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ラットレミング

2019年謹賀新年 今年もよろしくお願いします

数日後

ロビン率いるシャーウッド騎士団が、辺境の村に到着する。

「待っていたよ。あんたが言うとおり、税と兵を用意した。さあ、バーミンガムを攻略してくれ」

「慌てるな。お前たちにはまだやってもらいたいことがある」

そういうと、村長たちに命令してバーミンガム周辺の地図を広げた。

「なるほど。東西の門以外は硬い城壁に囲まれている。壁を破るのは無理だな」

ロビンのつぶやきに、コノハは失望した。

「だからってあきらめるのか?」

「慌てるな」

ロビンは穏やかな目でコノハと村長たちを見つめた。

「民を見捨てるわけにはいかないだろう。今のバーミンガムは毒蛇の巣も同然だ。まともな統治が行われず、代官のエルウィンやその配下の役人たちは私腹を肥やし続けている。このままだと、ビクトリア地方は破滅するだろう。だから、奴らを確実に潰し、このあたり一帯をフード公国に編入する」

ロビンの決意を聞いて、彼を軽視していた村長たちも態度を改める。

「ロビン様。私たちはあなた様に忠誠を誓います。ぜひとも公正な統治を」

ロビンは頷くと、コノハや村長たちを下がらせた。


村長が下がった後、騎士団長ジョンがため息をつく。

「言うは安し、行うは難しですな」

「ああ」

ロビンは頷く。

「我々は新たに徴兵した村人たちを集めても、敵の半分程度。しかも都市をまもるのは王国正規兵です。攻城戦は防御側が有利。攻めるほうは倍の戦力が必要です。今のままでは」

「わかっている。そもそもまともに戦う気はない」

ロビンはちゃんと現実を弁えている。正面から戦っても、勝ち目はないことを知っていた。

「では、どうされます?」

「慌てるな。やりようはあるさ。奴らと戦わなければ勝てる」

ロビンは地図上のバーミンガムに、大きく×をつけた。

「このさい、バーミンガムを封鎖する。奴らを兵糧攻めにしてやろう」

「兵糧攻めとおっしゃられても、奴らは周辺の村から奪った食料も溜め込んでいます。食料がなくなる前に、王都から援軍が来るかもしれません」

「わかっているさ」

ロビンはコノハたち義勇兵にある命令を下すのだった。


バーミンガム

「あんたに言われたとおり、『ラットレミング』を大量に捕まえてきたけど、こんな雑魚モンスター集めてどうするんだ?」

ネズミみたいなモンスターが詰め込まれている大量の籠を運びながら、コノハが聞いてきた。

「ラットレミングは最弱モンスターだ。だからこそ危機が迫ると爆発的に繁殖を開始する。今回はその習性を利用して、バーミンガムを攻めようと思う」

ロビンが『腐り鎌』でレミングを傷つけると、あっという間に呪いが浸透して茶色に変化していく。のろわれたレミングは仲間を襲い、数分で籠の中のレミングはすべて呪われた状態になった。

のろいを受けて興奮したのか、レミングはキーキーと凶暴な鳴き声をあげている。

「これをバーミンガムに侵入させたら、奴らの食料は簡単に食い尽くされてしまうだろう」

「だけど、バーミンガムを落としても奴らに逃げられたら意味ねえぜ。山賊になって村を襲うだろう」

コノハは鋭い突っ込みを入れる。

「そうだ。だから奴らをバーミンガムに閉じ込めるために、お前たちにはもうひと働きしてもらうぞ」

そういうと、ロビンはいきなり『腐り鎌』でコノハを斬りつけた。

「いたっ!い、いきなり何をするんだ?あ……なんか気持ち悪くなってきた……グェェェ」

コノハのがうつろになり、肌が茶色に変わっていく。あっという間にアンデットとなった彼女は、仲間の兵士に襲い掛かった。

「な、何をするんだ!」

兵士たちは逃げようとしたが、周りを騎士たちに囲まれている。なぜかアンデットたちは騎士を襲わず、ひたすら兵士たちに狙いを定め、あっという間に義勇兵たちはアンデットになっていった。

「命令する。バーミンガムの近くでレミングを放て。それが終わったら四方の門を塞いで人間が逃げられないようにしろ」

「ギィ」

アンデットと化したコノハたちはうなずき、レミングが入った籠を担いでバーミンガムに向かう。

「しかし、大丈夫ですか?呪われたレミングなどを使って」

「問題ない。呪われたレミングは一週間で死ぬように設定している。これで犠牲をださずにバーミンガムを落とせるぞ。後は高みの見物といこう」

バーミンガムの近くの丘に陣を張り、ロビンは悠々と見守るのだった。


2019年一月末に「無駄の従者にして闇の黒幕~勇者は俺の操り人形です~」が発売されますので、よろしくお願いします

挿絵(By みてみん)


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