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第七話 告げられた言葉

 目を開けるとそこは知らない天井だった。キョロキョロと顔を動かすとなんと無く場所はわかった。私は病院のベッドで寝ていた。


 「アイちゃん!目が覚めたの!?」


 ベッドの横には、レインさんが椅子に座って私のことを見ていた。


 「レインさん...」


 私はレインさんを見ると涙が止まらなくなってしまった。


 「レインさん...私...ユアンを......」

 「アイちゃん...落ち着いて聞いてくれる?」


 レインさんは私の手をギュッと握ってくれる。レインさんの声は悲しそうな声で、私が寝ていた時に起こった出来事を話してくれた。


 全てを聞いた私は何が現実なのかわからなくなっていた。

 

 どうして...ユアンがクレアを...

 なんで何も言わずに出て行ったちゃうの...


 ユアンの口から告げられた「別れよう」と言う言葉を思い出す。私は気分が悪くなり、もう一度ベッドで横になる。


 「それで...ユアンは...まだ...」

 「見つかってないみたい...見つけたら処刑だって陛下は言ってるらしいけど、ユアン君を殺すことなんて...」


 ユアンを殺すことはほぼ不可能だ。精神的にもユアンと殺し合いをするのもキツイが、問題なのはどうやって殺すかだ。ユアンのスキルには「未来予知」がある。それだけで、私たちの行動や動きは手にとるようにわかってしまう。そもそもユアンを見つけること自体が困難になる。


 「ユアンを殺すんだったら私とケントしかいませんよね...」

 「でも、そんなことできるわけ...」

 「多分できません。でも、ユアンがクレアを斬った理由...何かあるかもしれません」

 「え?どう言うこと?」

 「私...他のみんなが気絶している中で私だけまだ意識があったんです。それで、ユアンが私たちの前から消えようとした時、思わずユアンを引き止めて...その時ユアンが私の方を向いたんですけど、その時の顔がとても寂しそうで...」


 あの時の寂しそうなユアンの顔は忘れられなかった。ユアンのあんな顔を見たのは多分初めてだと思う。きっと何かあるんだと私は思った。


 「それでも、本当のユアン君じゃ無くてもアイちゃんは信じれる?」

 「どう言うことですか?」

 「私が思うに、ユアン君はラウレスと戦って敗れた...その時にラウレスに何かされたんじゃないかって...ラウレスのスキルは「洗脳」だから、ユアン君が負けた時ならそのスキルも使えるんじゃないかって...」

 「でも、それならクレアを斬った時に殺してもおかしくはないとは思います...」

 

  どれが正解なのかわからないが、今はとりあえずクレアに確認をした方が良さそうだった。善は急げということで私はベッドから降りて早速王城の方へ行こうとするが、レインさんに止められる。


 「待って!まだ安静にしてなきゃ!」

 「もう大丈夫です。今は知らないと...」


 レインさんを振り切って私は王城に向かう。王城に入っても誰も出迎えなしで、いつもいるメイドですら姿がなかった。


 ここまでいないのは初めてだなぁ...


 それほどまでユアンのことで大騒ぎになっているのか。それとも別の事件が起きているのか。

 私はすぐにクレアの部屋を訪ねる。軽くドアをノックする。「どうぞ」と返事が返ってきたので、私はゆっくりとドアを開ける。ドアを開けると少し重い雰囲気で話しているケントとクレアの姿があった。


 「あっ...アイか。目を覚ましたんだな」

 「うん。それで今何話してたの?」

 「ユアンのことだよ...ユアンがクレアを斬ったって...」

 「うん。聞いたよ。私もクレアに聞きたいことがあってここにきたんだ」

 「聞きたいことですか...?」


 私はクレアの方をじっと見るとクレアは私から視線を逸らした。


 「クレア...なぜユアンを部屋に招き入れたりしたの?ユアンを一眼見ればどんな状況かすぐわかったはずよね?」

 「......」

 「それとも他の理由があったのかしら?」

 「......」


 私の問いに対してクレアは一向に喋ろうとはしなかった。部屋に緊張感が流れる。


 「そうじゃあこれが最後の質問ね...」


 私はクレアに近づき耳元で囁いた。


 「ユアンの秘密をどこまで知っているの?」

 「!?」


 先程の質問には反応しなかったクレアが唯一反応した。


 「アイ様もですか!?」

 「も...ってことは、本当に秘密があるみたいね...私やケントが知らないことが...」


 クレアの顔がだんだんと青白くなっていくのがわかる。ここまでくれば、あとは簡単だ。


 「ケント...ケントはユアンの秘密を聞いて、もし、ユアンがおかしくなっていても助けに行く...?」

 「当たり前だろ!親友が処刑になってるんだ...助けないわけにはいかないだろ!」


 私はその言葉を聞いて安心した。ユアンを助けたいと思っているのは私だけじゃないんだと...


 「ねぇ...クレア...教えてくれない?」

 「だ...だめです!これだけは...これだけは言えないんです...」


 クレアの目には大粒の涙が溢れ始める。


 「クレアどうして話してくれないんだ?」

 「ユアン様との約束だからです...」


 婚約者であるケントが話を聞いても一向に話してはくれなかった。


 「ごめんなさいクレア...あなたを傷つけるようなことをしてしまって...」

 「アイ様...」

 「アイ...」


 私はクレアの部屋を後にする。

 でもこれで大体の想像はついた。ユアンが私たちの前から姿を消した理由。クレアが何も話さないこと。を合わせると何か危険なことをしようとしていること。多分危険なこととは、ラウレスと戦うことだと思う。でも、わからないことが一つだけある。なぜユアンは普通に私たちの前から消えたのではなく、クレアを斬ってから消えたんだろう...そこの理由がよくわからなかった。


 待ってて...ユアン!絶対に一人では戦わせないから!


 私は急いで陛下の部屋に向かった。


 

いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価をお願いします。

最近忙しくて投稿する頻度が少なくなっていますが、もう少ししたら投稿する頻度を増やしていくのでよろしくお願いします。

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