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第十八話 過去の因縁

 結界の外ではラウレスは宙に浮いている。ラウレスは不気味な笑みをしながらこちらを見下ろしている。


 「まずは、この結界を壊さないと何もできないよな〜」


 そう言ってラウレスは、手のひらから黒炎を放つ。黒炎は触れたものを灰にする厄介な魔法だ。だが、黒炎が反転結界に触れると、灰にならずにそのままラウレスの方に跳ね返る。


 「ちっ!」


 ラウレスは自分に返ってくる黒炎を見てもう一つ黒炎を作り、飛んでくる黒炎にぶつけて相殺する。


 「なかなかめんどくさい結界だな!」

 「いくらお前でもそうそう簡単には壊れないよ」


 反転結界が黒炎に触れても大丈夫なのかは、さっきの反転結界に黒炎が触れるまでは半信半疑だったが、上手く成功したようだった。


 「ケント君!アイちゃん!」


 俺の後ろで二人の名前を呼ぶ声がする。現れたのは、レインが走ってこっちに向かってきていた。


 「レインさん!」

 「よかった無事なのね!アイちゃん達の魔力を感じたから急いできたけど...って、ユアン君!?」


 レインは俺の姿を見て驚く。


 「レインさん、早くアイとケントを王城へ。魔力ポーションを飲ませて休ませといて、あとは俺がやるから」


 俺は高く飛んで結界をすり抜けてラウレスと対峙する。


 「さて、ここじゃ戦いづらいから場所でも変えないか?」


 俺はラウレスに提案する。ここで戦えば、結界が壊れる可能性もあるし被害が出る可能性が高い。確実にコイツを倒すには広くて安全な場所が必要だ。


 「まぁ...別にいいが、俺は君と戦えればそれで問題はない」

 「じゃあ、場所はこの前戦った場所で...」

 「ドレーク領か...確かにここと距離は離れているし、人通りも少ないってわけか。考えたな」

 「お前に褒められても嬉しくないけどな...」


 俺とラウレスはドレーク領まで移動する事になった。


 「待ってユアン!私も!」


 下からアイの声が聞こえたが、俺は無視してドレーク領に向かった。

 移動は、俺は走って移動するが、ラウレスは飛行したまま移動している。どうやら、神の魔力によって飛ぶことが可能になるらしい。ケントやアイも神化をして飛んでいたから多分そう言う事だと思う。


 十五分ほど走るとドレーク領に着いてしまった。


 「じゃあ、やるか!」


 ドレーク領に着いた瞬間、ラウレスは黒炎を三本地面の下から出現させ、俺に襲いかかる。


 黒炎は魔力で防いでもダメ、武器で防いでもダメという防御無視の強力な魔法だ。以前の俺なら「透過」を使って避けたりしていたが、今は違う。女神セレスからもらった力を今ここで使う。


 「力をかせ、セレス」

 『任せて!』


 俺の体から神々しい魔力が溢れ出る。それと同時に黒炎が俺の体に触れる。ラウレスはニヤリと笑うが、すぐにその笑みは消えた。

 俺の体に触れた黒炎は消滅したのだ。


 「なんだ?その光は...もしかして...君さ...」

 「お前の思っている通り、俺は複数の神と契約をした。と言っても女神の加護だけは(仮)が付いているけどね」

 「なるほどな...だからそんなに余裕なのか」

 「余裕?そんなもんあるわけないだろ。お前を殺すために色々準備してきたんだ。少しでも使えたら充分ってもんだろ」


 黒炎が効かないとなれば、距離を詰めて近接戦で戦うまでだ。距離を取れば、魔法で攻撃をされる。セレスの力は黒炎にしか効果は得られない。他の魔法を喰らえばダメージはそのまま受ける事になる。


 「黒炎が効かないからってずいぶんとわかりやすい攻撃だな」

 「うるせぇよ。シンプルが一番なんだよ!」


 俺はすでに身体強化と雷魔法を体に纏わせて戦っているが、それでもスピードでラウレスに勝てる自信はなかった。


 「どうした?その程度か?」

 「うるせぇよ!」


 刀に雷魔法を纏わせて、斬撃に乗せて攻撃する。雷の速度と威力を斬撃に乗せた攻撃はラウレスでも攻撃を弾くのに苦戦していた。


 「はぁはぁ...その斬撃...なかなか厄介だな。受け流すと雷が俺の体に流れて軽く麻痺する。俺じゃなければそのまま行動不能になっていたかもな」

 「その程度で済んでんだ。化け物としか言えねーよ」

 「君もその部類だろ?」


 同じように、ラウレスに向かって攻撃しようとしたら、足が動かなかった。下を見て確認すると、俺の足は地面に沈んでいる。


 「なんだこれ...」

 「土初球魔法、沼。俺が地面に流した魔力に反応してその範囲の土を泥にして相手の動きを制限することができる」

 「ふざけんなよ...お前は風魔法しか使えないんじゃ...」


 確かにラウレスは風魔法しか使えなかったはず。元勇者だとして光魔法は使えたとしても、土魔法を使える理由にはならない。


 「前も言ったろ?俺は神になったんだ。神なら全属性を使えてもなんの不思議もないだろ?」


 明らかにチートすぎる。ラウレスが全属性使えるとなると、全ての魔力に神の魔力が込められていると言う事になる。魔力にはラウレスに分がある。そうなれば、いずれ魔力切れを起こすのは俺の方が確率は高い。まさに鬼に金棒だ。


 「しょうがないな...力をかせ!死神!」

 『ほいほ〜い!まっかせてよ!』


 俺が持っていた刀は形状が変形し、死神が持っている鎌に変形する。死神の鎌が沼になった地面に触れると、地面は硬くなり抜け出す事に成功した。


 「なんだ?その鎌は?」

 「死神の鎌だよ、見た目通りね。使いたくはなかったけど、この状況じゃしょうがないよね...」


 俺は鎌を思いっきり振って斬撃を飛ばす。ラウレスはその斬撃を避けると、後ろの木に斬撃が衝突する。しかし、木が倒れることはなく、代わりに養分が吸い取られていくかのようにしおしおになっていく。


 「なるほどな...その鎌、命を吸い取る能力か...」

 「正解、この鎌に触れたものや斬られたものの命を吸い取る。そしてその命を魔力に変えて俺のものにすることができる」

 「なんでもありだな...けど、それで沼からでた理由はどこにある?」

 「言っただろ?この鎌に触れたものの命を吸い取るって...沼に流されてたお前の魔力ごと吸い取ったんだよ」


 死神の鎌を振って斬撃を飛ばす。避けるラウレスに対して逃げ込んだところを先回りして鎌で攻撃する。ラウレスは鎌を受けることなく避け続ける。ラウレスの持っている剣も死神の鎌にふれて仕舞えば壊れてしまう。


 逃げ続けるラウレスは黒炎を放ち距離を保とうとする。俺はその黒炎を「透過」で避けて鎌で攻撃し続ける。


 「なるほどな...今黒炎を「透過」を使って避けた理由がわかった。君、一度に二人の神の力を使えないんだろ?」

 「なーんだ...バレたか」


 戦闘中にも関わらずに話しかけてくる。ずいぶんと余裕そうに見えるラウレスを見て、その余裕を無くそうと考えた。

 俺は、鎌で攻撃をしながらラウレスのにげる方向を「未来予知」で視る。その場所に先回りをしながら攻撃を仕掛けていく。まぁそれでも避けられるからなんとも言えないが、ここからが勝負だ。

 まず、逃げる方向に結界を用意しておいて、逃げ道をふさぐ。そしてそこから動こうとする方向に対しても結界をおいて結界でラウレスの動きを制限する。


 「くそ!」


 ラウレスは黒炎で結界を壊そうとするが、一歩遅い。ラウレスが、結界を壊そうとすると同時に、俺は鎌を振りかざす。結界ごとラウレスを切り裂くことに成功する。


 「くそ... が!」


 ラウレスは最後の力を振り絞って黒炎を出して攻撃してくるが、「透過」を使って避ける。ラウレスはその場に倒れこみ動かなくなった。


 「ふぅ...案外あっけなく終わったな。結局...俺が死ぬ未来はもっと先のことなのか...?」


 俺はラウレスの私を確認して遺体を魔法袋に入れようとした時、急に腹部に焼けるような痛みが現れた。恐る恐る腹を触ってみると、温かいものが流れ出ていると同時に硬いものが俺の腹から突き抜けている。


 「は?」




 「これで終わったと思ったか?」


 その声はさっきまで聞いていた声だ。ラウレスの死体は今目の前にある。なのに...どうして!?


 「はぁはぁ...クソが!」

 

 体に力が入らない。激痛で意識が飛びそうだ。


 「どうして俺が生きているか知りたいか?今、君が戦っていたのは俺の人形だ」

 「な...んだと...」

 「ある特殊な粘土にそいつ自身の魔力を流し込むとそいつそっくりの人形が出来上がる。姿形はもちろん、声や癖も完全再現。残念な部分としては、本人と比べると力が圧倒的に落ちると言うことぐらいだな」


 つまり、さっきまで戦っていたのはラウレスの人形で、それも力が格段に弱い人形と戦っていたと言うことだ。


 「俺が、あんなに弱いわけないだろ。いつ気づくか楽しみにしてたんだけど、正直がっかりだよ」


 「未来予知」でも本物か、偽物かの区別はできなかった。思ったよりもこの人形の区別は厄介かもしれない。


 「まぁ...戦いを見ていて君が強くなったのはわかったけど、まだまだだな」


 そう言ってラウレスは刀に魔力を込めてこう言った。


 「黒炎」


 俺の全身は黒い炎に包まれた。

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