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先祖

肥料製造所は、領内で出た廃棄物-う○こを農作物がよく育つ薬に変換する場所である。

巨大な穴には鉄でできたチェーンが底に向けて伸びており、何かが祭られていた。

カルディアは穴の前に作られた祭壇に祈りをささげると、いつものようにロビンに説教する。

「わが先祖タゴサクは、命を育て傷を再生させる光属性の『再生士』だった。勇者が不死身の力を誇ったのも、彼のおかげという。しかし、魔王と戦った時に呪いを受け、その力を反転させられてしまった」

ロビンはうんざりしながらも、何十回と聞かされた父の話を聞く。

「だが、タゴサクは諦めなかった。その闇に落ちた自らの力を受け入れ、世のため人のためにと使いこなした。その結果、闇の万物を腐らせるという力で「肥料」を生み出し、世界を発展させたのだ。その気高い意思を、お前も告ぐのだぞ」

カルディアは先祖の話を続ける

勇者たちが世界を救った後、呪われたタゴサクは恐れられるように亜人族との国境である未開拓の土地フードの男爵として王都から追放された。

しかし、彼は誰を恨むことなく自らの呪われた力の前向きな使い道を模索し続け、ついに植物を良く育てることができる肥料を作り出す『発酵魔法』を編み出した。

以来、タゴサクの子孫であるフード一族は辺境の田舎者という立場ながら、国を富ませる役割を果たしてきたのだった。

「良いかロビン。『百姓は我慢が大事だっぺ。どんなに苦しいことがあっても、いつか豊作の時は来るだ』」というタゴサク様のありがたいお言葉を忘れるでないぞ」

カルディアはそういうと、穴の中を覗き込む。

「うむ。順調に集まっているようだな。皆が良く食べ良く出している証拠だ。結構結構。」

すさまじい臭いが発せられている穴を確認して、カルディアは満足そうに頷く。ロビンはまだ父のように達観した境地に至れていないので、思わず顔を背けた。

「領主様のお陰で、おらたちは綺麗にすごせておりますだ」

馬車いっぱいに領都から出た排泄物や生ごみが入った樽を積んだ奴隷が頭を下げる。ちなみに奴隷といっても、ちゃんと給料は出ている。

こういう汚れ仕事をしたがる領民がいないので、仕方なく王都で奴隷にされた孤児や犯罪者をつれてきたのだが、腹いっぱい食べられて賃金も貰えるとわかると、彼らは文句も言わずに忠実に仕事をしてくれるようになった。

「おらたちみたいな者でも、ちゃんと生きていける。この土地は天国みたいです」

「うむ。しっかり働いてくれよ」

カルディアは優しく労うと、奴隷たちは穴に廃棄物を投げ込む。

「よし。やるぞ。『発酵』」

「『発酵』」

カルディアとロビンは、魔力を放って空気中の細菌を操り、廃棄物の分解に励む。

あっという間に廃棄物は茶色い土になっていった。


魔法学園から家に帰っている間、ロビンが何をしていたかというと、ひたすら自分に与えられた畑の世話だった。

「よし。いい感じに育ってきたな」

一日中大豆畑で腰をかがめて収穫しながら、満足そうにつぶやく。

「あとはこれを発酵させて……」

一つ一つ丁寧に剥いた実を取り出し、麴を入れて発酵魔法を使う。樽の中に茶色の塊が出来上がった。

「よし。売りに行くか」

樽に入れた味噌をリヤカーに入れて館を出発し、領都ススキノの町に向かった。

「え~。味噌。味噌はいらないか~?。領主様お墨付きの、美味しい味噌だよ~。真っ白い豆腐もあるよー」

声を張り上げながら町を歩く。町の人はこの町の名物がやってきたと、親しみをこめて見守っていた。

なぜ領主の息子であるロビンがこんなことをしているかというと、領主であるカルディアの教育方針である。

なんと彼はロビンに小遣いを与えず、畑だけ与えて工夫して稼ぐようようにと命令したのである。

最初は怒っていたロビンも、実際にやってみたらこれが意外に楽しかった。元手もいらず、働けば働くだけ稼げるからである。最近では領主ブランドとして立ち上げて結構な稼ぎになっていた。

町の人たちも領主の息子が苦労していると同情と親しみを持って、積極的に購入してくれる。こうして実際に商売に励むことで、町の人の意見を聞いて品質向上に反映させることもできた。

(結構儲かるな。この調子なら新しい商会を立ち上げてもいいんじゃないだろうか?)

樽に入った味噌はあっというまに完売し、館へ帰る途中にカイルは喉の渇きを感じる。

「……ちょっと休んでいくか」

台車を裏において、ロビンは茶店に入っていった。

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