反乱
数日後
「飯をくれ!」
「門をあけろ!」
痩せ細ったスラムの住人たちが、必死に城門を叩いている。
彼らは周辺の村で散々略奪を繰り返した乱暴者たちだったが、どんな屈強な男だろうが空腹には勝てなかった。
「城門を……破れ!」
飢えに苦しむ男たちは、絶望的な顔で城門を破ろうとしたが、中から厳重に閂が掛けられているので、ろくな武器を持たない彼らでは破ることはできない。むなしく引っかき傷を作るだけだった。
「こうなったら、外に逃げよう」
「どうやって?外はアンデットたちに取り囲まれているぞ」
門の上から外を確認した住人たちは、なぜかアンデットたちが居座っているのを見て絶望する。
まさしく前も地獄、後ろも地獄で行き場所がなかった。
もっとも、それは町に限ったことではない。
城の中も、多少マシとはいえ似たような状況だった。
「腹が減った……」
「王都からの援軍はまだか?いったいいつまで我慢していればいいんだ!」
役人たちは不満を漏らす。
最初は三食食べられていたのだったが、日をおうごとに量が減り、今では用意されるのはパンが一かけらといった状況だった。
「金は払う!誰か俺に飯を譲ってくれ!」
中には不正にためた金を差し出して周囲の人間に頼み込む者もいたが、今では誰にも相手にされない。
まともな食糧がない状況だと、金など何の意味もなかった。
「エルウィン様!王都へ救援を求める伝書鳩は送ったのですか?」
役人に責められ、エルウィンは言い訳する。
「だ、だけど、そんなことをしたら僕の統治能力が疑われるし……」
エルウィンは文官で、父親という後ろ盾を失った今では減点主義で評価される官僚社会で栄達するしかない。
バーミンガムの町からまともな住人がいなくなり、税金が取れなくなったことをごまかすために元スラムの住人を扇動して周囲の村を襲わせたことが判明したら、失脚どころか死刑すらありえるだろう。
「今はそんなことを言っている場合ではないでしょう?」
「他人事だと思って!僕が失脚するときはお前たちも道連れだからな!」
エルウィンと役人の間で、不毛な争いが繰り広げられる。
それを見ていた騎士は、互いにうなずきあうと剣を抜いた。
「お、お前たち?」
「もう限界です。無能なあなた方に付き合っていたら、私たちまで餓死してしまいます。あなた方には牢に入ってもらいます」
騎士たちによって、エルウィンは地下牢に入れられてしまうのだった。