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『花の種』の種明かし

「行っちまったな。」

 晶はジョーカーさんが消えた方向を眺めて寂しそうに呟いた。

 警官たちもみんな追いかけて出て行ってしまった。

「まさか、ここが君の母校だったとはね。」

 後ろから声をかけてきたのは、いつもお姉ちゃんがお世話になっている(といっても、別に捕まっているわけじゃないからね。いつも、面白い事件はないかと聞きに行っているだけだからね。)真坂警部だった。

「真坂警部、いつもご苦労様です。」

 彼は古株らしく、普通に解決するのが難しい事件を担当している。つまり、警察界の厄介事担当。怪盗団の相手も当然真坂警部が担当。

 ちなみに、真坂警部の口癖は「まさか」だ。初めて会った時、名は体を表すとはまさにこのことなんだと思ったことを、今でも覚えている。

「雅、知り合い?」

「うん。お姉ちゃんがよく絡みに行くもんだから。」

「お姉ちゃん?」

「そう、重度の推理マニアがね、面白い事件はないかとよく聞きに行くんだよ。」

「まさか今回も、君に力を借りることになるとはね……。」

 警部は苦笑いを浮かべる。

「僕ではなく、姉に聞いた方がいいですよ。なんかもう、解けちゃっているみたいですから。」

「らしいね。電話で尋ねたのだが、『それじゃあ面白くないんで、雅に聞いてくださいな。』としか言ってくれなくてな……。」

 今度は僕が苦笑いする番だった。

「それで、さっき君はもう解けたというような事を言っていた気がするのだが……。」

「あぁ、その事ですか。」

 僕は絵の前に立つ。

「一つだけ、約束してくれますか?真坂警部、そして、晶も。」

「約束?」

「俺も?」

 僕は大きく頷く。

「この絵の仕掛けについて、誰にも言わない事。」

「なんで?」

「もし、この絵の解き方をみんなが知ってしまったら、天河氏がこの絵を描いた意味がなくなるでしょ?天河氏は、この絵を自分自身の力で解いて欲しい、きっと、そう思っているはずだから。」

 2人は僕の言葉に頷いた。


「それでは少しだけ、この謎を紐解きましょうか。」


 僕は、一冊の薄い本を取り出した。

「真坂警部は、この絵のこと、ご存知ですか?」

「あぁ、校長に聞いたよ。手の込んだ事をしてくれたもんだ。」

「この本は、読みましたか?」

「一応な。博物館の方で、でも、さっぱり分からん。」

 真坂警部もお手上げらしい。

「この詩の中に、二ヶ所線が引かれているところがありますよね。一ヶ所目に注目してください。」


『彼は、夜空の中、星が集まる光の中に、花の種を垣間見た。』


「これが、一体何だっていうんだよ? 俺たち、散々考えたぜ?」

「そう、考えたよね、難しく。」

「わしにはただの詩にしか見えんがなぁ。一体、どんな暗号だったんだい?」

「これは、暗号でもなんでもありませんよ。」

「はぁ?!」「まさか!?」

 二人は驚き目を見開いた。

「この文、素直に読んで見るよ。」

 僕は文に従って指さしていく。

「彼は、」

 絵の中の俯いた少年。

「夜空の中、」

 絵の夜空。

「星が集まる光の中に、」

 夜空の中の宝石で、一番大きい黄色の宝石。

「花の種を垣間見た。」

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 カタン、と何かが動く音がした。

「なんか今、音がしたよな?」

 僕は絵の額の下の方を指さす。

「これが、開いたんだよ。」

 木の蓋が開いている。この中に何かがあれば、音を立てて落ちているはずだった。

「ちなみに、彼らをこの絵の少年じゃなくて僕らにすれば――――」

 一番大きな黄色の宝石の中をのぞく。

「――――ここから、鍵が見えたはずだよ。」

 普段は暗くて見づらいだろうけれど、今は夕日が差し込んで床がよく見える。

「……なるほど、絵の中に鏡でも仕込んでいたのか。そこの石から入ってきた光が反射して、絵の額の中に隠したものが見えるというわけか……。」

 真坂警部は感心したようにため息をつく。

「中にからくり仕掛けも施してあると思います。絵がここに固く固定してあるのは、それらの仕掛けが見えないようにするためでしょう。」

「こりゃ、いくら謎が解けたって、あの時にはもう防ぎようがないな。」

 晶は肩をすくめた。

「なぁ、雅、だったら、もう一ケ所も同じようにすれば解けるのか!」

 僕は首を横に振る。

「そう簡単にはいかないよ。でも、その考えは近いかもしれない。」


 ――――次は、僕の番ですよ、ジョーカーさん……いや、怪盗団ドリームサーカス。


 僕は、ジョーカーさんが消えた夕日を見つめた。



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