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第一幕:侵食する日常 第1章:邂逅

第1章:邂逅

深夜二時。執筆に行き詰まった久瀬遥希くぜ はるきは、ひどく乾燥した喉を潤すために近所のコンビニへと足を向けた。街灯がチカチカと不規則に瞬き、湿ったアスファルトに自分の影を長く伸ばしている。

自動ドアが開く。冷房の風と共に、青白い蛍光灯の光が網膜を刺した。久瀬は、無意識にいつものドリンク棚へ手を伸ばす。その時、隣から伸びてきた手が、彼が掴もうとした一本の缶に指をかけた。

「あ……」

謝ろうとして顔を上げた久瀬の言葉が、喉の奥で氷結した。

隣に立っていたのは、自分だった。

見間違いではない。三日間の徹夜で土気色になった肌も、剃り忘れた顎の無精髭も、袖口が少しほつれた紺色のパーカーも、すべてが鏡を突きつけられたように一致している。唯一違うのは、その眼光だ。

久瀬の瞳が疲弊と困惑に濁っているのに対し、もう一人の自分は、獲物を見定めた獣のような鋭い光を宿していた。

男は久瀬の目を見つめると、口角を不自然なほど吊り上げた。不敵な笑み。それは、久瀬が心の中で何度も「こうなれたら」と願っていた、自信に満ち溢れた者の表情だった。男は商品を棚に戻し、一言も発さずに店を去った。久瀬の指先には、冷えたアルミ缶の感触と、心臓の嫌な鼓動だけが残った。

 

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