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第十四話 王都

 魔人討伐後、体力と魔力が消耗していた俺とケントはその場から動くことはできなかった。動けない俺たちを見てレインはアイテムボックスから二つの瓶を出した。


 「これ、魔力回復する薬だからよかったら飲んで」


 中にはピンク色の液体が入っている。飲んでみるとスポーツドリンクの味がした。


 「この味完全にアクエリだろ」


 「アクエリ?それってなんなの?」


 ケントの発言を聞いてレインが反応した。アクエリは俺たちがいた世界で売られていた飲み物のことだ。この世界にはなくて当然だが、いきなり知らない言葉を聞いたレインは不思議がっていた。


 「えーっと、アクエリは.....」


 流石に前世のことを言えるわけがなく必死にごまかそうとするケントを見ていたら、大人数の兵士がこちらに向かってくるのが見えた。


 「あっ、お迎えが来たみたいだよ」


 大人数の兵士がレインの前に並んで敬礼をする。


 「レイン・カース様、我々は魔人討伐によりザルク公爵から応援に行くよう命じられましたが、魔人はどこにいるのですか?」


 「魔人なら私の水魔法の中にいるから」


 そう言ってレインは水魔法で拘束している魔人の死体を兵士達に見せた。


 「魔人を簡単に倒すとは、流石賢者様ですね」


 兵士がレインの功績を褒め称えるとレインはあまり嬉しくなさそうに兵士に言った。


 「この魔人は魔人になりたてだったから簡単に倒せたけど、種族とか生きている年数が違かったら私一人では太刀打ちできないよ」


 俺とケントはその言葉を聞いて耳を疑った。

 あの魔人はものすごく強かった。けどまだあれで弱い方だという。

 初めて触れた本気の殺気。今でも思い出せば身震いをする。


 「レイン様が負けることは想像できないですね。もしそんな魔人がいたら....」


 「そうなったら賢者全員で戦うしかないわね」


 レインと兵士の話を聞いて、王都での生活が心配になってきた。俺たちはこのまま安全に暮らす事ができるのかわからない。


 「レイン様、後ろにいるその子供は?」


 「この子達は、ナイル村から連れてきた子供達。私も噂だと思っていたけど、神様の加護を持っている子供達」


 



 「「「「「「「「「ええええええええええ!!!!」」」」」」」」


 


 レインの発言に兵士全員が驚く。


 「あのなんでレインさんは俺たちが神様の加護を持っているってわかったんですか?」


 俺はレインに会ってから名前しか言ってないのに加護のことまでは言っていない。


 「だってあなた達、魔人と戦っている時灼熱(インフェルノ)を撃ってたわよね?あれは火属性の最上級魔法よ。五歳の子供が撃てるわけないじゃない。それに魔人になったばかりとはいえ殺されてもおかしくないのに生き残ってるところを見ると信じるしかないでしょ」


 レインの言葉に間違っているところは一つもない。確かに五歳の子供が最上級魔法を使っていたら怖い。魔人と戦って生き残ってる五歳児なんて普通はいない。


 「まぁそうですよね.....あはは...」


 俺は笑って誤魔化すしかなかった。

 そんな話をしているうちに王都に向かう準備ができた。俺たちには馬車が用意されていて、俺、ケント、レインの三人が馬車に乗った。馬車の中ではレインから魔法のことを詳しく聞いた。


 「魔法っていうのは、基本的には精霊から力を貸してもらっているの。精霊に魔力を渡してその属性に合った精霊が技を出しているってわけ。その使用者の魔力が強ければ強いほど精霊から強い魔法が撃てるってこと」


 「じゃあレインさんは水の精霊から力を貸してもらってるってことですか?」


 「そうなるね。私たち賢者になると精霊から加護をもらうの。私の場合は水の精霊の加護ね。精霊の加護をもらうと魔法の力が強くなるの。」


 魔法については何も知らなかったため、初めて知る事が沢山あった。


 「精霊の加護にはもう一つの力があって、精霊と同化する精霊化って技があるの。その技は精霊と同化する事で通常の数十倍の力を引き出す事ができるけど使用すると魔力を全て使うから、必ず勝てる時にしか使わないの」


 レインの強さは先ほどの魔人との戦いで嫌ってほどわかった。けどそのレインですら勝てない魔人が出てきたらと思うと考えたくない。


 「じゃあ精霊化しても勝てない敵がきたら国崩壊するじゃん」


 空気を読まないケントが爆弾発言をした。


 「ふふ、そうだね。でもそんな事が起きないように冒険者ギルドと連携して魔物が魔人にならないように魔物を討伐しているから大丈夫だよ。でも、もしそんな事が起きたら賢者全員で戦うことになるかな.....」


 「でも七人の賢者がいるから大丈夫ですよ!」


 「そうだよね。私も賢者だから頑張らないとな」


 少し落ち込んでいたように見えたレインは少しずつ元気になっていくのがわかった。


 「それより、魔人の死体って持ち帰る意味ってあるんですか?」


 レインは魔人の死体を水魔法で拘束している。王都に持ち帰る意味があるのか疑問に思った。


 「魔人はね、とても高価で売れるの!魔人の死体を使っていろいろな実験ができるからとても貴重なの。魔人を売るだけで白金貨5枚なの!」


 先ほどまで落ち込んでいたのが嘘みたいに話している。レインが魔人の価格について熱く語っているうちに王都が見えてきた。

 入り口には二人の門番がいて馬車の中を確認することなくすんなりと入れた。王都に入るといろいろな店が沢山あり大勢の人で賑わっていた。


 「これから君たちはこのまま城に行くことになってるからそれまでゆっくりしてなさい。お友達もそこにいるから」


 レインの最後の言葉を聞いてアイが無事なのがわかった。

 城につくと大勢の兵士が迎えてくれた。


 中に入ると見たことのないものが沢山置いてあった。いろいろ見ているうちに執事やメイドが集まってきた。


 「ユアン様、ケント様お待ちしておりました。私執事のセバスチャンと申します。気軽にセバスとお申し付けください」


 初めて堅苦しい挨拶をされたのでぎこちないお辞儀を返す。それを見てセバスはにっこりと笑ってアイのいる部屋まで案内してくれた。


 「こちらがアイ様のいるお部屋にございます」


 セバスがノックすると中からアイの声が聞こえた。


 ドアを開けるとアイが俺たちを見ると目に涙を浮かべて俺たちに抱きついてきた。


 「よがった....みんな無事で.....わだしひっ....一人だけ何もできなかったがら.....く、悔しくて.....ユアンとケントが死んだらと思うと怖くて.....」


 泣いているアイを見ていたら自然と涙が出てきてしまった。ケントもつられて泣き出す。


 「死なないよ、アイ一人だけ残して死ぬわけにはいかないから」


 俺はアイの頭をそっと撫でた。


 「初めて五歳らしいところを見せたね」


 一緒に来ていたレインは泣いている俺たちを見て言った。


 「戦闘中や馬車の中でもあまり五歳には感じなかったけど、この光景を見るとやっぱり五歳なんだなって思わね」


 俺たちはその後泣き疲れて眠りについた。




 


 


 


 




 

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