灰色の夢の抜け殻
手遊びに溜めたショートストーリ。
どうせなので発表しませう。
……長編のネタに詰まってるとかじゃないアルよ?
小さい頃は何でも出来ると思っていた。
それが悪いとは今でも思わないし、むしろ誇らしく感じる。けれど大人になるに連れて出来ないことは増えてきて、出来ていたことも出来なくなっていってしまった。友達の作り方とか特にだ。
ああ、特に。
あの頃は虹色に見えていた世界も、今となって目を凝らして見てみれば、タールのように真っ黒に塗り潰されていて、夢も希望もあったもんじゃない。子供の純真な夢を返せよボケ。
要は受け取り方の問題だと頭のいい人は言うだろう。
受け取り手の心理状況によって世界は別物のように変わっていく、と。そう言われてしまうと確かにその通りであって反論のしようが見当たらない。根暗な奴が世界を聞けば、当然黒くもなるだろうし、明るくハッピーな奴が世界を見れば、当然のように楽しく響けるだろう。
でも、その受け取る方法を、手段を見失ってしまった人はどうすればいいのだ。
間違っている、そうではないと皆は白く言う。真っ赤な言葉を叩き付ける。
必死に耳を塞いで逃げてきたけれど、もうダメだ。とうとう捕まった。自分でも無理だと思ってしまった。自分の限界をありありと『見て』しまった。
ああ、私はこれ以上先には進めないんだ、って。
ただ何かをしたかっただけなのに。楽しい自分を探しに行っただけなのに。
自分探しは失敗すると昔から相場が決まっていて。私はその通りに失敗して、諦めてしまっただけ。自分は特別だと信じて生きてきて、例外だと断罪されて逃げてきて、とうとう見つけ出した道でさえも、私は特例にはなれなかった。
そんなものだ。人間とは。世界とは。
私とは。
純粋色な夢を大空に描いて、そこに向かって思いっきりジャンプして、地面に落ちるまでの間に手頃な着地地点を探す。何よりも自分が許せる場所へと。ずっと飛び続けられる人は生まれ付きジェット機を装着している特別な人だけで、残りの人たちは自分でも呆気に取られてしまうくらいあっさりと地面に戻っていく。降りてからそこで人生を続ける。
空を目指すことは重要だけど、それは決して人生には出来ない。
ああいや、そんな大層な話じゃない。悲劇的でも観念的でも宗教的でもない。どっちかというと喜劇的なのだ、人生とは。社会とは。私とは。
今の私は夢の残骸。
いいや、そんな格好いいものでもないか。もうちょっと無様だ。汚くならないように気を付けているのが、さらに痛々しくてカッコ悪い。
未練たらしく夢と関わり、馴れ馴れしく例外を晒し続けている。
だから。昔の私には悪いけれど、今の私は結構何も出来ない。
うん、ごめんね。