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第三十七話 ご褒美

 「はぁ...はぁ...全部終わったわよ...!」

 「ご苦労じゃったな。ご褒美は用意しているからまずは風呂にでも入ってこい」


 汗だくの状態で創造の魔女は全ての民家、壊れたところ全てを直した。復興の手伝いをしていたクローム王国の兵士たちの仕事を全て奪ってしまった。数分で壊れた家が元通りになる光景を見て「我々は必要なのか...?」と唖然としていた。

 作業を手伝ったとはいえ、直したのは創造の魔女だが、それでも木材を運んだり材料を運ぶのはなかなか体力を使った。


 「期待してるから!」


 そう言って急いで城の風呂へと直行した。

 創造の魔女は鼻息を荒げながら脱衣所で服を脱ぐ。


 これが終われば、あとはお楽しみの時間ね...

 早くお風呂を終わらせなきゃ!


 アイのことしか考えていなかった創造の魔女は顔がだらしなくなっている。

 風呂の扉を開けると湯気で真っ白な光景が広がっている。さすが、王城の風呂となれば一般の風呂よりも豪華だ。


 「なかなかの広さね...さてと...」


 ゆっくりと湯船に入り今日働いた疲れを癒していく。

 ひと汗かいた風呂はやっぱり気持ちがいいもので、自然と力が抜けていく。


 「はぁ〜やっぱり気持ちいわね〜」


 すると、ガラガラと扉を開ける音が聞こえた。音のした方を振り返ってみるとそこには、バスタオル姿のアイとこの国の王女クレア、それに時の魔女ユニバが立っていた。


 「え、ちょっと!?なんで!?」

 「言ったじゃろ?褒美は用意していると...これがその褒美じゃ」


 興奮しているのかのぼせているのかよく分からないが、とにかく顔は真っ赤になっている。


 「あの...今日は、私たちの国のために働いてくれてありがとうございました!お礼とはなんですが...お、お背中でもお流しします!!」


 恥ずかしそうに言うクレアを見て創造の魔女はさらに興奮する。すかさず時の魔女がツッコミで創造の魔女を蹴り飛ばすが、クレアとアイのバスタオル姿を見てダメージは全く受けていなかった。


 「はぁ...はぁ...食べちゃいたい...」

 「え...?」

 「アホか!」

 

 その後、アイとクレアと一緒に創造の魔女の背中を流す。

 終始創造の魔女は「はぁはぁ」と息遣いが聞こえていたが、聞こえないふりをした。


 「そうだ!私の背中を流してくれたんだから私もお礼をしないと!」

 

 突然、創造の魔女から変な提案をされる。


 「でも...それじゃお礼の意味が...」

 「大丈夫よ!これもお礼のうちに入るから!だから...ね!」

 

 正直この提案に戸惑っている。さっきまでの様子を知っているからこそ背中を流してもらうと言う行為はとても危険だ。だけど、これを断ってしまったら機嫌を損ねてしまうかもしれない。


 「じゃ...じゃあ、お、お願いします」

 「任せて!!!」

 

 さっきはクレアが頑張ってくれたんだ...今度は私が頑張らないと...

 覚悟を決めて創造の魔女と場所を交代する。どんなことをされるか怖かったけど、案外普通に背中を流してもらっただけだった。


 「はーい!これで終わりだよー。やっぱり若い子の肌はすべすべで綺麗だねー」

 「あ、ありがとうございます...」

 

 褒められたと同時に何事もなくてホッとする。


 「どうしたの?よそよそしいけど...?」

 「あっいえ、なんでもないです」

 「えー、そんなこと言われると気になっちゃうなー」

 「あの...本当になんでもないです!」


 少しの言葉の間違いで気に障ってしまうかもしれないと思うとプレッシャーが半端ない。

 相手は魔女だ。魔女の力は少なくとも賢者二人分の強さを持っている。もしかしたら私やケントの力を凌駕しているかもしれない。


 「ふーん...まぁいいよ。それよりさ...お風呂終わったらさ、私の部屋に来てくれない?ちょっと聞きたいことがあるからさ!」

 「えっ...でも...」


 すると、創造の魔女は私の右手を握り呪文を唱えた。


 「期間契約(イージーコントラクト)

 「えっ!?」


 私の右手の甲には赤い蝶の模様が浮かび上がった。

 特に痛みはなく、何も変化はなかった。


 「あの...これは...?」

 「今日この後、私の部屋に一人でくる契約!もし...アイちゃん以外に誰か連れてきたら...どうなるか知りたい...?」


 背筋がゾクゾクと寒くなる。約束を破った時どうなるかなんて聞きたくない。それどころか、私の承諾もなしに契約をするなんて、本物の魔女だと改めて再認識した。


 「もし...行かなかったらどうなるんですか...?」

 「その時は...ずっと私の側を離れないで死ぬまで一緒に暮らす...かな?」


 それを聞いた瞬間、もう逃げ場はないと確信する。


 「わ、わかりました...へ、変なことはしないでくださいよ」

 「大丈夫。言ったでしょ?聞きたいことがあるって...」


 そう言って創造の魔女は湯船に再び浸かり始めた。

 私は手の甲を見ながらこの後何が起きてもいいように頭の中で対策を考えた。

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