第二十四話 捜索
「ラウレス様!万歳!!」「ラウレス様!万歳!!」
あちこちでラウレスを応援する声が聞こえる。それも市民全員...
「ちょっと...どうなってるの...?」
非難誘導していた賢者達は全く理解できていなかった。先程まではラウレスを危険視していた市民達は、先程のラウレスの声を聞いた途端、ラウレスを応援し始めた。
「久しぶりだな...応援されるのは。なんとなく力が入る感じだな...」
「何が応援だ!無理やりさせているくせに!」
そう...これはラウレスのスキル「洗脳」だ。以前アウスト王国国王がラウレスに洗脳されてしまい、王都を襲撃された。俺は陛下が洗脳されていることに気づかず、陛下の命令で遺跡の調査へと行かされていた。その時点でおかしいと思っていたが、まさか洗脳されていることとは思っていなかった。
「無理やり...?無理やりってのはなぁ!こうやるもんなんだぜ!!」
再びラウレスは、石に話しかける。石によってラウレスの声は再び王都中に響き渡る。
「ユアンの仲間の賢者達を捕縛せよ!力づくでもいい!何が何でも捕縛しろ!!」
その瞬間各地から、「ラウレス様!万歳!!」などの声が聞こえてくる。そして、市民達は近くにいる賢者達に一斉に襲いかかる。
「ちょっと...!やめなさい!」
レインの周りにいた市民はレインの身につけているローブを引っ張り始める。
「この!!」
軽い魔力の衝撃波を出して市民達から距離を取る。その衝撃波によって市民達は一斉に倒れ込む。
「なんなの...一体...」
だが、安心したのも束の間、倒れ込んだ市民達は再び起き上がりゆっくりとレインに近づく。
「ラウレス様の命令を...」「命令...命令...」「賢者...ほ、捕縛...」
市民達の会話能力も低下してる。それに加えて意思がなくレイン達の他に操られていないものは少ない。
「レイン!どうなってんだ!?これは!」
「私にもわからないよ!ラウレスの声が聞こえたと思ったらみんなおかしくなって!」
声が聞こえた方を振り返ると、家の屋根の上にいバーンが立っていた。バーンの周りには市民は居らず、屋根の上に上がってこれないらしい。
レインも屋根の上に上りバーンと情報を共有する。
「さて...これからどうするか...」
「多分、正気があるのは私たち含めて賢者だけだと思う。他にもいるかもしれないけど......」
「それじゃあ、まずは正気な奴を見つけて保護が優先だな」
「でも、どうやって...?」
確かにこんな大勢の中で正気な人を探すのは困難だろう。それにどうして自分たちは正気で保っていられるのかがまだ理解できていない。
「そんなもん一眼見ればわかるじゃろ!」
年寄りくさい話し方に少女の声...声がした方を振り向くと褐色肌で銀色の髪をした少女が立っている。
「「と、時の魔女!?...とアーク!」」
「やあ...ちょっと前に時の魔女様と会ってね...」
時の魔女の後ろにはアークの姿もある。
「お主達何をそんなに悩んでいる?この術を解きたければラウレスを倒すか術を解くしかないぞ」
「ですが...それがわからなくて...」
「これはラウレスのスキル「洗脳」じゃ。ラウレスの声を媒体として相手を支配する催眠の能力じゃ」
「でもなんで俺たちには効かないんだ?」
「これだけの広範囲に広げたんじゃ。魔力が少ないものはかかるかもしれんが、多少の実力をもったお主達なら正気を保っていられると言うこと。おそらく宮廷魔導師の中でも術にかかっていないのは数名かそこらかもしれんな...」
さすが初代勇者のスキルだ。王都中の人間を「洗脳」する程の力は「洗脳」のスキルを持っていたとしても私たちでも難しいだろう。
「けど、今は正気の人間を探すより市民をユアン達の戦いに参加させない方がいいんじゃないか?」
「それはあまり考えんでもいいじゃろうな...ラウレスの命令は「賢者を捕縛せよ」っていう単純な命令しか下しておらんから、ユアン達の戦いには参加することはないだろうな...じゃが、ラウレスがその命令を出したらワシらはユアンの邪魔にならないようにしなければならん!」
「そうですね...今はそれがいいかもしれませんね...じゃあ、今は正気の人を手分けして探すと言うことでいいですか?ユアンくんの戦いに邪魔が入りそうになったら私たちで対処する...と言うことで...」
「「「了解!」」」
レイン達は手分けしてラウレスの「洗脳」にかかっていない人を探し始めた。
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