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第十八話 アイの行方

 アイは少女から溢れ出る黒い液体に引きづりこまれていった。あと少しでアイの手を握れたはずなのに一歩遅く、ユアンの手は届かなかった。


 「くそっ!」

 「また魔人の組織(カラー)か!?」

 「わからん。けど、それしか思い当たる節はねぇ!」


 ユアンとケントはその場に立ち尽くすことしかできなかった。


 その頃アイは真っ暗な空間へと移動していた。周りを見渡しても何もない。しかし、どこかきたことがあるような場所だった。


 「ここは...」

 「ようやくきたか」


 誰かの男性の声が聞こえる。この声はどこか聞き覚えのある声だった。アイは声のした方を向くとそこには魔人の組織(カラー)のメンバーであり幹部のミドリが立っていた。


 「あなたは...ミドリ!」

 「俺の名前を覚えてくれているとは光栄だね...女神の加護を持つ少女アイ」


 アイはすぐに魔法を撃とうとするが魔力が一切感じられなかった。


 「無駄無駄、ここではお前の力を封じてんの。いくら抵抗したって今のお前ではただの少女。俺に勝てる保証なんてゼロなんだから」


 アイはキッとミドリを睨みつける。それを見てミドリは不気味な笑顔を見せる。


 「いいねぇ、その顔。いつまでその強気な目をしているか楽しみだよ」


 なんとか、時間を稼げばユアン達が助けに来てくれる。アイはそう信じていた。


 「時間を稼げばユアン達が来てくれるって思ってるわけじゃないよな?」


 唐突にアイが密かに思っていたことをいきなり言い当てられる。


 「ここの場所にあいつらは来れないよ。ここは疑似的に作り出した神の領域だからな」

 「神の領域?疑似的?どういうこと?」


 初めて聞く単語にアイは混乱した。


 「なんだよ、神化したお前なら知っているだろ。神化の前に特別な場所で女神と二人きりで話す必要があるだろ。その場所が神の領域。お前らの言い方だと精神世界と呼ぶべきか?」

 「でも、ここが精神世界なら私の体ごと移動させることはなかったんじゃ...」

 「言ったろ。疑似的だと。ここは本当の神が作った場所じゃないんだ。だから生贄を使ってお前を誘き寄せたんだよ。「未来予知」が使えないこの時を狙ってな」

 「どういうこと...生贄?なんでユアンが「未来予知」が使えないって知ってたの...」

 「長くなるが...まぁいいだろう。そもそもお前を拐うにつれてユアンの「未来予知」があったらこの状況は成立しない。けど、俺は運が良かった。たまたまオレンジとドウが騒ぎを起こしてくれたおかげでユアンが「未来予知」が使えないことを知った。奴らに持たせてた魔石には盗聴器の役目も持っているからな」

 「嘘...」

 「嘘じゃない。現に俺はお前を連れ去るという行為を成功させている。それにさっき言っていた生贄はそこら辺にいた子供に漆黒の羽を体内に取り込ませたら異空間につれてこれる人間の出来上がりってわけさ。ちなみに漆黒の羽を作るのにも人間の命が使われてるけどな」

 「本当に...クズね。アンタたち...」


 力を封じられているアイにはせいぜい睨み返すことしかできなかった。しかしそれでも魔人...ミドリがしたことは本当に許せなかった。次第にミドリは聞いてもいないことをペラペラと話し始める。


 「この疑似的神の領域にはその作った本人が自分から招き入れなければならない。今の時点では俺だな。それに加えて入るには作り出した本人が許可をしないとその場所には入ることもできない。俺はユアン達をここに入れるつもりはサラサラない」


 アイはその言葉を聞いて絶望する。力を封じられたアイはただの少女にすぎない。相手は魔人。それも上位の存在とも言える魔人だ。この状態で逃げてもすぐに捕まるのがオチだ。


 「この魔道具があればどんなやつでも力を封じることはでき、それに加えてこの領域にひきづりこむことができる」


 ミドリはこのために使用したと思われる魔道具を見せてくる。魔道具は人間の目のようなデザインで今は瞳が閉じている状態だった。


 「この魔道具の名前は神の領域(ディバインゲート)使用すると三年は使えない代物だが、伝説の魔道具の一つだ。ただしこれにもいくつか制限があってな、普通の人間なら閉じ込める年数は無制限だが、お前のような強大な力を持つ人間を封じ込めるとなると一日が限界なんだよ。それ以上この場所に閉じ込めておくとこの魔道具の方が壊れちまう。だから、お前は一日耐えれば元の場所へと返されるってわけだ」


 ミドリの言葉を聞いて少しは希望が持てた。


 「俺がお前をここに呼んだ理由はお前と遊びたかったからだ」

 「遊び?」

 「ああ、今からお前には俺の遊びに付き合ってもらう」


 ミドリは指をパチンと鳴らすと何もなかった景色は一変した。ミドリの後ろから建物が出てくる。


 「これは...」

 「そう、お前らが言っている学園だ。ルールは簡単だ。やる遊びとは鬼ごっこ。ただし、普通の鬼ごっことは違うのは鬼はずっと俺。お前は命懸けで逃げていればいいだけ」


 つまり、一日が経つまでこの学園で鬼ごっこをしなければならないということだ。


 「じゃあ早くここに入れ。十分立ったら俺が中に入ってゲーム開始だ」


 アイは言われた通りに学園の中に入る。学園は三階建ての建物にグラウンドや地下にもグラウンドがある。グラウンドに行けば捕まえてくれと言っているようなものなので、絶対にグラウンドには近づかないようにすることがベストだった。


 「早く隠れなきゃ!」


 アイは学園に入ると、机や椅子はそのままで物の配置は全て一緒だった。こうなると隠れる場所は一つしか思い浮かばなかった。三階にある使われていない物置だ。そこに隠れていれば時間を稼げるに違いなかった。すぐにその場所を目的地として三階に向かう。アイは物置の部屋の前に立つとすぐさまドアを開けた。幸い鍵などかかっていなかったのが幸運だった。


 「これでなんとか......」


 隠れたのも束の間、学園全体に重いプレッシャーを感じる。まだ十分も立っていないのにミドリが学園に入ってきたのだ。

 ミドリはゆっくりと学園内を歩いている。


 「さぁて、楽しいゲームの始まりだ...」

 

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※少し内容を付け足しいたしました。4/26

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