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第十一話 帰国

 三日間の馬車での生活が終わり、ようやくアウスト王国の領土にたどり着いた。久しぶりに見るアウスト王国の景色はどこか懐かしく思えて不思議でしょうがなかった。途中帰り道に生まれた村であるナイル村に寄り道をした。

 久しぶりに帰ってきた子供達を前にして村の人たちはもちろん、自分の両親達は喜んで迎え入れてくれた。

 二時間ほど滞在して、ユアンとアイは袋に入った金貨十枚ほどを村に残して王都へと出発していった。


 「いやー久しぶりの村は楽しかったねー」

 「そうだな。また今度ケントも連れて三人で帰るか」

 「いいね!賛成!」


 二人は久しぶりに自分の両親と話ができて満足していた。心残りだったのはケントの両親が少し残念そうにしていたことぐらいだ。ナイル村からあと二時間ほど馬車で移動すれば王都につく。それまではまたゆっくりと馬車の中で過ごす事ができそうだった。ユアンは馬車の上に上がり周囲を見渡す。特に異常は見られない。これなら特に心配はしなくていいと思いそのまま馬車の上で時間を潰すことにした。一時間が経つとようやく城の一部が見えてくる距離に近づいてきた。


 「アイ、城が見えて来たぞ」

 「え!?本当に!?」

 

 同じようにアイも馬車の上に上がるとユアンと一緒に城の一部を見ている。


 「ようやく帰って来たんだね」

 「そうだな...またこれから働きっぱなしか」

 「でも、もうすぐ学校もあるしそれまでの辛抱じゃない?」


 魔人が襲撃したおかげで学園も被害が出て一時的に休校という扱いになって生徒達は街の復旧のために、手伝いとして少しの間働いている。しかし、それは人手が足りていなかった場合であって、クローム王国から援助をしてもらえることになったのでその心配は必要なく学生達はいつも通り学園に通う事ができる日が近くなるだろう。幸いまだ学生達にはユアンとケントの正体はバレてはいないのでそこはまだ安心できる。


 「そういえばお土産買うの忘れてたな」

 「あっ!本当だ...どうしよう?」

 「まぁ別にいいか。何も言われなかったし、時の魔女の話でもすれば「俺も戦いたい」って言うだろうしお土産話でも充分か」


 ユアンがケントのモノマネをするととても似ている。さすが、幼馴染というべきなのか。お互いの言い方や癖を熟知している。


 「そうだね。絶対そんなこと言いそうだもんね」


 こんなにのんびりとした時間が永遠に続けばいいのにとユアンはずっと思っていた。大好きな人がずっと笑っていられるような世界にしたい...そう思うと不思議と怖いものがなくなってしまう感覚に陥ってしまう。

 そんなことを考えているうちに王都にはいる大きな門の前にたどり着いていた。


 「ザルク公爵様、クローム王国までご苦労様でした」


 門番がザルク公爵の馬車を確認するとすぐに中に入る事ができた。ザルク公爵も少し会釈て門番に感謝の姿勢を見せる。王都に入るのは約一週間ぶりとなるだろう。たった一週間しか離れていなかったのになぜか懐かしく思えて来てしまう。一週間前と比べるとだいぶ復旧されていてクローム王国の援助が到着すればすぐに終わるかもしれない。それほど復旧が早かった。

 ザルク公爵の馬車はそのまま王城へと向かっていく。王城に着くと真っ先に出迎えてくれたのはケントだった。


 「おかえり!ユアン、アイ!」

 「「ただいま」」


 ユアンとアイは同時に声が重なる。それを見てケントは笑いだすと、そのままユアンとアイも笑い出した。やっぱり三人でいる事が一番楽しい様に思えてくる。ユアンとアイは王城に入ると一回自室に戻ろうとするが、「クレアが待ってる」と言ってユアンとアイはそのままケントの部屋へと行くことになった。


 「ユアン様、アイ様、ザルク公爵の護衛お疲れ様でした」

 「いや、そこまでかしこまらなくてもいいよ」

 「そうだよ。私なんてほぼ何もしてないし...」

 

 丁寧なクレアの挨拶に少し戸惑うユアンとアイだった。クレアはいつも通りの王族としての振る舞いだったが、ここまで完璧な振る舞いをされてしまうと言葉遣いも直さないといけない様な気がしてたまらなかった。それでも、クレアと好きあっているケントは慣れているようで普通に話している。それでいいのか?と思うがクレアは嫌がったりもしていないので多分大丈夫なんだろう。そういうユアン自身も陛下に関してはあまり敬語を使っていない。


 「それはそうとお土産は?隣国に行ったんだから何かあるだろう?」


 ケントの言葉を聞いて二人は背中に何か衝撃が走る感覚を覚える。


 「いや、お土産は...その忘れてたってか、疲れてて...」

 「私も...ちょっと忘れてて...」

 「つまり何もないってことだな」

 「「すみません」」


 まぁそれでもケントは別に怒っている様子でもない様だった。


 「けど、面白い話はあるよ」

 

 ユアンはクローム王国でジェロンドという最強の魔導士と戦ったことや時の魔女に会ったことを話した。話し終えるとケントは武者振るで机がガタガタと震えていた。


 「マジか...そんなに強い人たちがまだまだいるんだな...俺も戦ってみてーな!」


 ケントがそういうとユアンとアイは二人して飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。


 「どうしました!?お茶に何か入っていましたか?」

 「いや、大丈夫...」

 「ちょっと面白かっただけだから」

 「面白かったって俺何か変なこと言ったか?」


 ケントはわかっていなかった様だが、別にさっきの会話も変だというわけではない。ただ、帰り道に話していたケントがいいそうだった言葉をほぼそのまま行っていたのでおかしくなって紅茶を吹き出しそうになっただけだった。


 「いやーまさかユアンが真似した通りになったね」

 「真似?どういうこと?」


 アイは帰り道に話した内容を全て話すとケントどころかクレアでさえも笑っていた。誰からみてもケントは戦闘狂だ。それ故ケントが戦いにおいていいそうな言葉は大体想像がつくのだ。


 「あー久しぶりに腹抱えて笑ったな。やっぱお前らが一番面白いや」

 「当たり前でしょ。幼馴染なんだし、ね?クレアもそうでしょ?」

 「え、はっはい!私も幼馴染と言えるんでしょうか?」

 「五歳から一緒にいるんならもう幼馴染だろ?そうだよなケント?」

 「当たり前だろ、俺ら四人幼馴染に決まってるじゃん」

 「あ、ありがとうございます///」


 クレアは少し照れた様にお礼を言う。

 こうして笑っているだけでクローム王国で起きたことよりもここでの会話が一番楽しいことにユアンは気づく。ここで笑っている光景を見てユアンは改めて失くしてはいけないと心に思った。

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