表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

季節外れの転校生

 今日から、3学期が始まる。

 中学生から卒業するまで、あと、3か月。カウントダウンが始まる。

 そんな、寒い季節のことだった。

 教室の中は、ある話題で持ちきりだった。

 何の話かって?それは、教室を見ればわかる。机が1つ、多いのだ。僕――清条 みやびの隣にぽんっと、普通の机といすが置いてあるのだ。

 みんなはどんな子が来るのかということに興味があるらしい。だけど僕はそんなことよりも、どうしてこの時期に来るのか、ということの方が、気になっていた。

 先生が入ってきた。

「はいはい。静かにしろー。ホームルーム、始めるぞー」

 この声でみんなは席につく。

「もう気付いていると思うがー、転入生がいる。」

 手招きされて1人の少年が入ってくる。

 女子たちが黄色い声を上げる。

「静かにしろー。紹介できないだろー。」

 そんなこと言ったって、静かにするわけがない。なんていったって、「超」を何個つけても足りないくらいの美形。赤茶色の髪で、優しそうで明るい笑顔。

 先生が手をたたいて、ようやく静かになる。

向井むかい しょうです。よろしくお願いします。」

 拍手の中、向井君は僕の隣に座った。

「短い間だが、みんなで仲良くしてあげてくれ。」

 こうして、朝のホームルームが終わった。

「そうそう、雅。」

「あ、はい。」

 急に呼ばれて、僕はかばんから出しかけていた教科書を落としてしまった。

「隣の席だから、晶にいろいろと教えてやってくれ。あと、しばらくは教科書とか見せてやってくれ。」

 そう言って先生は教室を出て行った。

「はい。」

 向井君が僕の落とした教科書を拾ってくれていた。

「あ、ありがとう。向井君。」

「晶でいいよ。よろしく。名前は?」

「僕は清条 雅。好きなように呼んでくれればいいよ。」

「OK.じゃあ、雅って呼ばせてもらうよ。」

 人懐っこいきれいな笑顔を見せる晶。その顔に、どこか惹かれるものがあった。



 昼休みはにぎやかだった。

 クラスメイトは当然、他のクラスからも「イケメン転入生」のうわさをきいて晶のところに来る人が多かった。

 いろいろな質問が飛び交い、晶は1つずつ丁寧に答えていた。

「前はどこに住んでいたんだ?」

「えっと……外国なんだけどさ、オーストラリアにいたんだ。父さんが出張?終わったのかな? それで日本に戻ってきたって感じ。」

「いいなぁ。帰国子女かぁ。」

「まぁね。他にも、南アフリカ共和国、ロシア、中国、フランス……あと、アメリカにもいたことがあるよ。」

「すっげぇ。」

「ってことは、英語以外もしゃべれるのか?」

「まぁ、少しね。」

「ずっと外国にいたんだろ?日本語上手だな。」

「あぁ、父さんが日本人だからさ、家では日本語を使っていたんだ。」

「じゃあ、お母さんは?」

「フランス人だよ。」

「ハーフかぁ。かっこいいなぁ……。」

 男子が群がる中、女子が割り込んでくる。

「ねぇねぇ、誕生日は?」

 その子が話題を変える。(おそらくこの子は、彼に一目ぼれしたんだろうな、と僕は推測した。)

「誕生日?……あー、もう、結構前に終わってるんだ。」

「じゃあ、星座は?」

 別の女子も話に入ってくる。僕はその子が、後ろ手に星座占いの本を持っていることを見逃さない。

「えっ……と……。ごめんね、オレ、あんまりそういうのさ、詳しくなくって……。」

「それね、誕生日が分かればすぐにわかるよ。」

「へぇ~そうなんだ。そういうの、興味なくってさ。こっちでは流行っているの?」

「みんな、自分の星座くらいは知っているよ。教えてあげるよ。何月何日生まれ?」

「え……っと……。時差とかってどうなのかな……?それによっては日付、変わっちゃうかもしれないし……。」

 僕は不思議に思った。どうして、誕生日を言うのをためらうんだろう……?言いたくないのかな?

 キーンコーンカーンコーン

 予鈴が彼を救った。

 みんなはそれぞれの席(それぞれのクラス)に戻っていった。

 僕は腑に落ちないことがあった。

 彼は親の転勤で日本に来たといった。

 だけど……この時期に転勤なんてあるのだろうか?

 不思議な少年は、隣で笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ