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第二十六話 魔人の正体

遅くなってすみません!学校の課題が多くて更新頻度がバラバラですけどよろしくお願いします。

 「ペトラ...大丈夫?」

 「ん、へ、平気...もう血は止まったから」


 魔人に吹っ飛ばされたペトラはギリギリで魔力障壁を出していてダメージを軽減することができた。それでも、怪我は重症と言っても過言ではない。生きているのが不思議なくらいな怪我をしている。


 「ん、それよりレインは早くバーンとアークのところに...」

 「だめよ!まだペトラの処置が...」

 「ん、私のことはいいから早く行ってあげて...もう少し結界の中で休んだらそっちと合流するから...」


 私はペトラの言葉を信じてバーン達の元へ向かうことに決めた。


 「無理はしちゃだめだよ?もし、動けるようになったら王都に戻ってアイちゃんに直してもらったほうがいいから、こっちのことは気にしなくていいよ」

 「ん、わかった...」


 私はペトラと別れ、バーン達の元へと向かう。さっき草原の方から精霊の力を感じた。つまりそれほどまでに追い込まれたと言うことになる。バーン、アーク待ってて!

 私は急いで草原に向かう。私はそこで悲惨な光景を目にする。私の目には、今にも精霊化が解けそうなバーンとアークの姿があった。


 「バーン!アーク!」


 私は急いでバーンとアークに近寄る。

 魔人の様子を見ると、血だらけで腹部に風穴が空いていた。


 「え!?魔人倒したの!?」

 「馬鹿言え...よく見てみろよ...」


 私はバーンに言われた通りに魔人を見る。すると、風穴が空いていた腹部はモコモコと肉が動き、穴を塞ごうとしている。


 「な、何あれ!?」

 「おそらく「再生」のスキルを持っていると思うよ...僕とバーンが致命傷を与えてもすぐに元通りになっちゃうんだよ...」

 「そんな...じゃあどうやって倒せばいいのよ!」

 「もし、こいつがアイと同じスキルなら、再生するためには魔力が必要だ。その魔力を大量に使わせれば、再生ができなくなって死ぬんじゃないか...ってアークと話したけど、あいつの魔力が切れるより俺らの方が魔力切れになりそうなんだよな...」

 「じゃあ、私がその間一人で戦っているからバーン達は休んでて」


 私はバーンとアークの前に立って魔人と向き合う。

 魔人はレインを見てニタニタと笑っている。


 「待て、一人じゃ無理だ。あいつに攻撃を与えるためには最低でも二人は必要だ。一人が囮になってもう一人が攻撃しないと無理だ」

 「それなら僕が囮になるよ。レインは魔人の隙をついて最大火力で攻撃してほしい。」

 「お前大丈夫か?あんまり魔力残ってないだろ?」

 「そうだね...これでもう最後だと思うよ」

 「じゃあ、俺も援護してやるよ。死ぬときは一緒な!」

 「二人ともこんな時に、縁起の悪いこと言ってんじゃないわよ!」

 

 バーンとアークが縁起でもないことを言うので私が怒ると、二人は嬉しそうに笑っている。


 「あーけど、やっぱり死にたくねーよな」

 「そうだね...この戦いが終わったら彼女にプロポーズでもしようかな」

 「お前、それフラグになるからやめろよな...」

 「え?」


 どうやらアークは本気で意味をわかっていない様子だった。これだから天然は...


 「そんなこと言ってないで目の前の敵に集中してよ!」


 魔人は私たちの行動をニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。


 私は深呼吸をし、魔力を高めていく。最大限まで魔力を高め、私は叫んだ。


 「精霊召喚!」


 レインの魔力が青白く輝き出す。レインの魔力が具現化し、水の上位精霊スイが現れた。


 『ヤッホーレインちゃん!元気してた?』

 「うん!元気にしてたよ。スイちゃん、ちょっと力貸してくれない?」

 『お安い御用さ!』


 スイがそう言うと、スイはレインの中に入り込んだ。


 「精霊化!」


 スイの魔力が全身に広がり、レインが着ていた黒いローブは青く変化する。


 「じゃあ、作戦通りで!」

 「了解した!」


 レインは精霊化の特殊な効果で透明化を使い、魔人の視界から消えることに成功する。


 「グルルルル!!」


 視界からレインが消えて驚いた魔人は、一気に警戒を始める。魔人はレインを探し出すために動き回って素手で攻撃をしているが、空振りをしているだけだった。


 「周りが見えてなさすぎだよ」


 アークやバーンのことなど興味がないのか視界にすら入っていない様子だった。アークは残っている全ての魔力を使い、魔人に接近し今撃てる最大の魔法を魔人の腹部に喰らわせる。


 「絶極大閃光(エクストラライト)


 本来の魔人であれば、姿形は止めることができず跡形もなく消えてしまうのにも関わらず、この魔人は何度撃っても姿が消えることはなく、致命傷で止まってしまう。今回は残り魔力が少なかったこともあって致命傷まではいかなかったが、数秒魔人の動きを止めることができた。


 「今だよ、レイン」

 「わかってるわよ!」


 真横に現れたレインを見て魔人はギョッとする。そりゃそうだ。消えた人間がいきなり現れれば誰だって驚く。魔人にもそう言う感情はあったのか...と密かにアークは思った。


 「絶極大水流(エクストラフロウ)


 レインが魔人の横腹に手を触れて魔法を発動する。すると、レインが触れていた手から巨大な水の竜巻が発生し、グルグルと魔人は水の中を漂っている。


 「アーク達のように目に見える致命傷は与えることができないかもしれないけど、魔人も人間と同じ呼吸をする。なら、その呼吸を止めちゃえば誰だって死ぬよね?」


 魔人は水の竜巻によって体を動かすこともできない様子だった。レインはゆっくりと歩きながら、精霊化が解けたアークに肩を貸す。


 「いやー面目ない...久しぶりにこんなに強い敵に出会ったな...」

 「流石にこれは規格外よ...私がこの前戦ったアカって魔人よりも強いわよ...」


 この魔人の唯一助かった点は、知能がなかったこと。本来の魔人なら進化した時からある程度は人間の言葉を話すことができる。にも関わらず、この魔人は人間の言葉を話すどころか、奇妙な行動ばかりしていた。


 「あれ?もう終わったんですか?」


 声のした方を見てみると、そこには結構な汗をかいたケントが立っていた。


 「遅いよケント君...もうレインが終わらせちゃったようなものだよ」

 「そんな感じですね...とりあえず、ここにいない人たち集めちゃいましょうよ。ペトラとかヴァントさんとか」


 ケントの口からヴァントという言葉が発せられるとアーク達三人の顔が曇り始める。


 「え?どうしたんですか?まさか二人とも...」

 「いや、ペトラは魔人との戦闘で負傷してるだけだ...けど、」

 「ヴァントは僕たちがきた時には、もう...」


 俺は三人の言葉が信じられなかった。あんなに強かったヴァントさんが死んだ...?あり得ない。だってあの人は俺の風魔法の師匠だ!なのにどうして...

 最初の鐘の音で気づいていればヴァントさんは死ななかったのだろうか。それとも、学園なんか行かないでユアンと一緒にアイの側にいればこの戦いにもすぐに参加できたのか...


 何が正解で何が不正解なのかわからなくなっていた。

 俺の目から自然と涙が溢れる。


 「ヴァントの分も私たちがしっかり生きて守らなきゃダメよ」


 レインさんは俺の頭に手を置いてわしゃわしゃと撫でてくれる。今はその気遣いだけでも気が晴れる。






 「いやーよくここまでこいつを追い詰めることができたな」


 水の竜巻近くから聞いたことがない声が聞こえる。アークさん達は初めて聞くような声だったが、俺ははっきりとその声が誰なのか覚えている。

 声のした方を見てみると、髪の毛が緑色で高身長の魔人が立っていた。


 「あいつは...」

 「ケント君、知っているのかい?」

 「あいつの名前はミドリ...魔人の組織(カラー)の幹部です。魔人が襲撃した時に、俺の腹に穴を開けた人物ですよ」

 「「「!?」」」


 「せいかーい!よく覚えてたな。あのときはユアンが帰ってきたり、アイちゃんが覚醒したりして、こっちは都合が悪くなって帰っちゃったからね...帰りの挨拶ができなくて残念だったよ」

 「誰もそんな挨拶いらねーよ。そもそも何しに来た?まさか、俺らと戦うつもり?」

 「そんなつまんねーことしねーよ。ケントはともかく、他の三人は魔力を使いすぎてる。全員の魔力が満タンだったら楽しめるかもしれないけど、今はその時じゃない」

 「だったら何しに来た!」

 「そう怒るなよ...俺はこいつを回収しに来たんだよ」


 そう言ってミドリは竜巻に閉じ込められている魔人を指さす。


 「こいつは俺らの組織が開発した珍しい魔人でな。実験のためにこいつをアウスト王国に放ってみたら大成功。こんなにも賢者が集まってくれるとは思わなかったよ。おかげでいいデータも取れたし、賢者一人を殺すこともできた」


 ミドリの最後の言葉に俺たち全員は殺意を放つ。


 「まぁこいつに殺されるのもしょうがない。だってこいつは魔物の亜種が魔人化した魔人だからな」

 「「「「!?」」」」

 「亜種の魔人!?そんなのできるはずがない!ここ四百年の間そんな事例は一切報告されていない」


 普段はおとなしいアークが声を荒げる。


 「まぁ普通は亜種が魔人になるなんて報告はない。けど実際こいつと戦ってみて実感したろ?化け物みたいに強いってことが。そもそも、亜種が魔人化でないわけじゃない。亜種の魔人化は、普通の魔物が魔人化する時よりも多くの魔力が必要になる。そのせいで亜種が魔人化できないとまで言われていた原因だな」


 俺は魔物が魔人化する方法はなんとなく知っていた。けど、魔人達はそれ以上に知識を増やしている。それが一番恐ろしい。


 「それにさぁ、あの賢者ステータスも見ないでここに来たって笑えるよな。精霊化が使えないのになんで魔人討伐に志願したのか意味がわからん」

 「ちょっと待て、ヴァントが精霊化使えなかった?どういうことだ!?」


 今度は俺の後ろにいたバーンさんが声を荒げた。


 「俺は王都を襲撃した時にあの賢者と戦ってさ...あいつを倒した時に、あいつから全ての精霊の力を奪い取ったから精霊化が使えるわけないじゃん。あの賢者が殺された時、まじで腹捩れるほど笑ったよ」


 ミドリが最後まで言葉を発したと同時にレインは精霊化のままミドリに近づき絶極大水流(エクストラフロウ)を喰らわせようとした。しかし、レインの目の前からミドリが消えた。


 「遅い、遅いねぇ」


 声が聞こえたと同時に私の肩から勢いよく血液が飛び散った。


 「レインさん!!」

 「ダメだよ。こんなあっさりと挑発に乗っちゃってさ」


 そう言ってミドリは水の竜巻に触れると、一気に水が弾け飛び閉じ込められていた魔人が解放される。


 「うううううううう」

 「よし、帰るぞ。ついてこい」


 ミドリは亜種の魔人の肩に手を置いて帰る姿勢を見せた。しかし、亜種の魔人はその肩からミドリの手を振り解き、視線をケント達に集中する。


 「ったく面倒だな...」


 そういうとミドリは肩から手を引き、代わりに刀を取り出し亜種の魔人の首を刎ねた。魔人はピクリとも動かなくなり、再生することはなかった。


 俺たち四人はその光景が信じられなかった。三人の賢者が精霊化までして戦った魔人を一撃で倒したとなると、今の俺たちではミドリを倒すことがほぼ不可能になっていた。


 「さて、じゃあまた今度会うときは楽しみにしてるよ。その時は、誰が死ぬか楽しみにしてるよ」


 ミドリは亜種の魔人の死体を持ってその場から立ち去った。その後を誰も追うことはなく、怪我人のペトラとレインさんとヴァントさんの遺体を持って俺たちは王都に帰還した。


いつもありがとうございます。面白かったらブックマークと評価お願いします。

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