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表彰

王都

「ブリストル王子!勇者の血を引く英雄!」

「大勝利おめでとうございます!」

大規模なパレードが行われ、豪華な馬車に乗っているブリストル王子が手を振っている。

「美しき王子妃にも栄光を!」

その隣で、ピンク色の髪をした美少女、ピーチ・スイートも笑顔を振りまいていた。

豪華な馬車が王宮に着くと、広場の前に祭壇が作られ、ブリリアント王が待っていた。

王子と主だった王国軍の幹部はその前に進み出ると、跪く。

「皆の者、よくやってくれた」

「こ、これもひとえに陛下のご威光の賜物でございます」

王子が代表して、事前に決められた台詞をどもりながら吐く。

「戦死した宰相の息子エルウィンよ」

「ははっ」

線の細い文官風の少年が進み出て、王の前に跪く。

「そなたはバーミンガムの町の領主代行を命じる。戦いに傷ついた町の者たちを癒し、彼らを王国に従わせるのじゃ」

「……謹んでお受けいたします」

(くっ……王子から離されて田舎の都市の代官だって?これじゃ父上の跡をついで宰相になることができないじゃないか。下手をすると二度と王都に戻れないかも)

エルウィンは不満たらたらだったが、仕方なく受け入れた。

「そして大将軍の息子。ウィルヘムよ」

「はっ」

筋骨たくましい少年が跪く。

「卿の父親は勇敢に戦って死んだ。卿は父亡き後代わって指揮をとり、よくぞ勝利を掴んだ。その功績により王都の儀仗兵の将軍に任じる」

「……御意。今後も王家に忠誠を誓います」

ウィルヘムは不満そうな顔をしながらも、跪いた。

(この私が儀仗兵の将軍だと!実戦に出ることもなく、ただ王宮の衛兵を指揮するだけの飾り物の将軍職だ。くそっ!大勢の兵が死なせたから、俺の指揮能力に疑いをもたれたのか!)

儀仗兵の将軍はパレードの警護や王の使者の警護など、一見華やかであるが実際には名誉職に近い。指揮する兵士も貴族のお坊ちゃんたちばかりであり、とても役にたちそうにない。

そんな彼にピーチは流し目を送っていた。

(今にみておれ。幸い儀仗兵団長なら王宮に入り浸ることも可能だ。無能王子と淫乱小娘を操り、王が死んだ後にこの国を乗っ取ってやろう)

ウィルヘムは、野望に燃えた目を玉座に向けるのだった。。

「そしてスイート子爵よ。王子の後見人としてよく補佐をした。階級昇爵して、伯爵位を授ける。同時に宰相代理を命じる」

「はっ」

スイート子爵は跪く。内心、バーミンガムを含めたビクトリア地方の領主に指名されないのが不満だったが、今は我慢した。

(焦ることはない。宰相代理の地位は得た。将来的にはこの国の影の支配者になることも夢ではない)

スイートは横目で王子を見る。その隣には、着飾った自分の娘ピーチが寄り添っていた。

「そして、我が息子、ブリストルよ。このたびのビクトリア領征伐の任をよくぞ果たした」

「もったいないお言葉でございます」

王子は期待に胸を膨らませながらこたえる。何かを期待しているようだった。

王はそんな王子を見てため息をつくが、仕方なく彼を表彰した。

「その功により、王太子として正式に認める。同時にピーチ・スイート伯爵令嬢との婚約を認めよう」

ブリリアント王の言葉に、王子の後ろに控えていたピーチが顔をあげてにっこりと笑う。

「民を心から慈しめる王妃になれるように、誠心誠意努力しますわ」

それを聞いた広場に集まった貴族からは、歓声が上がった。

「なんて清らかな心を持ったお方なのだろうか……」

「彼女は身分が低い子爵家の出身とはいえ、将来の王妃にふさわしい気品がある。これでブルージュ王国も安泰じゃ」

貴族たちは内心はともかく、王子の機嫌をそこねないようにと必死に褒めたたえてた。

これからの王国の権力はブリストル王子とその一派に握られることを敏感に察して、擦り寄ろうとする貴族たち。

ブルージュ王国は、滅びへの道を歩み始めるのだった。


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