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破壊神転生ー我が道を往く異世界ライフー  作者: 九蓮 開花
序章 月面国家、破壊神殿より。
1/8

序列 邪神に転生します。


 その日、土砂降りの雨の夜に俺は死んだ。


 捨てられていた仔猫が、車に惹かれそうになっている所をたまたま見かけた俺は、所謂、

 考えるより先に体が動いた。って奴で、咄嗟に道路に飛び出して、自家用車の真ん前に突っ込んで、

 そのまま、頭をアスファルトの地面に叩き付けて此の世とおさらばする羽目になっちまった。


 徐々に霞んでいく視界の中では、自家用車の中から飛び出して来た運転手が、

 頭を抱えて、俺に何事かを呼び掛けながらやってきているが、

 ぼんやりとしている頭では正直、返す言葉も無い。

 微妙に聞き取れた言葉の端から推察すると、どうやら救急車を呼んでくれるらしい。

 どうやらこのまま、ひき逃げにして終りにするつもりはないらしい。

 何というか、今時珍しい、善意の人だなあ。

 つーか、今回の件は色々と単なる不幸な事故だっただけだから、

 そんなに大したことになるとは思えないけどね。

 せめて口がきけたら、目の前の人にそう言ってやりたいんだけど、どうやらそれも叶わないらしい。

 この先の事を考えると、何だかこの人を俺が不幸にしたみたいでいやだなあ。

 何だかいい人そうだから、庇えるなら庇いたいんだけども。


 あん?仔猫はどうなったかって?ああ、そいつならとっととどっかに言っちまったよ。

 流石は気まぐれ我儘生物。命の恩人でも、見知らぬ他人にゃ、見向きもしねえ。


 ああ、あかん。こうしている間にも意識が途切れていく。

 どうやらここいらが、俺の今世の最後らしい。

 大して辛くも苦しくも無い代わりに、そんなに楽しい人生じゃなかったから、

 此処でこの世とおさらばこいても、多少の未練はあるけれど、そんなに後悔はない。

 まあでもせめて、童貞くらいは卒業したかったな。


 そんな思いとともに、俺の意識はゆっくりとフェードアウトしていった。



 ☆



 気が付くと、そこは真っ白な空間だった。

 どうやら此処が死後の世界か。思ったよりも殺風景だな。

 そうぼんやりと思っていると、


「いいえ。そうではありません。いえ。ある意味ではそうかもしれませんけど」


 どこからともなく、落ち着いた雰囲気を持つ涼やかな女性の声が聞こえて、

 俺は、身じろぎをした。


 いやいや、どっちやねん。はっきりしいや。こっちは命の瀬戸際やねんど。

 そう突っ込みたくなるような、曖昧な科白に、俺は苦笑しながらそう思っていると、

 不意に、一つの人魂のような光の塊が俺の前に現れた。


「私の名前は、エイシア。貴方の言葉で近い物を探せば、

 創造主、とか、神、とか言う存在になるのでしょう」


 そう言って、俺の前に現れた光の玉は瞬くと、やがてゆっくりと人の形へと姿を変えていき、

 一人の女性の姿になって俺の眼の前に突っ立った。

 そこには、少し着崩した修道服に身を包んだ一人の妙齢の美女がおり、

 俺は思わず目を見開いてその女性の姿を見た。


 少し垂れ目がちで穏やかな目元といい、つつましやかな胸と言い、小柄な体躯と言い、一目見れば、

 一瞬、少女とも思える姿だが、その顔つきから匂い立つ色気が、そんな印象を払拭させてしまう。

 その全てが俺のドストライクゾーンど真ん中である。

 俺は、ほえ~。と、間抜けな声と表情をして目の前の美女に魅入っていると、自らを神と名乗った

 その美女は、ふふ。と、小さく笑みを浮かべて、俺に言う。

 

「そんなに見ないでください。別に容姿を見せつけるために現れたわけでもないのに、

 くすぐったくってなってしまいます」


「いやいや。こんな別嬪さんが目の前に現れて無反応でいられるほど、俺は人間は止めてないですよ。

 というか、その服装って大丈夫なんですか?宗教的に、って言うのか、性的にって言うのか…………。

 せめて、恰好位はどうにかなりません?胸元とか、首筋とか、太ももとか、肌色成分が少し強すぎて、

 目のやり場に困るんですけど?」


 俺のその言葉を聞いた自称女神様は、口元に人差指を持って行って、

 黙って何事かを思案するようにすると、ややあって、口を開いた。


「少し、誤解があるようですが、この服装は私が好んで来ている訳では無く、あなたが最も

 警戒しない服装を選んで着てみただけですので、どちらかというとこの恰好は貴方の趣味嗜好

 と言う事になりますね。それに、あなたは私を美女と形容しましたが、

 元々、私には性別など存在しませんよ?

 ただ、習慣的に男性の前では女性。女性の前では男性の姿になって表れようにしているだけです。

 その方が私の話を聞いてくれるものですからね。まあ、必ずしもそうとは言えませんけどね。

 先ほど見ましたでしょう?私には本来、正体と言えるような姿は持っていません。

 強いて言えば、先ほどの光の玉が私の正体。と言えるかもしれませんが、あれだって、

 別に、知的生命体が私を認識できるようにするための仮初のものなのですよ?」


 女神さまの言葉を聞き、ゆっくりとかみ砕いた俺は、深く頷くと、一言に纏めて口に出す。

         

「成程、つまり貴方は俺をむっつりスケベだというんですね?」


 まあ、事実なのだけだどね。

 人の、というか好みタイプの女性の口から言われると、ちょっと傷つく。


「平たく言えば、そうなりますね」


 そして、目の前の神様は、そんな俺に対して、くすくすと笑いながら、

 あっさりとどめを刺してくれる。


「まあ、いいや。それで?女神様はわざわざ瀕死の俺の前に現れて、一体何の用なのでしょうか?

 というか、さっきの言葉の意味は何なんですか?

 俺って結局、死んでるんですか?生きているんですか?」


 俺は、そんな心底楽しんで俺を弄って来る神様に大して、少し不貞腐れた様な態度で質問すると、

 神様は、今まで浮かべていた笑みを不意に消して、真顔に戻り、一歩、俺との距離を詰めて来た。


「……そうですね。その話は今から色々とさせていただきたいのですが、その前にまず、一つ貴方にお願いしたいことがあるのです」


 そう言うと、神様は、いきなり俺の目の前に、その整った顔を近づけると、俺の手を取り、

 まるで縋り付く様な瞳で俺の眼を見た。

 そして言う。あまりにも突飛すぎるそのお願いを。








「貴方に邪神として転生してもらい、勇者に倒されて欲しいのです」








「―--------はい?」


 その言葉に、俺の眼が点になったことは言うまでもない。








 

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