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表紙
私立白鷺学園は大正2年から成る伝統あるお嬢様学校である。
とはいえ、創立当時にあった財力・権力から成る狭き門は大きく放たれ、
平成の現在においては志を高く持つ少女達を広く迎え入れている。
都心より少し離れた緑豊かなこの学園は、その広大な敷地を生徒たちのために惜しみなく提供する。
校外の存在を極限まで絶ったかのようなそこは、まさに楽園。
濃紺の制服で身を包めば、少女たちの背筋が伸びる。
一つに繋がった制服のウエストには、細い飾りベルト。
さらりと膝下まで流れるようなスカートには皺一つ、埃一つあってはならない。
首元には制服と同じ色のタイ。タイの裾には大きく一本の白い線。裏には白銀の筆記体で持ち主の名前が刺繍されている。
リボンタイかネクタイかを選ぶのが、乙女たちにとって学園生活を始める儀式だ。
一、清く正しく美しい人であること。
一、志を高く持ち、自身の向上を惜しまぬこと。
一、学園内ではみな姉妹である。お互いに慈しみ助け合うこと。
三ヶ条を胸に、少女達は今日もまた、乙女の楽園へと足を運ぶのである。