃った。
「な、なんですか?俺たち何も知らされないまま、急に呼び出されたんですけど...」
不安そうにリキトが賢者たちに質問した。
「まぁ...その話は後にして、君たち三人...今から私と闘ってほしいんだ」
シエラはゆっくりと歩きながらラグレスたちに近づいていく。
「い、いきなりですか!?」
「そう、いきなり。だって、戦争中で「今、都合悪いんで戦わないです」なんて通用しないでしょ?」
「だからって準備がありますよ!
リキトの言葉を聞いてシエラは少し考える。
「わかった、準備していいよ。君たちが望むものは全部こっちで用意するから。その代わり本気できてね?」
「わ、わかりました」
十分後、三人は学生服から戦闘用の服装に着替えられている。リキトは剣を、エルクは杖、ラグレスに至っては手ぶらの状態だ。
「ふーん...じゃあもう初めていいのかな?」
「はい!大丈夫です!」
エルクが答えた瞬間、目の前から闇玉が飛んできた。
咄嗟に火玉で相殺しようとするが、込められていた魔力の量が違いすぎて三人同時にシエラの攻撃を受けてしまった。
「ねぇ?そんなものなの?私たちの子孫っていうからもっと期待したけど、たった一度の攻撃すらもまともに対処できないなんて...」
シエラはがっかりした様子でラグレス達に視線を送る。
「おい、大丈夫か?」
「うん、平気」
「俺も」
三人は起き上がると、小さな声で作戦を立てる。
「俺とリキトがシエラ様に接近して攻撃を与えるから、その隙にエルクは超火力でシエラ様に攻撃しろ」
「「わかった!」」
三人の顔つきが変わり、戦闘体制に入っていく。
作戦は立てたようだけど...さて、通用するのかな?
シエラは三人が仕掛けてくるまで動く様子はない。ここで動いてどう動くのか見てみたい気持ちはあったが、作戦を立てていたからには、自分から動くのは野暮だろう。
すると、ラグレスは右手に光剣を出して、リキトと一緒に向かってくる。身体強化もしているようで速さはなかなかのものだった。
二人の斬撃は魔力障壁で防ぎつつ、飛んでくるエルクの魔法を防ぎながら三人同時を相手にしている。
「くっそ!めちゃくちゃ硬いな、あの魔力障壁」
「ラグレス、アレをやるからその間時間を稼いでくれないか?」
リキトがラグレスに頼み事をすると、ラグレスは嫌な顔ひとつもせずに「オッケー!」と答えた。
二人が一斉にシエラに斬りかかるが、魔力障壁で防がれる。リキトはその障壁のせいで後方へと吹っ飛ばされてしまう。それでもラグレスは何度も何度もシエラに斬りかかる。
「お仲間が一人吹っ飛ばされたけどいいの?」
「はい...あいつなら平気ですよ!」
何度も攻撃しているせいか、ようやく障壁にヒビが入り込む。
それと同時に、シエラの立っている地面が、泥沼化してきている。
「これは...!?」
吹っ飛ばされたはずのリキトを見ると、地面に手を当てて魔力を流している。
次第に自分の魔力が泥沼へと吸収されていく。
「これは...泥沼吸収」
「正解です!」
魔力が吸い取られ、防御が薄くなったところをラグレスがものすごい速さで斬りかかる。
動きが鈍くなった瞬間、遠くにいたはずのエルクはすぐ近くまで接近していた。エルクは私の脇腹に手を当てて叫んだ。
「獄炎の矢!!」
シエラの形は爆炎によってかき消された。
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