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止まった世界の先で
ある週末・・・ 僕は母と買い物に出かけた。
ただ、それだけ。
ほんとにそれだけだったんだ・・・
買い物をするのは、近所のスーパー。
普段からよく利用していてレジのおばさんとは既に顔見知りだ。
値段も安いし、生活に必要最低限のものはなんでもある、非の打ち所の無い店だ。
店内に入ったぼくは、いつもどおり母と別れてお菓子売り場へと直行した。
そんな僕の前にあらわれたのは、無数の選択肢。
チョコ、ガム、グミ、クッキー、あめ。
「なんだこれ?」
そして、その中に紛れ込むようにそれはあった。
それはふさふさとした毛に覆われていて、
それには耳が付いていて、
それには4本の脚が付いていた。
つまり、それは犬だった。
正確には、犬のマスコットだった。
ただ、そのマスコットには、目が無かった。
手のひらに収まるほどの大きさなのに、目のあるはずのところには深い深い穴があいていた。
世界の果てでものぞきこんだみたいに、光をまったく反射しない。
そんなマスコットを見ていたら、
「あ…………… 」
僕の視界は、瞬く間に真っ暗になった。