第一話 覚醒
小鳥の囀る音、カーテンから差し込む光で俺は目が覚める。起き上がると体の節々が痛くて少し顔を引き攣らせた。
「ここは...」
そうだ...俺は死にそうな状態でラウレスに挑もうとした時に、時の魔女が目の前に現れて...俺はその後からの記憶はなかった。その後、セレスに呼ばれて精神世界につれていかれたのを思い出した。セレスからも神の加護をもらって、ラウレスを倒すことを約束した。
「ステータスオープン」
俺が呟くと、目の前に俺の情報が表示されている。
名前・ユアン(アウスト王国賢者)
種族・人間 性別・男 年齢・十三歳 属性・火、雷
スキル・「未来予知」「透過」
加護・雷神の加護 死神の加護 女神の加護(仮)
体力・SS
魔力・SSS
筋力・SS
知力・S
敏速・SSS
「はっ...(仮)かよ...」
女神の加護(仮)となっていて、思わず笑った。でも、これでラウレスを倒す準備はできている。後は、体を本調子に戻すことと、そのほかにも色々やることがあった。
あの戦いから二日が経った。まだユアンの傷は完全に癒えたわけじゃなかった。結局私が神化をしても完全に直すことは不可能だった。時の魔女ユニバによると、ラウレスは魔神の能力で女神の回復を聞きにくくする効果があるみたい。だから「完全回復」でも完全に治すことはできなかった。幸い欠損していた左腕と右目は治すことができたし、穴が空いていた腹部も治すことはできた。けれど、まだ危険な状態には代わりない。
私は毎日ユアンのお見舞いに来ているけど、目を覚ます機会はない。今日も目を覚まさないのかな...と心配になってしまう。ユアンがボロボロの状態で飛んできた時はとても信じられなかった。誰も勝てないほどの圧倒的な力を持ったユアンがあそこまでボロボロにされたのを見ると、ラウレスは相当強いことがわかる。
そんなことを思いながらユアンの病室が見えてくる。急足で病室に入ろうとすると、体中に包帯がびっしりと巻かれた状態のユアンと鉢合わせする。
「ちょっとユアン!何してるの!?まだ寝てないと!」
私は思わずユアンに駆け寄った。
「うるせえよ。俺の勝手だろ!」
そのユアンの言葉で私の時間は停止した。いつもならそんな乱暴な言葉は使わないのに...どうしたの...
「...ねぇ...ユアンどうしたの?前まではそんな乱暴な口調じゃなかったのに...ラウレスと戦ってから変だよ...」
明らかに以前のユアンとは別人だった。こんな乱暴な言葉を使うユアンは初めてだった。
「俺が変?そんなわけないだろ...俺はもともとこういう性格だよ。俺の本当の性格を知らなかったお前が、知ったような口を聞くんじゃねぇ!!!」
ユアンの声は病院の廊下に響き渡った。それと同時に私の目から涙が溢れる。ユアンの声を聞きつて病院の中にいた賢者たちがやってきた。その中にはケントもいる。
「ユアン...」
「......今がちょうどいいかもしれないな...別れようか、俺たち」
「えっ...」
「前々から言おうと思ってたんだよね...ずっと泣いてるばっかの女はいらねえよなって。それにさ、毎回毎回危険な目に遭ってるけど、もう少し自分で注意しようって気持ちはないわけ?毎回頼られてもこっちもきついんだよね」
私は涙を流しながらその場に座り込む。私は今起きている状況が飲み込めない...何も言えないでただ口元を押さえているだけだった。
「お前!何言ってるんだ!」
激怒したケントはユアンの胸ぐらを掴む。
「苦しい...手を退けろよ」
「なんだと!」
ユアンは「透過」を使ってケントの手からすり抜ける。グシャグシャになった病院着を少し整えてから城へと戻ろうとする。
「ちょっと待てよ!なんで...なんでアイにあんなことを言ったんだ!!」
「本当のことを言って何が悪い。ごちゃごちゃうるせえよ。弱いくせに...」
「なんだと!?」
ユアンの挑発の言葉にケントが反応する。
「流石にそれは聞き捨てならないよ。ユアン君」
「そうね...ユアン君あなたが言っていることは私たちを冒涜していることと同じよ」
「ん、理解不能」
「流石のユアンも俺たち全員相手に勝てるわけねーだろ」
ユアンの挑発に賢者全員が反応した。唯一私だけが反応できずにただ座り込んでいるだけだった。
ユアンは神の魔力を使って賢者全員に殺意をぶつける。神の魔力を直接ぶつけられれば、賢者とはいえ立つことさえも困難だろう。
「ぐっ...」
ケント以外の賢者はその場に崩れ落ちる。ケントだけが、普通に立っているようだった。
「驚いたな...神化したとはいえ、この魔力に耐えれるんだな」
「はっ...これでも俺の力を馬鹿にするか?」
たかが、神の魔力を絶えただけで強くなったと思っているのだろう。確かに神化をしたことで神の魔力を使えるようになったことで強くはなっている。だけど、このレベルではラウレスとは程遠い。
ユアンは高速でケントに近づき、ケントの腹部に蹴りを入れる。
「ガハッ!」
ケントは後ろの壁に激突して起き上がることができない様子だった。賢者全員がユアン一人にやられてしまい、動けるのは私一人だけだったが、体が動こうとはしなかった。
ユアンはそのまま、どこかへ行こうとする。
「待って...」
私は必死にユアンを引き止めようとするが、ユアンは私の顔を見てどこかに行ってしまった。
私の意識はそこで途切れた。
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