第十二話 奇跡
ユアンとケントが魔人と戦っている頃、ザルク公爵とアイは物凄いスピードで王都に向かっていた。
「ザルク公爵、王都まであとどれぐらいですか?」
「あと、もう少しで王都につくよ。早く応援を呼ばないと.....」
アイは二人のことが心配になった。いくらユアンの「未来予知」があるからと言って、安心することはできない。死ぬことはなくても大怪我はする可能性が高い。
アイは二人のことを考えていると頬に冷たいものが感じた。
「アイちゃんどうしたんだい?」
公爵は優しく問いかけてくれた。
「わかんないです....二人のことを考えてたら......涙が.......」
「そっか.....心配なのは私も一緒だよ。本当だったら私が残らないと行けないはずだったのに、まだ五歳の子供が残るなんて......だから今私たちができることは急いで王都に行って応援を呼ぶことしかできない」
公爵もとても残念そうに嘆いている。普通は大人の自分が子供たちを守らなければいけないはずなのに、子供に守られることになるとは思ってもいなかった。
「私があの時ちゃんと止めていれば......」
公爵の悔しそうな姿を見て自分にも何かできることを考える。
一つだけできることがあった。アイは涙を拭いて馬車から降りる準備をした。
「な、何をしてるんだい?」
公爵は不思議そうに言ってくる。
「このまま馬車で王都に行くよりも、私が身体強化をして王都に行った方が早いような気がします」
「ま、待ちなさい!君一人だけ王都に行っても応援を呼ぶのに時間がかかる。公爵の私がいればすぐに応援を呼ぶことができるから、今は大人しくしてなさい」
「で、でも早くしないとユアンたちが........」
アイから再び涙が溢れる。
すると馬車を操縦している兵士の声が聞こえた。
「ザルク公爵!前方に人影のようなものが!!」
「何!まさか魔人か!!」
兵士の報告に驚きを隠せない公爵。まさかユアンたちを殺して追いついてきたとか、考えたくない。
馬車の前に人影が立ち塞がる。馬車を止まってみると、どうやら魔人ではなく人間だった。
「あら、この馬車は.....ザルク公爵の馬車ですね」
外から知らない女性の声が聞こえてきた。
兵士が女性を見ると大きな声をあげた。
「あ、あなたは!」
兵士の声を聞き、公爵も窓を開けて見る。公爵はその女性を見ると急いで馬車から降り、女性の近くに走って行った。
「まさか、あなたとここで会えるなんて!」
公爵が降りたのでアイも降りて女性を確認する。その女性は焦げ茶色の髪をしていて、白と黄色の豪華な服装だった。
「アイちゃん、この人はこの国で七人しかいない賢者の一人、賢者レイン・カースさんだ!」
公爵の説明にアイは驚いた。まさかこんなところで、国最強の賢者の一人と会えるとは思っていなかった。
「その急ぎだと私に何か用があるんですかザルク公爵?」
「実は..........」
公爵は今さっき会ったことをレインに話した。公爵の話を聞いてレインはとても驚いていた。
「まさかこの森で魔人が出るなんて......しかも白狼の魔人とは...」
レインは驚いていたがすぐに行ってくれると言ってくれた。
「わかりました。とりあえず最優先は子供たち二人ってことですね?」
「ああ、今頼めるのは貴方しかいないんだ。どうかよろしく頼む」
公爵はレインに対して深く頭を下げた。
「ザルク公爵、頭を上げてください。魔導師が人を助けるのは当たり前ですよ」
「そう言ってくれると助かる」
「あ、あの私も行っていいですか?」
アイがレインに向けて言った。
「ダメよ。あなたはまだ小さいし一緒に行っても邪魔なだけよ」
レインの辛辣な言葉に何も言い返せなかった。
「けど、あなたの仕事はザルク公爵の護衛でしょ?ユアンって子に頼まれたならしっかりとその仕事を果たしなさい」
先ほどの強い口調ではなく優しい口調だったため思わず泣いてしまう。
「では、先を急ぐので」
レインは馬車とは逆方向の道を物凄いスピードでいなくなった。
「ユアン、ケントどうか無事でいて.....」
アイは二度と友達は失わないように、心から二人の安否を心配した。
少し時間があったため短いですが書くことができました。最後まで読んでくれたら嬉しいです。