表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

一人では気づけなかったこと

 次の日の朝、僕は晶に声を掛けた。

「へぇ、これ、寺だったのか。」

 晶はまじまじと地図を見つめる。

「日本の地図記号は変なのが多いなぁ。学校が『文』とかさ。」

「やっぱり、変?」

「あぁ。学ぶ場所なんだから、『学』でもよかったんじゃねぇの?って思った。」

「今回の謎については、僕よりも晶の方が適任かもね。気づいたこと、どんどん教えてほしい。」

「よっしゃ、雅を驚かせてやるよ!」

 僕は自分のメモを眺める。

 ――――病院……十字。図書館……本。

「晶、地図記号の形の感想を、教えてくれない?」

「ん?いいけど、何か役に立つのか?」

「いや、なんとなく……。」

「いいぜ。町役場ってのはそのまま白丸だろ、交番がバッテン、雅が説明してくれたように棒が二本クロスしている感じ。郵便局がカタカナのテで、博物館が……なんだろう、古代の宮殿の門?か?」

 ――――古代の宮殿……!

「もしかして……!」

 僕は詩を見る。そして、思いついたことが正しいと確信する。

「晶!これだ!この詩の言葉の中に、地図記号が隠されていたんだ!」

 パルテノン神殿は博物館。

 本は図書館。

 文は学校。

 十字は病院。

 クロスは交番。

 ただ、二番目の頂上にあたる地図記号は……?

「それは、そのままでいいんじゃねぇの?山の頂上だから、三角点とかさ。」

「そっか、そうだね。だいぶ進んだよ。あとは色と、6つが3つになる謎か……。」

「色と言えば、絵じゃねぇか?」

「絵?」

「あの宝石画。いろんな色の宝石が使われていただろ?もしかしたら、その色と対応しているのかもしれないぜ?」

 今日の晶は冴えている。

「じゃあ放課後、早速見に行こうよ。」

 この勢いで、一気に解いてしまおう!


「やっぱりだ、間違いない。」

 晶は絵を見てガッツポーズをとる。

「色と地図記号が一致、っていうことかな?」

 黄色が博物館、紫が三角点……。

「あとは、6つが3つ、だけだね。」

「それさえ分かれば、『夢の花』のありかが分かるんだな。」

 晶は時計を見ると、慌てたように「やばっ!」と言って荷物を持った。

「わりぃ、雅!オレ、もう帰らねぇといけないんだ!じゃあな!」

 そして図書室を走り去っていった晶だった。

「……もうちょい考えてから、僕も帰ろう。」

 僕は絵を眺めながら、思考を巡らした。


 相変わらず、夕日が絵を照らす。その光が反射して、宝石はますます美しく輝く。

 なんとなく、ひときわ大きいあの黄色の宝石の中をのぞいてみる。

「ん?」

 わずかだが、何かが光った気がした。もう、中には何もないはずなのに。

 僕はうつむいた少年の顔を上げる。

 あの時のように、カタンと蓋が開く。そして開いた空間に指を滑り込ませる。

 何か冷たいものが触れた。それは、セロハンテープで貼り付けられており、簡単には取れなかった。

 やっとの思いで取り出したものは()だった。それは、盗まれたものとよく似ていた。

「なんで……どういうこと……?」

 怪盗団がやったとは到底思えない。間違いなく、怪盗団の妨害を目的としている。ただ、仕掛け方がとても意地悪。さらに、仕掛け人はこの謎をすでに解いていることになっている。

 こういうことをする人を、僕は一人だけ知っている。

 いつの間に。そこで思い出したあの時の違和感。

「そっか、そういうことだったんだね。」


 絡まった糸を解いていく。

 少しずつ、確実に。




 僕は少年を元に戻す。

「かつて少年が花の種を垣間見た場所に、か。」

 絵と宝石の配置のつながり、そして、6つが3つ……。

 そういえば、あの詩には中心、という言葉が入っていたはず。

 中心といえば。

「少年が、絵の中心ってことかな?」

 そして、絵の中で対応する宝石6個を目で追ってみる。もしかして、ここに関係があるのではないかと思って。

 そこで気付いた。少年の足元はどう見ても、絵の中心には位置していない。だから、もし少年の足元が中心だというのであれば、何か別のものの中心ということになる。たとえば、ある2点をつないだ線分の中点とか。

「中点、可能性はあるな。」

 ただ、絵に直接書き込むわけにはいかない。幸い、あの本に絵の模式図はあるから、家に帰ってからそれをコピーして書き込もうと思った。


 真っ赤な夕日が沈みかけている。

 ――――晶……

 なぜ、晶の顔を思い出したかは分からない。

「そういえば、結局、季節外れの転校の理由、はっきりしないままだったなぁ。」

 そのうち、聞いてみようっと。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ