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第三十一話 ミドリの目的

 「はは、これで...これでようやく...俺の目的が達成される!」


 光り輝く魔法陣の真ん中でラウレスは高笑いしている。


 「ちっ!」


 俺はその輝きに視界を奪われる。

 魔法陣から輝かしい光と同時に、禍々しくドス黒い魔力も溢れ出た。


 「何するつもりなんだ...」


 いつもなら「未来予知」で視れるはずの未来が視えない。何故か分からないが、何通りか視える未来の一部にモザイクがかかっていて詳しい情報がわからない。


 「やっぱり、この儀式には「未来予知」の効果は効かないのか...」

 「どういうことだ!?」


 うっすらと目を開けると、ラウレスはニヤニヤと笑っている。

 これから起きることが楽しみなのか、俺に対して全く警戒をしていない。よくわからないが今が一番隙をつくチャンスだと思った。


 俺は前にいたアオを「透過」ですり抜け、魔法陣の真ん中にいるラウレスに斬りかかった。

 すると、俺はラウレスに触れることができず、バチっ!という音と共に何かに弾かれてしまった。


 「くそっ!なんだこれ!」

 「おいおい...今いいところなんだから邪魔すんなって...」


 ラウレスは魔法陣にふれ自分の魔力を流し込む。それと同時に「来たぜ!」と叫んだ。

 その瞬間、赤、黄色、黒、茶、オレンジの色が輝きだす。その光が出たことによって、魔法陣に入っていく魔力の量が尋常じゃなく増え、周囲の天候が変わってしまうほどの魔力がドレーク領の周りを包み込んでいる。


 「さぁ...来い!ヘラ!!」


 ラウレスが女性?の名前を叫ぶと、魔法陣からどす黒い魔力を纏った女性が出てきた。


 『あら...ラウレス...会いたかったぁ...』

 「俺も会いたかったよ、ヘラ」

 『全く、お父様ったらあんなところに閉じ込めるめるなんてひどいわ......おかげであなたに会えない寂しさで死んじゃいそうだったわぁ』


 魔法陣から出てきた女性?と仲良さげに話すラウレス。

 俺はそれを見て鳥肌が止まらなかった。

 あのヘラという女...あの魔力は神の魔力だ...俺らが直接会ったセレスとは訳が違う。あんなに重くドス黒い魔力は初めてだった。


 『あら...あの子...神の魔力を感じるわね...忌々しい...』


 突然殺気を向けられ、少々ビビる。初めて殺気を向けられて恐ろしいと思った。


 「まぁそんなに怒るな...あいつは俺のおもちゃなんだから我慢してくれ」

 『あなたがそういうなら仕方ないわね......ねぇ坊や...ちょっと神の加護をもらってるからって調子に乗っちゃダメよ...悪ーいお姉さんがお仕置きしなくちゃいけないから...」


 正直、立っていることしかできない...今ここで攻撃をすれば確実に殺される。「未来予知」が通じない相手とどう戦うか...


 「さぁ...もういいだろ。時間が惜しい...始めよう」

 『ええ...もちろん♪』


 ヘラはラウレスの胸に手を置くと、ヘラの姿は消え、ヘラの魔力はラウレスへと流れ込んでいく。

 全ての魔力がラウレスの中へ入ると、ラウレスの髪は緑色から少し黒色に変化する。


 「これが...ヘラの魔力か...いいぞ!これで俺はもっと戦いを楽しめる!!!!」


 周囲を包み込んでいた魔力はさっぱり無くなっていて、天候も戻っている。けど、目の前にいるラウレスからは、今まで感じていなかった神の魔力を感じているどころか、体中に刺さるような魔力をしている。


 「化け物すぎんだろ...」


 俺は思わず口にした。初めて見る化け物を見て足がすくむ。

 バーンさん達が俺のことを化け物だという理由が少しだけわかるような気がする。


 「君も十分化け物の類だよ、ユアン。なぁユアン...俺たちと一緒に来ないか?」

 「はぁ?」

 「俺たちと一緒に世界をぶっ壊そうぜ!向かってくるものは殺し、ついてくる奴には導きの手を。俺と君がいれば無敵だ!どうだ?興味はないか?」

 「悪いけど...全く興味はないな。他を当たれよ」

 「はぁ...つまんないなぁ...でも、君ならそういうとだろうと思ってたよ...」


 ラウレスは少し残念そうにしている。


 「それより...お前は今何をした?あんな魔力一体どこで...!?」

 「ああ、そういえば言ってなかったな。俺の目的を...俺の目的は俺自身が魔神になることだ!」

 「魔神だと!?ありえない...そんなの聞いたことが...」

 「まぁ聞いたことないだろうな...今魔法陣から出てきた神はヘラって言うんだ。この神は...俺が勇者の時、女神の加護を与えた張本人だよ」

 「ッ!?」


 ヘラという神がラウレスに女神の加護を与えた?ありえない...現に女神の加護を持っているアイはセレスという神から与えられた加護のはず。


 「訳がわからないって顔をしているな。まぁ無理もない。俺が勇者をしていたときは、ヘラが女神をしていたってわけだ。今の女神は誰だか知らんが、どうせヘラの兄弟かそこらだろ...神の世界でもヘラのことは禁句とされているから、君が知らないのも無理はない」

 「ヘラが女神...?それも禁句の存在?」


 俺は一気に知る情報の量に耐えきれなくなり、頭がパンクしそうだった。


 「そうだ...当時の女神...ヘラは俺に心酔仕切っていた。魔王を討伐後、俺が人を殺しまくっていてもヘラは俺から女神の加護を剥奪しなかった。それ以上にヘラが俺を思う気持ちは強かったんだろうな。だが、奴の父クロノスは無理矢理俺から女神の加護を奪いやがった。そして、自分の娘であるヘラを深い深い闇の中へと封印した。俺はヘラを助け、ヘラの力をもらい魔神となって俺は、強いやつと戦い続けるってことさ」

 「そんな計画俺がぶっ壊してやるよ」

 「君にできるのか?俺を止めるってこと」


 次の瞬間、ラウレスは俺の目の前から消えていた。


 「ほらな...簡単に後ろを取られちゃ意味ないよ?」


 俺は冷や汗が止まらなくなる。一瞬で背後を取られ、いつ攻撃されるかわからない状況でどう動けばいいのかわからなかった。


 「落ち着けよ...今の君じゃ俺には勝てないよ?それにさぁ...君の魔力なーんか変だと思ったけど、君の魔力直接神からもらってるんだね」

 「何を言ってーー」

 「本来神の加護を持っているやつでも、魔法を撃つときは精霊の力を借りて魔法を撃つのが基本だ。神化を習得した奴だけが、通常の状態でも神から直接魔力をもらえるって訳だけど、君は神化もできてないよね?どうして神の魔力を使えるのかな?」


 ラウレスは俺の首筋あたりをスンスンと嗅いでいる。すると、何かがわかったのか、ラウレスはまたも薄気味悪い笑みを溢す。


 「なぁるほどな...これは君に加護を与えた奴の魔力じゃねーな...俺の中のヘラがそう言っている」

 「はぁどういうことだ!?」

 「君に直接魔力を渡している神の名前は...死神だよ」


 一瞬俺の中で時間が止まる。もう、情報量が多すぎて何が何だかわからない。

 俺はすぐにラウレスから距離を取り、向き合うような形で警戒する。


 「アオ、お前は一旦帰ってろ。俺はユアンと戦ってから帰るから」

 「わかったわ〜。ご武運を」


 そう言ってアオは俺たちの前から姿を消した。

 俺が刀を抜いたのを見ると、ラウレスも剣を持ち、お互い構える。

 何秒経ったかわからないほど、お互い動こうとはしない。一秒という時間がとてつもなく長く感じる。


 俺はその時間に耐えられなくなり、ラウレスに向けて電磁砲(レールガン)で攻撃する。刀で攻撃すると見せかけて魔法で攻撃するとなれば、ラウレスも多少なりとも動きに変化が出るはず。


 ラウレスは俺の魔法を剣で受け切り、最短距離で俺に斬りかかった。俺は刀で受け止めるが、重すぎて力を緩めればすぐに真っ二つにされそうな勢いだった。


 「ぐっ...」

 「どうした?つらそうだな?」


 俺はラウレスの剣を弾き返してまた距離を置く。

 このままじゃ奴には勝てない...悪あがきにしかならないけど、どうせ死ぬんだったらやるしかなかった。


 「限界解除(リミットオフ)


 ユアンが呟くと刀から魔力が溢れ出てくる。刀に入っている魔力の量はユアンの最大魔力量とほぼ同じだ。つまり今は、ユアン二人分の魔力を身に纏っているということだ。


 「流石、アウスト王国最強の賢者ユアンだな。この世界の誰よりも君が一番面白いな」


 俺は約半分ほどの魔力を身体強化に費やす。多分あいつにはどんな強力な魔法を撃っても流されるか、かわされるだけ。あの速さについていくにはこれしかないと思った。


 「さて、これが俺の本気だ...ヴァントさんの仇やアイの借りを返させてもらうぞ!」


 俺は刀に大量の魔力を込めてラウレスに向けて斬撃を飛ばす。全ての力を解放したユアンの斬撃は通常の五倍の速さで飛んでいく。

 ラウレスも反応が遅れ、避けるのが無理だと判断すると、正面からその攻撃を受け切る。


 「ぐぅぅ...がぁ!」


 ユアンの重い一撃をなんとか受け流したラウレスは、それでも余裕そうな顔をしている。


 「いい攻撃だ...さっき戦った魔王ならこの一撃で死んでたな」


 俺は続けて、五つの斬撃を同時に繰り出す。ラウレスは向かってくる斬撃の方に走り出し、斬撃を受け流しながらユアンに突っ込む。

 だが、その未来は視えている。ラウレスの次の行動は全ての斬撃を受け流した後、正面から俺をきりかかるという未来が視えた。なら俺は先読みしてラウレスが斬りかかる寸前で上空に飛び、真上から高魔力で圧縮した電磁砲(レールガン)を当てる。


 未来通り、ラウレスは全ての斬撃を受け流し、俺に斬りかかる。俺はタイミングを見計らって上空に飛び電磁砲(レールガン)を上空から放った。

 このままいけば直撃だ...そう思った瞬間、ラウレスの周りから黒い炎が出現する。その黒い炎が盾となり俺の魔法を防いだ。


 「あれは...」


 俺はその炎を見て絶望しそうになった。


 「いいだろ?この炎。魔王が使っていた黒炎だよ。魔王を生贄にした時、この力を使えるようになってさ、なかなか便利だな」


 ゆらゆらと燃える黒炎が俺の視界に入り込む。魔王との戦いでどれだけ恐ろしい力なのか知ったはずなのに、ラウレスが黒炎を使うとなると鬼に金棒だ。流石に、勝てる要素が無くなっていく。

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