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バーミンガム侵攻


新たにできた道の整備は順調に行われた。

仕上げとして、ロビンは亜人の若者たちに命令して枝が触手のようになっている樹を道沿いに植樹する、

「これは「食植樹」といって、植物を食べる植物なんだ。触手のようになった枝で絡み付いて捕食するので、危険果物も怖がって近寄らない。これを植えることで、商人たちが安全にフード領までこれるだろう」

「なるほど」

こうして亜人国との通路となる「川蛇の道」が完成する。これで本格的な貿易の準備が整ったが、ロビンにはある悩みがあった。

「ティラノ陛下に命令された『亜人と人間が共存する町』を作るためには、技術を持った人間が必要だけど、どうやって集めようか」

残念ながらフード領は農業主体の領地なので、技術者といった者はいなかった。家やインフラ整備といったものは、すべて隣のバーミンガムから出張してきた技術者が作っていたのである。

どうしょうかと悩んでいたら、フード領の将軍に就任したジョンがやってきた。

『ロビン殿!どうかバーミンガムの民を救ってください!街に残してきた仲間からの伝書鳩での報告書です。エルウィンという小僧とその部下の役人たちめが悪政をしております!!」

ジョンは怒りに震えながら訴えてきた。

「領民たちは衛兵によって監視され、何をするにも税の名目で金銭を搾りあげられます。払えないとなると容赦なく奴隷に落とされ、奴隷商人に売り飛ばされてしまいます。まっとうな商人は商売にならないと、ビクトリア領へ来るのを避けております。バーミンガムの町は王都のスラム出身の無法者と奴隷商人が溢れ、正当な住民たちはどんどん追い詰められています」

「わかった。奴らに一泡吹かせてやろう。それに、バーミンガムの民を移住させれば新たな町づくりが一気に進むからな」

ロビンは彼らと戦うことを誓うのだった。


地図を広げて、これからどうするかを議論する。

ビクトリア地方はブルージュ国の王都から見て西部にあたる。ビクトリア領都バーミンガムから見て東側の王都に近い位置に接しているのがスイート領、その反対側の亜人国に近い位置にあるのがフード領である。

現在、バーミンガムは領主代行であるエルウィンとその配下の役人たちによって支配されている。最近ではエルウィンはすっかり自制心を失い、市民から美しい女を集めて自分のハーレムを作り上げていた。

「奴は厚い城壁の中にこもって好き放題に振舞っているようです」

「潜入は?できないのか?」

ロビンの問いかけに、ジョンは首をふる。

「厳しく出入りする者をチェックしているので、新たに潜入するのはにむずかしいかと、今の所、城門を潜れるのは王都で通行手形を発行された商人だけです。旅人に扮して潜入しようとしても、門で捕らえられてしまいます」

「わかった。できればこの手は使いたくなかったが、仕方ない」

ロビンはそういうと、『腐り鎌』を持ってフード領から出撃した。



フード領とビクトリア領バーミンガムをつなぐ「山蛇の道」の出口は、王国軍によって砦が作られ封鎖されている。

その山道を、数十人のフードをかぶった騎士たちが駆け下りてきた。

「て、敵襲!フード軍が来た!」

あわてて門扉を閉ざそうとしたが、ガス発芋を投げつけられる。

ボンッという音と共に、扉は破壊された。

同時に屈強な騎士たちが砦の中に侵入し、乱戦となる。

その中でも特に目立っているのは、真っ黒い鎌を担ぎ、黒いフードをかぶっている男だった。

男が鎌を振るうたびに臭い瘴気が立ち上り、兵士たちを苦しめる。

さらに騎士たちの持っている武器に攻撃されると、ほんのかすり傷でも激痛が走った。

「に、逃げろ。呪われるぞ」

散々フード領で苦しめられた記憶がよみがえり、兵士たちは浮き足だってバーミンガム方面に逃げていった。

「うまくいきましたな。しかし、この武器はいったい……」

ジョンたち騎士は自分がもっている剣を、複雑な目で見つめる。それらは刃の部分が茶色に染めあげられていた。

「『腐り鎌』で刃を研いだのさ。そうすると普通の武器を呪われた武器に変えることができる」

「騎士としては複雑な気分です。戦いに毒刃を用いるとは」

そんなジョンを、ロビンはたしなめた。

「今は騎士の誇りとやらにこだわっている場合ではない。どんな卑怯な手を使ってもいいから、バーミンガムの民を救うことが大事だ」

そう諭されて、ジョンたちも納得する。

「そうですな。ですが、どうして兵士たちを倒さずに逃がしたのですか?」

「奴らには呪われた状態で戻ってもらいたかったんだ。後は待つだけだ。数日中にはバーミンガムは大混乱になるだろう。俺たちは「山蛇の道」で待機するぞ」

ジョンたち騎士は、自信たっぷりなロビンに首をかしげながら従うのだった。


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