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言葉を紡いで  作者: 凛
3/8

打開策

 彩葉先生が現れた瞬間、教頭先生に押されまくっていた形勢が一気に逆転……とまではいかなくとも少なくとも引き分け程度まで傾いた気がした。

 先生は若くて美人、加えて教え方も上手とあって生徒からは絶大な人気を誇っていた。国語の先生なのに何故か白衣を纏っているところは男子のツボらしい。

しかし文芸部の顧問ではあったものの奔放主義を決め込んでいるらしく、私はまだ数えるくらいしか話したことはない。

「教頭先生。いきなりやってきて廃部だなんて、ちょっと横暴なんじゃありません?」

 妖艶に微笑みながら小首をかしげる彩葉先生に教頭(先生と呼ぶ価値はないと思い以下略とする)はややたじろぎながらも、それでもまだ不遜な態度で腕を組む。

「し、しかしだね、我が校の部活動として認められるためには多少なりとも実績となるような有意義な活動をしてもらわないと」

「ええ。そうですわね。確かに、このままではいけないとは私も思いますわ」

「そうだろう? そりゃあ流石にテニス部のような輝かしい実績を残せなんて酷なことは言わないがね」

「ですが、教頭先生の仰ることをまとめますと、要するに実績を残せばいい、と」

 彩葉先生がわざわざ確認するように言った。まるで被告人から言質をとる検察のよう。それはもう、美しすぎる不敵な笑みを浮かべながら。

「ま、まぁそうだが、しかし――」

「じゃあ問題は解決ですわね。ええ、ええ、実績でもなんでも残して見せましょう」

 なんだか雲行きが怪しくなってきた。ちょっと待ってほしい。実績を残す、って。どうやって? 

「む、無理に決まっているだろう! 分かっているんだぞ、現在文芸部員に籍を置いている生徒のほとんどが幽霊部員で部室に顔も出さないことを。実質、君たち宮野(みやの)(つづる)と綾崎栞しかいないこともな!」

 そうなんです。そこなんです。最大の問題は。

 私が入学して以来――つまるところ今年の春からということだが――文芸部で顔を合わせたのは宮野君だけ。私は宮野君以外の部員を知らなかった。

「大丈夫です。こちらにも考えがあるので」

「いくら顧問だからといって……身内をかばい続けると痛い目を見るぞ……っ」

 彩葉先生の台詞と有無を言わせない笑みに教頭はもう言い返せないのか、苦し紛れの捨て台詞を残して足早に去っていった。

 残された傍観者と化していた私と宮野君、そして教頭を追い払ったことに気をよくしたのかくつくつと笑う彩葉先生。

「あ~面白かった。みた? あのオヤジのマヌケな顔!」

「そんなことどうでもいい。どういうつもり?」

 宮野君がいら立ったように聞いた。先生相手に何のためらいもなくタメ口を……。そんなに仲がいいのだろうか。

だけど、今はそれを考える余裕はない。問題は実は何一つ解決していないのだ。何かしらの活動をしなければ文芸部がなくなってしまう。

私の新しい居場所候補がなくなるのだ。それはできたら避けたい。

「簡単じゃない。残せばいいんでしょ、実績ってヤツを」

「そんな簡単に……」

 思わず本音がぽろりと零れ落ちた。二人が一斉にこちらを見たので、顔が赤くなるのがわかる。かぼそい声だ、と自分でも思った。普段声を出すなんてあまりないから。

「そんなに言うんなら具体的な案でもあるんだろうね」

「もっちろん。あのね、十一月に文化祭あるでしょう?」

 私の学校は少し特殊で、いわゆるマンモス校である。普通科は当然のこと、音楽科、服飾科、食物科、国際コミュニケーション科……などなど、専門学科がいくつも設置されている日本でも有数の学校だからだ。

そんな各学科が一番それぞれの見せ場を作ることができるのが毎年霜月に開催される文化祭なのだ。例えば音楽科は定期演奏会を開いたり、服飾科は各々が自作した衣装でファッションショーを催したりして会場を訪れた人々の心を魅了する。

 私が在籍する普通科も、専門学科と違った奇抜な特色はないけれど皆で工夫を凝らしてより楽しい文化祭になるよう盛り上げ役に一役買うのだ。五日にわたって毎年それは盛大な祭りになるのだと、中学からのクラスメイトが話していたのを聞いたことがある。

 そして参加団体は何も学科ごとだけではない。部活も有志で参加できる。できるけれども。

「そこで、我が文芸部は文芸部らしく、部誌を作成して配布しようと思います!」


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