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密告

館に戻ったピーチはこれからのことを考える。

(ウィルヘムの協力は得られた。王子は何とでもなるし、あとはエルウィンよね。政権を握っている宰相一派を味方につければいいんだけど、何か材料があれば……)

考え込むピーチの元に、メイドがやってきて告げる。

「お嬢様。就職希望のメイドがやってきたのですが、いかがしましょうか?」

「追い返しなさい。間に合っているわ」

「それが、ロビン様の所からやってきたアコリルだと……お嬢様の力になれるといって帰りません」

それを聞いてピーチは興味を引かれた。

(アコリルですって?フード領の内情に詳しい彼女なら、何か知っているかもしれないわ)

そう思ったピーチは、会ってみることにした。

「久しぶりね。アコリル」

「ピーチお嬢様のお変りなく」

アコリルは殊勝に頭を下げる。小さいころロビンと幼馴染だった彼女は、何度もフード領に行き、幼いアコリルともよく遊んだ。いわば彼女たちも幼馴染だった。

「それで、どうしたの?あなたはフード家のメイドだったはず」

「お嬢様と同じです。私もあの田舎に嫌気が差しております。ですので都会で生きたいと思って、出てきました」

アコリルの答えにピーチはニヤリと笑う。

「その気持ちはわかるけど、それだけじゃ雇えないわね」

「もちろん手土産をお持ちしております」

そういいながら金色のウロコのネックレスを見せる。

「これは、亜人国の王「ティラノ」のウロコでございます。フード家の家宝でございます」

アコリルはそういってウロコを差し出した。

「綺麗……竜王に認められた者しかもてないといわれる伝説のアイテム。でも、どうしてこんなものが?」

「実は……」

アコリルは手に入れた経緯を話す。それを聞くうちに、ビーチの口元がつりあがっていった。

「ふふふ。いいものをもってきてくれたわ。あなたは私の専属メイドとして雇いましょう」

「ありがとうございます」

アコリルは頭をさげる。それを身ながら、ピーチは心の中で会心の笑みを浮かべていた。

(これさえあれば、フード家、そしてビクトリア家も追い落とせる。さっそく有効に利用させてもらいましょう)

ピーチはウロコをもって、父親の元に向かった。


王都 宰相の屋敷

たいまつの炎がゆらめく薄暗い部屋では、三人の男がテーブルを囲んでいた。

この館の主人である宰相、ブルージュ国の軍隊のトップに立つ大将軍、してビクトリア地方の小領主スイート子爵である。

彼らこそが、ロビンの婚約破棄から始まる一連の騒動の黒幕だった。

ブリストル王子がスイート子爵の娘ビーチに思いを寄せていることを利用して、彼にマリアンヌと婚約破棄させて後ろ盾となるビクトリア辺境伯との縁を断つ。

その後、あまり優秀であるとはいえないブリストル王子を即位させ、自分の息子や娘たちを通じてこの国を私物化するという計画である。

しかし、ブリリアント王のアーサー王子を後継者とするという決断により、計画に大幅な齟齬が生じはじめていた。

「このままでは、私たちの地位も危うい。アーサー王子は優秀だ。彼が即位したら王自ら政治を行うだろう」

宰相は頭を抱えている。

「彼は武勇にも優れていると聞く。私を頼らず自ら軍を掌握しようとするだろう。そうなったら私の地位も危うい」

大将軍も渋い顔をしている。

その時、三人の中でもっとも地位が低いスイート子爵が口を開いた。

「心配めされるな。ブリストル王子に誰も文句がつけられぬ手柄を立てさせればよろしいのです」

子爵の顔には奇妙な自信が溢れていた。

「それはいったい?」

疑う彼らに、子爵は金色のウロコのペンダントを見せる。その裏にはフード一族へ贈る」と彫られていた。

「これはフード領がわが国を裏切り、亜人国に通じているという証拠になるものです。これを口実に出兵すれば……」

「なるほど……」

ほかの二人の顔にも狡猾そうな笑みが浮かぶ。

「まずフード家とビクトリア家の当主を呼び出し、処分しましょう」

こうして、全世界を巻き込む大乱のきっかけとなる事件が起こるのだった。

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