二度目の予告状
長い間お待たせしました。
続きをどうぞお楽しみください。
怪盗団ドリームサーカスから予告状が出されて5日ほど経った日のこと。
午後7時半。
珍しく、何の連絡もなくお姉ちゃん、優が帰ってこない。待つのを諦めて夕飯を温め終えた時だった。
「たっだいまぁ〜。」
玄関からのんきなお姉ちゃんの声がした。
「遅いよ、お姉ちゃん……って、どうしたの?その格好……」
制服のスカートやコート、カバンなどに、大量の茶色に枯れたひっつき虫が……。
「あはははは……ちょっとね……」
そうなさけなく笑って家に上がろうとする。
「待った。まだ、上がらないでよ。」
「何で?」
「まず、そのひっつき虫を全部取って!」
「え〜!まず、暖まらせてよぉ〜!」
「他のところに被害を拡散させないで!」
駄々をこねるお姉ちゃんにビシッと言う。
「……はぁ〜い……。」
僕はひっつき虫を剥がすのを手伝いながら聞いた。
「ところでさ、何でこんなにひっつき虫だらけになってるの?」
「何でだと思う?」
いたずらっ子のような顔で聞き返される。
「そうだなぁ……」
ひっつき虫を剥がしながら考える。
「ひっつき虫がついているということは、山の方に行ったんでしょ?それに、昨夜はかなり雪が降った。」
お姉ちゃんはうんうんと頷いている。その手は動いていない。
「……さりげなくサボらないでよ。」
「ばれたか。それで?推理の方、続けてよ。」
お姉ちゃんの乾いたコートを掴む。
「山の方に広場があったよね。あそこなら、だいぶ積もっているはず。テスト終わった後だから、気晴らしにみんなで雪合戦でもしたのかなって思ったんだけど、それにしては服があまり濡れていない。だから、おそらく––––」
否定をしないということは、僕の推理は間違っていない。
「––––かまくらか、雪だるまを作っていたんでしょ?」
「ご名答。」
お姉ちゃんはパチパチと手を叩いた。
「でも、私がただ雪だるまを作っていただけだと思う?」
僕は黙って首を横に振る。自由気ままで、目新しい物好きで、思いつきで行動する人だ。普通のことを、するわけがない。何をしようとしていたか、嫌という程、手に取るように分かる。
「実は、雪だるまの高さでギネス世界記録を目指していたんだよ!」
「……。」
ため息をついて作業に戻る。
「ちょ……なんでため息をつくのよ。」
「呆れてね……。みんなに迷惑かけたんじゃないの?」
「いいや。今回は1人でやったよ。」
「……その身長で、よくやろうと思ったね……。」
お姉ちゃんは口を膨らませて言った。
「悪かったね。雅と違って私は、お父さんの長身が遺伝しなかったどころか、お母さんの低身長がまんまと遺伝しちゃったんだから。それに、背が足りないなら、頭を使えばいい。」
「……僕もそんなに背は高くないんだけど……。」
そういえば、ふと、あることを思い出した。
「お姉ちゃん、そういえば、ギネス世界記録がどれくらいか知ってる?」
「……。」
答えない=知らない。
また、ため息をついてしまった。
「よく……やろうとおもったね……。」
––––––あれ……?変だな……?僕の推理、本当に合ってたのかな……?
その小さな疑問をぶっ飛ばしたのは、お姉ちゃんの間抜けな声だった。
「早くご飯食べたぁい!」
「だったら、ちゃっちゃとひっつき虫取ってよ!」
それから3日後のことだった。
『2月14日の午後5時に、星ヶ丘中学校の『花園と種』から『夢の花』の種を頂きに参上します。
怪盗団ドリームサーカス』
ついに、再び予告状は出された。