第十三話 戦闘3
魔人から五つの魔法陣が浮かび上がる。最初に撃った灼熱よりも時間がかかっている。
「この魔法でお前らの息の根を確実にしとめてやる」
魔人はニヤリと笑いながら魔法を打つ準備をしている。
「おいユアン!何か方法はないのかよ!」
流石のケントもこの状況では何もできない。とは言え今の俺でもできることはない。できるとするならすべての魔力を使ってあいつの魔法にぶつけることしかできない。
俺は何か閃いた。あの魔人が撃った灼熱はさっき見たからイメージはつきやすい。
一直線に伸びる炎のビームみたいなものだ。
「ケント、さっきあの魔人が撃った灼熱って魔法お前できるか?」
「できるわけねーだろ。今の俺たちは初級魔法の火玉しかできねーぞ」
「さっきの灼熱見ただろ。あの魔法をイメージすればもしかしたら....」
俺はこの可能性にかけるしかなかった。このまま何もできなければ俺たちは黒こげになってしまう。俺一人だっけだったら「透過」を使って回避ができるが、ケントや兵士がいるので無理だ。
「普通だったら魔力量のせいで発動できないけど、俺たちの魔力量だったら、あの威力の魔法を出せてもおかしくない。」
「わかった。ユアンの言葉を信じるよ。けどどうやって出すんだ?」
「あいつの魔法をイメージして灼熱って叫べば出るんじゃね?」
「適当すぎるだろ!でも、やるしかないのか!」
俺とケントはさっき魔人が撃った灼熱をイメージする。
「お前たち死ぬ覚悟はできたか?」
魔人が魔法を撃つ準備が整ったらしい。
「行くぞ、我が持つ中で最強の技「五重灼熱!!」
五つの魔法陣から灼熱が解き放たれる。
俺とケントは必死に灼熱のイメージをする。
両手を前に出し、叫んだ。
「「灼熱」」
俺とケントの手から灼熱が放たれた。
「な、何!?!?!?」
俺たちが放った灼熱を見て魔人が驚く。
魔人が出す五重灼熱と俺たちが出す灼熱がぶつかり合う。
「はっははは!まさか灼熱を出したのは驚いたが、今のお前たちの魔力ではそう長くは持つまい」
魔人が高笑いする。確かに今の俺たちの魔力は少なくなってきている。
「ユアン....俺、もう魔力が.....」
ケントの力のない声が聞こえてきた。
「諦めんな、俺だってもう魔力が残ってねーよ。少しでも力を抜いたら、あいつの灼熱に黒こげにされるぞ」
「流石に、そんな死に方は嫌だな....」
ケントを見てみると少し笑っている表情をしていた。
よくこんな状況で笑えるよな....絶対戦闘狂の感じが伝わる。
「ほう...まだ耐えるか....ならもう少し魔力を込めるとしよう」
魔人の言葉に耳を疑った。この威力がまだ本気じゃない?
流石に今の俺たちではもう太刀打ちできない。諦めたとき後ろから知らない人の声が聞こえた。
「あなたたちが、ユアン君とケント君?」
「「えっ?」」
振り向くと知らない女性が立っていた。
次の瞬間ぶつかり合っていた灼熱が消えた。
魔人も何が起こったのかわからない様子だった。
「な、何が起きたんだ.....我の灼熱が消えた.....」
「何をそんなに驚いてるの?ただの水魔法よ。私の魔法で蒸発させただけ。」
「ありえん!!我の最強の魔法だぞ!!!たかが水魔法如きで我の炎が消えるは.....」
魔人が言葉を言い切る前に体に水の槍が刺さった。
「中級魔法の水槍よ。おしゃべりが夢中で気がつかなかったみたいね」
魔人はその場で倒れこんだ。
「なんだ今の魔法....見えなかった..」
「俺も何が起こったのかわからなかった....」
女性は魔人の死体を巨大な水魔法の中に入れた。
「さて、君たちを助けるためにザルク公爵にお願いされたんだけど、君たちがユアン君とケント君?」
「はい...そうですけど」
「無事でよかった。私はレイン・カース。アウスト王国で賢者をしてるの」
「「えええええええ!?」」
今までに無い衝撃的な発言だった。
戦闘はこれで終わりです。次回は少し話が進むと思います。面白かったらブックマークや感想を書いていただけると嬉しいです。いつもありがとうございます。