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悪癖シリーズ

悪癖-Starting at the end-

作者: 沢木 えりか

『事情はわからないけれど、きっと大変だったんでしょう。あなたが私から離れることのないように願いを込めたの。よかったら受け取って。永遠の不変という意味よ。いい意味でしょう。ふふ、気に入ってくれるといいな。』

 肌の白い少女はそう言って微笑んでした。自分を刺した男を何故手元に置きたがるのだろう。それがわからなかったけれど、今ならわかる。あれは遥鳴だったからだ。彼女だからこそそんな茶番が許された。

 まあ僕の場合は、一般的な人間が持つそれとは異質な悪い癖があるので、自分に刃が向けられたとしたら喜んで相手をするのだけれど。物騒なことは嫌いだし、正義感は強いほうだ。だけど、それと悪い癖というのは関係がないらしい。僕の悪い癖――右手が血を求めて疼き、渇くような感覚になる発作のことだ――は、8年前のあの日、遥鳴に拾われたときからずっと僕を支配し続けている。いつだって考えているのは渇きを癒すことだし、ナイフがないと発狂してしまいそうだ。それが僕、樋野常磐という人間である。こんな悪癖がある以上人間であるかどうかはもはやわからないが。


 カップは内側が白く口の広いものを用意。紅茶に使用するお湯は一度沸騰させてから冷まし、90度前後になるように。カップはあらかじめお湯で温めておくこと。ポットにティースプーン1杯分の茶葉を入れたら、高さをつけて勢いよくお湯を注ぎ込み、すぐに蓋をして3~4分蒸らす。冷めないようにティーコゼーを被せることを忘れない。カップにはスプーン1杯の砂糖と3分の2程度ミルクをいれ、準備。ポットの中を軽くかき混ぜて、ティーストレーナーで茶葉を濾しながら淹れる。

「本日の茶葉はイングリッシュブレイクファースト。レモンピールのスコーンとご一緒にお召し上がりください」

「スコーン大好き。ありがとう、常磐」

 遥鳴お嬢様の、白く細い指がカップに触れる前にそっと静止する。右手が彼女に触れたことで、一瞬だけ乾きが癒される。もちろん両手につけている白い手袋越しに。出来ればずっと触れていたくらいだが使用人たる僕がそのような差し出がましいことなどできない。いつもどおり、何事もなかったかのように無表情で口元だけ動かす。

「まだカップが熱いので、お気を付けて」

 でないとこの主人の肌は白すぎて、すぐに火傷してしまいそうだ。火傷なんてした暁には、きっと僕の右手の疼きが増してしまって、制御するのが難しくなる……と、想像するだけでも右手が渇くのでそっと腰のホルダーに収まるナイフに触れる。ナイフは少し熱を帯び、熱い。これは今年の誕生日に遥鳴が腰につけられるホルダーと一緒にプレゼントしてくれたものだ。手馴染みも良く切れ味も申し分ないので気に入っている。

「もう。常磐ったら私を貧弱もの扱いするのはよして。これでもいくつもの修羅場を超えてきたのよ?」

 上流階級の令嬢と言うことに加え、見た目もか弱そうな遥鳴はとにかく命を狙われやすい。その度に、執事である僕が救ってきた。

「全て私の手柄であり、お嬢様は気絶しておいでになられていました」

「……今日はなんか、意地悪ね。機嫌が悪いの?」

 違う、動揺しているのだ。この卑しい右手がうっかり彼女に触れてしまったから。けれど、それを微塵も見せないように。これでも幼い頃から兄妹のように育ってきた僕たちだ。遥鳴は立場がかわって主従の関係となった今も兄のように慕ってくれている。彼女は僕の悪癖を理解してくれてはいるが、やはり見せたくはない。他でもない僕自身がこの癖を嫌っているためだ。

「あちっ」

 と、油断した隙に遥鳴は紅茶に口をつけてしまったらしい。指を火傷する心配はいらなかったようだが、もう一つ大事なことを忘れていた。彼女は猫舌なのだ。

「ああ! 全く油断も隙もない……見せなさい、舌を火傷したのですね!?」

 幼い頃のことを思い出していたせいだろうか。気がつくと普段なら絶対に取らない行動をしていた。遥鳴の、血の色のような赤い口に触れ、開き、中を覗き込む。触れている頬に赤みが指し、熱がこもったことにより我に返った。漆黒のパールのような瞳と視線が合うと、流石の遥鳴も少し恥ずかしそうにしている。ああ、しまった。僕としたことが。しかし同時に、皮膚に触れるよりも粘膜に触れる方が格段に渇きが収まると感じる。いや、そうではなく早く遥鳴を開放してやらねば。

「……大変ご無礼を。申し訳ありません」

「……いいのよ、ちょっとビックリしただけ」

 遥鳴の、黒くつるんとした頭皮が見える。耳が赤い。おそらく恥ずかしさを隠すため下を向いているのだ。ああ、無礼をしてしまった。あれから日も経つし、最近は自傷行為をいていなかったら発作が激しくなっているのかもしれない。

 誤って彼女を傷つけてしまったら。その恐怖は僕の中にいつもある。僕の悪い癖についてもう少し詳しく話そう。この渇きは、常に僕を支配し続けるものだが大前提として遥鳴の血に反応しているとう特徴がある。僕の右手は成瀬遥鳴という少女の血を常に求めているのだ。したがって僕の手の渇きを最も効果的に沈められるのは遥鳴の血液に触れることだ。

 しかし、勘違いしないで欲しい。僕は暴力が大嫌いだし、人が傷つくのは見るのも嫌だ。ましてや僕にとって遥鳴は命の恩人だ。傷つけるどころか、この卑しい身で彼女に触れることすら躊躇われる程に彼女を大切に思っている。だけどいくら大切に思っていても、発作を制御できなくなって彼女を傷つけてしまうかもしれない。僕はそれが怖くて仕方がない。今日は右手がよく渇くので、今からは、遥鳴と距離を置く必要があるようだ。これまでだって、そうやってきた。結局どれも遥鳴を傷つけてしまうことで発作が収まったのだけれど。

「では、これで。私はこれより旦那様の傍へ参りますので、片付けの際は花を呼びつけてください」

 ああ、渇く。血が欲しい。右手をホルダーに這わせる。熱を帯びたナイフが肉を切りたいと叫んでいる。遥鳴が何か言っているがそれも耳に入らないくらいに集中していないと、自我を保てないくらいには発作が強くなっていた。いそいでキッチンへ向かう。肉――なんでもいいから肉を切らなくては。

“ああそうか。ここにあるじゃないか。すぐそこに。これなら誰も傷つけないで済むじゃないか。”

 自分の左手首から血が流れる感覚は、何回目だろう。それは暖かくて、少し気持ちがいいから眠くなる。足に力が入らない。視界もぼやけてきた。やばい、倒れる。揺らぐ視界の中、見慣れた白い肌と黒い髪のコントラストが何かを叫んでいる。そうか、まだ遥鳴の部屋の近くだったな。もっと離れておけば良かった。そんなことを考えているうちに眠気が増して。


暗転。


「あほか貴様ー!」

「お嬢様に置かれましては、そのような下品な物言いはお控えになってください」

 白い天井に、ベットには可愛らしいカーテンが付いている。おそらく遥鳴のベットだろう。左手が痛むがどうやら包帯が巻いてあるので手当された跡らしい。右手の渇きは幾分マシになっている。

「もう、ちゃんとこっちを見なさい。私の目を見て」

 頬に両手が触れグイっと顔を向けられる。ああ、いけない。触れては、また渇きが……。そう思うものの、体がうまく動かない。その内に触れられていることによる渇きの癒えに、拒否などできなくなってしまう。

「発作が出ていたのね。かわいそうに。気づけなくてごめんなさい。最近は落ち着いていたように思っていたから」

 その表情は、侮蔑など微塵も含んでおらず、三日月のような眉の根を寄せ、赤い唇を固く結んでいる。遥鳴の口腔内、柔らかかったな。意識がか朦朧としていたせいか、遥鳴の唇を見ていたからか気がつくと僕は口を開いていた。

「遥鳴、白いから火傷しそうだなって。それで手に触ってしまったら、右手が反応して。そしたら遥鳴、今度は猫舌だから火傷して。心配になって唇に触れてしまったから。柔らかかった……粘膜に触れる方が渇きが収まるみたいだ」

「そう。火傷なんてしていないわ。ちょっと熱かっただけ」

 気がつくと遥鳴は僕の体に跨り、顔を近づけてきた。口の中を見せるように。普段なら絶対に許さない行為のはずが、動けないのと思考が上手く働かないので受け入れてしまう。ブラックパールの瞳と目が合う。

「火傷していないか、確かめなさい。粘膜に触れると発作が収まると言うのなら、私の唇をいくらでも差し出すわ」

 瞬間、我に返る。何てことをしているんだ僕は。

「お嬢様、なりません」

 そっと顔を遠ざけるように遥鳴の肩を押す。だけど、もう少しだけこの状況に甘えてもいいだろう。そのままゆっくりと抱きしめる。

「だけどこのくらい許されるよな?」

「……」

 だまって抱擁を受け入れる遥鳴の耳が赤くなっていたことには気づかないふりをした。


 ところ変わって学園のカフェテリア。遥鳴の通うマリアンヌ学園は、高等部と大学がカフェテリアで繋がっている。僕自身はマリアンヌ学園大学の医学生でもある。今日の講義は午後から1コマのみ。

「それで、今度はどういう人物ですか」

「この子です」

 そう言って生徒の写真を見せる男は他でもない、マリアンヌ学園高等部の教師だ。彼もまた高校教師でありながら、僕と同じように悪癖を持っている。いや、僕と同列にしたらいけないな。彼の方が重症というか、年を重ねている分発作が激しい。僕と同じような年齢のころは自傷行為もしていたらしいが今ではその程度では癖――彼の場合、自分でも普段は癖があることすら忘れそうになるくらいその存在は希薄だが、時折どうしようもなく人の血を浴びたくなるのだという――が収まらないのだという。彼とは遥鳴を守ると言う目的の上で協力関係にあるが、こうなるまでが大変だった。

 彼の名は的場。下の名前は名乗らないから不明だ。聖マリアンヌ学園の普通科の教師で、担当科目は数学。見た目は、フワフワした栗毛に優しげな目元、人懐っこい笑顔が特徴。人当たりもよく物腰柔らか。とても悪癖があるようには思えない。

 そんな的場と出会ったのは今年の春、遥鳴が倒れて学校まで迎えに行った時だ。広い学園内、案内役をしてくれたのが的場だった。あの時も右手が渇いて大変だったのだが、あれはこの男の確信犯だったのではないかと思えてならない。とは言え、真相はわからないのだけど。

「川島灯里という生徒です。数日前に委員会活動で成瀬さんと接触しています。どうやらもともと特Aコースの生徒に強い嫉妬心があるようで、特に成瀬さんには悪意を持っていますね」

 コーヒーを啜りながら、溜め息。全くもって何故このように遥鳴が恨まれたり嫉妬されたりするのか。特別、性格や振る舞いに問題があるわけではない。だが、人の嫉妬や悪意を集めてしまう。それが成瀬遥鳴という少女なのだ。

 僕が的場に頼んでいることは二つ。一つは遥鳴にとって障害となるような(例えば、虐めたり陰口を言ったり危害を加えたりだ)生徒の発見と報告、そしてもう一つはその生徒の処分。処分というのは広い意味(・・・・・)を持つ。それは突然の停学から海の底、豚の餌まで様々だ。幸い、豚の餌になった生徒はまだいないけれど。

「何が問題ですか」

「彼女は成瀬さんの殺害計画を立てています」

「なっ……!?」

 事の大きさに驚く。どうして、彼女が何をしたというのだ。遥鳴はただ、普通に生活していただけなのに。

「直接の原因は成瀬さんではないようです。どうも川島さんは死に急いでいる感じがします。僕が止められればと思っています」

 的場の表情は教師としてのそれに見えた。どんなに悪癖があろうと、彼もまたそう、性格破綻者ではない。普通の人間と同じような、正義感や責任感を持っているのだ。彼は、教師として生徒である川島灯里を何とかしたいと思っているのだろう。

「いつも助かります。よろしくお願いします」


 僕の右手が遥鳴の危機を感知したのは、その日の夕方、食事の仕度をしている頃だった。帰りが遅いので、予想はしていたけれど。的場は止めきれなかったのだろうか。それとも――。携帯を開くと午後18時。この季節だと十分に暗い時間だ。危ないな。すぐに的場に連絡する。

『俺です。遥鳴お嬢様が誘拐されました』

『ええ!? またですか。……場所に心当たりがあります。探してみますね』

 的場はわざとらしい反応をすると(これは僕との協力関係がバレないために態とこういう反応をしているらしい。逆に怪しい気もするが、彼の上面のキャラクターを考えるとまあ、こっちの方が都合が良いのかもしれない)すぐに電話を切った。僕は、右手を頼りに遥鳴の居場所へ車を走らせる。右手は、遥鳴に危機が迫ると警報のように渇き出す。それは遥鳴との距離が近づくほどに強まるので、ちょうど良い探索機になるのだ。

 右手の渇きの強い方向に進むとそこは古い漁港だった。どうやら今は使われていない倉庫の中に、遥鳴はいるらしい。携帯にメールが一通、的場からだ。


成瀬さんの居場所が特定できました。S漁港の倉庫の中です。現在様子を伺っていますが、助太刀を求める際にはコールします。


ビンゴ。非常に気に食わないが、右手はいつも遥鳴の窮地を教えてくれる。それが、外れたことはまだない。それほどに僕の右手は彼女に執着する。それが僕の悪癖、それが僕の存在意義。遥鳴に傅き、遥鳴を守る。それだけが。

 倉庫の窓から中の様子を伺う。よかった、この窓は薄いガラス製なのでかんたんに蹴破ることができそうだ。的場が遥鳴を誘拐したであろう女生徒を説得しようとしている。教師である彼は、決められた場所以外では暴力行為を行わない。見つかるとまずいからだ。(まあ、彼は本音では彼女を手にかけたいのだろうから、本気で説得しているのかはわからないが……)案の定、女生徒は逆上して襲いかかろうとした。それが確認された瞬間、足で窓を蹴破る。こういう時のために、リーガルのつま先には重りを入れている。痛みはない。転がるようにして遥鳴たちの前へ。大丈夫、相手は素人だ。感情に任せて振られるナイフに、僕は負けない。成瀬家の執事兼、令嬢のボディーガードとして身につけた技術はこんなものには負けない。

 突き出してきたナイフを避けると同時に腕を掴み、そのまま一捻り。相手が動けない状態になってから確実に意識を飛ばすため鳩尾に一発お見舞いする。なんて簡単な作業。念のためにも足にナイフを入れておく。ああ、この瞬間が癒しだ。血が右手に染み渡る。このまま喉元を切り裂いたら、どうなるかな。そこまで考えて、やめた。どうせ一時的なしのぎにしかならない。僕の乾きを癒せるのは、遥鳴の身体だけなのだから。


『しかし、今回は助かりました。緋野くんが来なかったら僕は彼女を始末しなくてはならなかった』

『僕には先生が何を考えているのか全く分かりかねます』

『やだなぁ、緋野くんと僕の仲じゃないですか』

 携帯越しの妙にわざとらしい抑揚のある声。この男はどこまで本気かわからない。遥鳴を襲った女子生徒は、結果的に的場が引き取って更生させる運びとなった。彼がそんなことを言い出すとは予想外だったので、驚きはしたが僕とて遥鳴と同じ年の女生徒が処分される――処分という名の殺害であるが――自体にならずに済んで少しほっとしている。繰り返すようだが僕は平和主義で、毀傷衝動はあるけれど殺人がしたいわけではないからだ。的場は殺戮衝動を優先する男であるから、絶対に喜んで食いつくだろうと思っていたのに。……つくづく読めない男だ。やはりあの時敵に回さなくてよかった。そう思いながら電話を切る。

 後部座席で気を失っていた遥鳴が目を覚ましたようだ。バックミラー越しに目が合う。僕は、いつもの従者言葉だ。

「おはようございます、お嬢様。お嬢様におかれましては、港付近の倉庫にてお休みなさっていたため、恐れながら――」

「遥鳴って呼んで」

「しかし、お嬢様」

「敬語も嫌よ」

「私は業務中でございます」

 ぴしゃりと叱責すると、拗ねてしまったのか大人しくなる。

 遥鳴は優しい。そして少し変わり者だ。だから、僕にこんな風に構ってくれるのも、彼女の気まぐれなのだ。そもそも、僕なんかが気安くお近づきになどなれないのだ。ましてや、このような危険な衝動を持っていては。


 僕はあの日旦那様に言われたことを思い出す。

「緋野常磐と言ったか。あれから名をもらったようだな。あれは気まぐれだからな。お前は運がいい」

 僕が成瀬家に拾われて数日。正式に遥鳴の世話役として雇われることが決まった日のことだ。成瀬家の当主、つまり遥鳴の父親に当たる人物に挨拶に行った。

「はる……お嬢様には感謝しております、そして、旦那様にも」

「勘違いするな。俺はお前など雇うつもりはない。あれが雇いたいというから置いてやるだけだ。お前、あれを刺したらしいな。気が立っていたとは言え、常人の振る舞いじゃあない。まあいい……あれが飽きるまではここに置いてやろう」


 それから約10年。未だ、遥鳴の気まぐれは続いているが、それもいつまで続くのかわからない。それに、遥鳴だって結婚するだろう。そうなれば、今のような関係ではいられないだろう。それだけではない。僕の方もいつまでこの毀傷衝動を抑えられるのかもわからない。

 赤信号で停車した、その時だった。僕の叱責によって大人しくしょぼくれていたはずの影が、重なる。

「お嬢様、あぶな――!!!」

 それは暖かな何かが、ほんの一瞬触れたか触れないかわからない程度に唇に重なったのだった。その感触だけでは、触れたのか触れなかったのかはわからなかっただろう。だが、次の瞬間凄まじいエネルギーの塊が流れ込むのを感じたので、キスをされたのだとわかった。

 渇きが、潤う。夏の暑い日に飲む麦茶のようだ。ああ、もっともっと欲しい。それを飲み干してしまいたい。そんな衝動が駆け抜ける。僕は、辛うじて力の入る両手で、遥鳴の肩を強く押し(しかし、遥鳴が怪我をしないよう、力の方向にはできるだけ配慮して)のける。

「ダメだよ。俺は、君を傷付けたくない」

 それは、拒絶を表現するには十分な言葉だった。そのあとには、夜の闇と静寂だけが残っていた。








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― 新着の感想 ―
[一言] 二人が織りなす微妙な距離感、奇妙だけど甘い関係性……。 どういった形の結末を迎えるのか、とても楽しみです。 >気がつくと遥鳴は僕の体に跨り、~~ ここからのシーン、目に浮かぶようでどきど…
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