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おまえも泣いてたな、って

 夜になって、昼間の出来事はちょっとしたアクシデントとして話題になっていた。

 花火の準備をしながら、大丈夫? と声をかけてくれる子たちもいて、そのほとんどが荻原を非難するものだったことに慌てる。

 「や、あたしも向こう見ずに飛び込んだのが悪かったし」

 「いーや、あれは荻原が悪い。頭ごなしに女の子を怒鳴るなんて、真琴が怒るのも無理ないよ」

 その一方で、男子部のメンバーは苦笑してフォローに回っていたのがおかしかった。

 「荻原の気持ちもわからんでもないからなぁ」

 「そうそう」

 「? やっぱりあーゆーときって、男の子が助けたいもの?」

 あんまりにも荻原を怒らないでやってほしいと言ってくるヤツが多かったので、聞き返すと、みんな困ったように笑ってごまかされてしまった。

 「うーん。時と場合によるけど、今回の場合はなー」

 「うん。いろいろと荻原にも考えることがあっただろうし」


 そんな荻原と顔を合わせたのは、花火も中盤に差し掛かった頃だった。


 「渡部」

 「…………荻原?」

 みんなの輪から離れて、ベンチで休んでいると後ろから声をかけられた。

 その表情がちょっと落ち込んでるように見えて、首を傾げる。

 (あ、まさか失恋したとかじゃないよね?)

 慌てて美波ちゃんを探すと、反対側で他の友達達とはしゃいでる。

 (良かった。違うみたい)

 それを見て安心する。なんだかんだ言って美波ちゃんのことは小学校の頃から

知ってるのだ。少なくとも、誰かを振って傷つけた後に、あんなに無邪気に笑え

る子じゃないことくらいわかる。

 「何? あ、昼間のことならもういいから」

 「……そういうわけにはいかないだろ」

 (本当に律儀だよなぁ)

 いつもそうだ。

 かなりひどく傷つけられても、こうやって謝って来られるから、許してしまう。

 しかも、いいからと言っても絶対に自分からちゃんと謝る。ただの自己満足な

のかもしれないけれど、そういううやむやにしないところも好きなのだ。

 (自分が謝られるときには、お互い様だから、とか言って濁すくせに)

 「今日、悪かった」

 しっかりと謝罪を口にした荻原に小さく首を振る。

 「いいよ。心配させてごめんね」

 「後、もうひとつ。あの時も、悪かった」

 「あの時?」

 「余計なことしてくれた、なんて言って」

 (いつの話してんのよ?)

 突然飛び出した過去の謝罪に、驚くよりも呆れてしまう。

 「今頃? っていうか、あたしちゃんのその件についても謝ってもらった記憶

あるんだけど」

 「や、そうじゃなくて。……今日さ、あの子すごい勢いで泣いただろ?」

 その台詞に、浜辺で大声で泣いた女の子のことを思い出す。

 「うん。心配だったんだろうね。ほっとしたんじゃない?」

 あの豪快な泣き声には苦笑してしまったけれど。でも、それだけ心配していた

ことも伝わってくる声だった。

 「ん。そうだと思う。で、思い出してた」

 「? 何を?」

 「おまえも泣いてたな、って」

 「は?」

 「あの時、渡部も泣いてたなって」

 あの時、と言われて、思い当たるのは一つしかない。

 どう答えたものかと沈黙して、あたしはそれを茶化すために口を開いた。

 「海水が目にしみて痛かったのよね。確かゴーグル着けてなかったし」

 「着けることも忘れて助けてくれたんだ?」

 「そりゃ、知り合いが溺れてたからねぇ。大人呼ぶよりあたしが行った方が早い

と思ったら、飛び込んでたって感じ?」

 あくまで軽く返すと睨まれた。

 「溺れた俺が言うことじゃないけど、海に人助けに飛び込むなんて、逆に溺れたらどうするんだよ」

 「結果的にそうならなかったんだからいいじゃない。……何? どうしたの?」

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