name【春花】日中秋也ルート①盥回し
『今日から家族だよ』
そういって親戚の伯父さん叔母さんの後ろから現れた青年の手をとる。
そこで目が覚めた私が時計をみると朝の四時だった。
今日は連休明けの月曜日で私はせっかく早く起きたのだから食事を用意してみることにした。
用意といっても作れるのはパンと目玉焼きなどシンプルなものだけど、朝は軽めでもいいだろうなあ。
朝食の仕度を済ませたら、あの人を起こしにいこう。
「秋也さーん!ご飯もうすぐできますよ!」
5時半になり、私は彼を起こしにいく。呼んでも返事がないのはいつものことだ。
「朝ですよ起きてアキさん!!」
料理を並べ終わって、また寝ている彼の部屋に入る。
掛け布団をはがすと、秋也さんはまだ眠い、と言う。
「おはよう…」
なんとか起こして食事をすませる。
同じ時間に家を出て、私は学校へ、秋也さんは会社に行く。
私は春花。わけあって遠縁の親戚の秋也さんの家に、かれこれ8年間住んでいる。
幼い頃に両親が飛行機の事故で死んだとき、親戚中をたらい回しにされた。
知らない親戚の人の家、どこに行っても生活は長く続かなかった。
とうとう行き場がなくなって、私はいらない子だったのかな。
なんて考えながら悲しくて、寂しくてたまらなかった。
このまま行く場所がなかったら、不安でたまらなかった。
そんなとき、海外から帰国してきたのが伯父夫妻と秋也さん。
他に引き取り手のなかった私はようやく居場所をてにいれた。
けれど最近は、私はここにいてはいけない気がしてならない。
秋也さんは身内の欲目があるにせよ、学歴や容姿もよく独身で安定した収入がある。
彼の両親は親戚に強引に押し付けられたようなもの。
もう伯父達が他界して一年がたつし、秋也さんが私をここに置く理由もない。
このまま私がいつまでもいたら、彼女になる人もいい気はしないだろう。
口にしなくても心の中では私を迷惑だと思っているはず。
後二ヶ月、18になったら出ていこう。
「どうしたの悩みでもあるの?」
「悩みってわけじゃないけど」
思いきってはなしてみる。
「遠い親戚なら問題ないでしょ」
びっくりするほど、冷静に、きっぱりいわれた。
友人、八多喜ミヨのいうとうり、私と秋也さんは、他人と変わらないくらいはなれてる。
「あんたはたぶん、おにいさんに恋してんのよ」
「私が秋也さんに、恋してる?」
そんなこと、ないとおもう。
私に彼氏がいないからそう勘違いしてるのかもだけど。
「だいたいあんたが、悩んでるのって、めーわくとかそーゆーんじゃないでしょ」
そうなのかな、ミヨはなにをいいたいのか、わからない。
「ほんとにさ、迷惑だっておもうなら、そんとき、家出てるっしょ」
「ただいまー」
秋也さんは夜まで仕事、だからかえってない。
「いままで、お世話に、なりました。っと」
書き置きをテーブルに乗せて、外に出てポストに鍵を入れる。
制服のまま、荷物も持たずに家を出た。
荷物は自分で買ったものじゃないから。
なにも考えずに飛び出したのはいいけど――――
冷静になってみると、こんなことしたら余計に秋也さんに迷惑かけちゃう。
一旦帰ったほうがいいよね。
「よう、オレらと遊ばね?」
ガラの悪い一人の男が、私に絡んでいる。
「無理です!!」
逃げると道を塞がれた。仲間がいたみたい。
「つめてーこというなって」
「やめてください!」
手をつかまれてしまった。
「はなせ!」
「秋也さん!?」
チンピラの手をひきはなして、走り出した。
家に戻るとしばらく沈黙が続く。私って一人じゃなにも出来ないんだと実感した。
「ごめんなさい……」
まずは謝るが、秋也さんはなにも言わない。
「なんで謝るんだ。……お前が無事でよかった」
「私また迷惑かけちゃって……」
「迷惑なんてかけられた覚えはないが?」
「え?」
「まあとにかく、これからはいなくなったりはしないでくれ」
「はい……すみませんでした」
優しい人だからきっと気をつかわせてしまったんだろうな。




