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紫電色の魅力

     ♪♪♪ 


 白紙と睨めっこ。こうしてから何分経っただろうか。

 その間にもカウンター越しにルミナリエスが話しかけてくる。奥の部屋からパイプ椅子を持ってきて正座で座り、こちらに乗り出して来てるのだ。正直うるさい。


「ねえねえ。ここは何を売る商店なんだ?」


 楓は顔を上げずに、


「楽器だって。そっちの世界にも楽器くらいあるだろ?」

「あったけど形状が全く違う。なあ、これらってどう使うんだ?」

「うるさい。絶対触るなよルミナリエス。壊したら即刻出ていってもらう」

「わ、分かってるさ。大事な商品だもんな。あ、じゃああの叩く奴なら、」

「和太鼓ならともかく小鼓に腕まくりして近寄るなおバカ。守る気ゼロか。私はさ・わ・る・なと言っている。その意味分かるな、ルミナ」

「わ、分かった」


 何度か間違えて呼んだら、その度にしつこく名前を連呼されたため、初めの名前だけ脳にインプットされた。全部はルミナリエスなんちゃらファート=シグマ。

 略称はルミナ。と定めた。


 疲労の混じった青い息を吐いて、楓は白紙の上に鉛筆を転がした。

 兎も角ジャケットの骨相だけでも描き出そうと思ったのだが、これもまた上手くいかない。イメージが浮かんでこない。想像力が働くことを放棄している。内のどこかにいるもう一人の自分が足を引っ張り、腕を止める。加えて喧しいルミナが集中を乱してくるし。いや、彼女がいる前からこうなっていたけど。


 どうしよう、真面目にスランプだ……。


 嫌な未来が頭を過ぎったので、思考を切り替えるためにもルミナを見た。

 ずっと放置していたが、いくつか疑問は残っている。どうせだから聞いてみよう、暇潰しと気分転換を兼ねて。むしろそっちの方が主目的。


「それで、ルミナ。あんたはいつになったら帰るんだい?」

「『救世の魔導師』を見つけて、協力の了承を得られれば今すぐにも。けど、帰るための時空間魔法が今は使えないから。時が満ちるのを待つしかない」

「そうかい。ん、魔法、か」


 ふと口走ったキーワードに、楓は得も知れぬ紫の魅力を見た。

 そう、今まで何を疑問していたのか。何を横道にずれていたのか。魔道士とか異世界とか元より興味はない。そんなものどうでも良い。物理法則とか常識を考えるとどうでも良くはないが、そこは流せる。

 問題は別のこと。もっと個人的なことに関して、だ。


「呪文、って言ったよな。昨日のって、一体何だったの?」

「昨日の? 始めに見せた魔法のことか?」

「ううーん、魔法もそうだけど、やっぱ呪文?」


 自信なさげに言うと、怪訝な表情をされた。


「よく分からないことを言うな。あれは言葉が通じないようだったので、精神感応系の魔法で自らの脳の言語野をいじくり、こっちの世界に合わせただけだ。カエデが知らないのも無理はない。アレは天才の私が即興で作ったものだからな!」

「なるほど」


 理解はしてないけど、そう相槌を挟む。

 魔法、魔法使い、魔道士。何度も繰り返されておきながらちっともピンと来てなかったが、確かにそれくらいの不条理でもなければ、あの現象は説明できまい。


 呪文。マントラ。スペル。念仏。おまじない。呼び方は各地方各時代で異なるが、その意味と意義は一貫している。神仏に通ずるための意味のない不思議な文句。はたから聞いていても本業の方でなければ何の意味も掴めないデタラメな字並び。


 しかし少女が詠唱したのはそれよりももっと特殊な、奇跡の術、魔法を使用する際のものだ。儀式。占い。呪術。魔術。マジック。マギ、だ。


「魔法、か。ねえ、他にもああ云うのできる?」

「……おうぅ! あれと同じレベルを求めるだと! この過疎地で、魔力切れの私に……! ふふ、これは私の力を確かめるための試練だな。受けて立つ!」


 勝手に挑戦を受けて勝手にいきり立つルミナ。強気な性格は結構だが、それゆえ行動が後先見ずのようで、黒衣の少女は表情を一転させ、勝手に落ち込んだ。


「ああ、やっぱり無理だ。魔力が足りない」

「魔力がないと、使えないのかい?」

「何を言ってるんだ。魔力あっての魔法だろ。肉体が持ってる魔力は限られている。だから空気上の魔因子を補助として使用するのだが、過疎地で魔法を発動させたら全部の魔力を自分で支払うことになるし、それが尽きたら次は生命力が削られて、行き過ぎれば死ぬだけだ。それゆえ肉体を鍛えて魔力の量を高める宗派もあるのだけど、そんなことしてる暇があったら一個の魔石を精錬する方が早いし」


 急に始まった流れるような高説にストップを掛ける。


「あー、良い良い。覚える気ないから。じゃあ言葉だけでも唱えられない? あの呪文、もう一度聞きたいんだけど」

「何だ、覚えたかったのか? だったら先にそう言え。最後まで唱えると魔法が起こってしまうから途中までな」

「それで十分。あれが見れるならね」


契約成立で私は目を閉じて、耳を澄ませる。


        ♪♪♪

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