表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
166/307

第三十八話 契約

 風呂を出た私は、自分の部屋で休んでいた。

 ベッドに寝っ転がりながら自分の右手についた契約の印を見ている。

 もし...約束を破ったらどうなるのか...恐ろしくて聞けなかったけど、多分、相当危険なことが起きるような気がする。


 ベッドから起き上がり、創造の魔女の部屋へと向かう。

 一人で行くのは心細いが、そうでもしないと約束を破ることになる。


 創造の魔女の部屋に着くと、ドアの前で大きな深呼吸をして自分を落ち着かせる。

 ドアを2回叩き、中にいるかを確認する。


 「入ってもいいわよー」


 すぐに返事が来た。どうやら私がすぐに来ると予想していたのか...

 ドアノブに触れてドアを開けようとする。だけど、その瞬間、「創造の魔女と二人きりになったら何をされるかわからんぞ」という、時の魔女の言葉が頭をよぎった。

 恐怖はある...けど、私が犠牲になれば誰かが救われるのであればそれでいいと思える。そう...ユアンがそうだったように...


 勇気を出してドアを開けると、部屋着姿ではなく、今日一日来ていた服を身につけていた。


 「本当に一人できたんだね...偉い偉い」

 「...話ってなんですか...?できれば、手短にお願いします」


 警戒心を出さないつもりだったが、やはり魔女を目の前にすると警戒心は強くなってしまう。


 「別に何かをしようってわけじゃないよ...そうだ!お茶でも飲む?少しは落ち着くよ?」

 「いりません...」

 「あらら...相当警戒されてるわね...」


 そう言いながら創造の魔女は自分でお茶を入れ始めた。


 「なるほどね...起きているアイちゃんはそんな感じなんだね...クレーナの言ってた事とは少し違うね...」

 「クレーナって誰ですか?」

 「ん?私たちと同じ魔女で、暴虐の魔女って呼ばれてるけど...」

 「それでなんで私の名前が出るんですか!?」


 明らかにおかしい。私があったことある魔女は時の魔女と今日初めて会った創造の魔女の二人だけだ。なのにどうして暴虐の魔女の名前が出るんだろう...


 「あー知らないのは無理もないね...あなたが一回ドミノ王国に連れ去られた時にクレーナがあなたを見ているらしいんだよね。あの時のアイちゃんは優しくて迷いのない真っ直ぐな子って聞いていたけど、今は少し違うね。優しいのは変わらないけど、何かに迷っているのがよくわかる」

 「.........」

 「多分、この前亡くなったアイちゃんの幼馴染のことを引きずっているのかな?」

 「.........」


 段々と私の質問からユアンのことに変わっていく。立ち直ったとはいえ、ユアンの話を出させるのはまだ余裕はない。


 「それで...アイちゃんは変わったのかな?自分が犠牲になれば他の人が助かるって...」

 「べ、別にそんなこと...」

 「でも...大丈夫、私がいればそんなことはさせないから...」


 段々と体が熱くなってくる。それに思考がうまくまとまらない。


 「な...何を...」

 「私がずっとアイちゃんのそばにいてあげるから...」


 拒否したいのに、頭の中では肯定する文字しか浮かんでこない...


 「は...は、」

 「そこまでじゃ!」


 突然部屋のドアが勢いよく開いた。そしてその先には時の魔女ユニバが立っている。


 「あら...何かと思えばユニバじゃない...何か用かしら?」

 「アイを洗脳しようとしても無駄じゃぞ」

 「...いつからバレてた?」

 「風呂の時じゃ...お主がアイの背中を流している時、どうも様子がおかしかったからの。普通なら飛びついて激しいことをするはずなのにそれをしなかった。それに、「期間契約(イージーコントラクト)」使うなんてな...」


 うっすらと魔女たちの会話を聞きながら椅子に座る。段々と思考がはっきりとしてきて、さっきよりかはまともな判断ができそうだ。


 「あら、それだけで私を疑ったと?」

 「それだけじゃと?魔女にとってはそれで十分じゃろ...魔導師ではできない域に達しているのが魔女じゃからな。それに、アイに掛けた契約は、契約ではなくお主の部屋に連れて来させる軽い洗脳じゃったな?」

 「それまでバレてた?はぁ...もうそこまでくれば降参よ!私が悪かったわ」


 創造の魔女はため息を吐きながら紅茶を啜る。


 「じゃが、なぜこんなめんどくさい方法を使ったんじゃ?他にももっといろいろあったじゃろうが」

 「止めて欲しかったのよ...誰かがアイちゃんの行動を不審に思って止めてくれるのを...」

 「どういうことじゃ?お主はアイが欲しかったんじゃろ?それなら...」

 「いくら私でも、大切なひとを失った子をどうにかしようとは思わないわよ!ただ...アイちゃんが時々見せる悲しげな表情があの時の私と重なっちゃってね」

 

 時の魔女の顔は少し悲しそうな表情をする。


 「例のアレ...か」

 「うん...その時の私は誰にも必要とはされなかった。アイちゃんも同じなのかと思って今みたいなことをしたけど、止めに来てくれてほっとしたよ...ユニバ」

 「まぁ、わしは「未来予知」で何が起きるか分かってたけどな」

 「そこは何か慰めの言葉とかあるでしょ!?」

 「はぁ?お主が勝手なことをしておいて何が慰めじゃ!」


 何か魔女の上下関係がわかってきたような気がする。


 「あ、あの...じゃあこの手の甲に描かれたものって...」

 「ああ、それはもうすぐ消えるからそのままでも大丈夫よ。その契約自体破ってもなんのペナルティもないから。騙してごめんね... アイちゃん」

 「い、いえ...大丈夫です...」

 「ほら!これが正解なのよ!ユニバも見習って!!」

 「お主は黙っておれ!!」


 時の魔女が創造の魔女を平手打ちにして黙らせる。

 創造の魔女は殴られた頬をさすりながら椅子に座り直す。


 「さて...話はこれだけじゃないんじゃろ?何を隠してる?」

 「なーんだ...それもバレてるのかー」

 「当たり前じゃ、わしを誰だと思っている?」

 「おっさん口調のロリ少女」


 今度は平手打ちではなく、時の魔女の拳が創造の魔女のボディを抉る。

 うまく入ったのか、創造の魔女は悶絶してその場から動けない様子だった。


 「...で?何を隠している?」


 悶絶している創造の魔女を見下しながら時の魔女は静かな口調で言う。


 「え、えーっと...ね 死人を生き返らせる研究」


 「はぁ!?」「ええ!?」


 創造の魔女から出た言葉は驚くほどの内容だった。

いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ