表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『始原の帰還者、札幌でひっそりお弁当屋を始めます〜深層の魔物で作った『魔素抜き弁当』が美味しすぎると探索者たちの間で話題な件〜』  作者:
【二食目】「はくりゅうデリバリー、本日のメニューはオーク肉のエスカロップ弁当です」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/30

エピソード19 深夜の緊急SOS「お弁当を届けて」。A級ダンジョンの発生を、極上の食材チャンスだと喜んで出動する【深夜に仕入れをするシェフ】

 ……クラッシュ・ボアのロース肉が三十キロと、コカトリスの卵が数十個ほど。それに、マイコニドのスライスが十キロ……あとは……。


 僕はぼんやりと亜空間収納(ストレージ)の中にある食材を眺めながら、明日の弁当の仕込みについて考えていた。

 在庫の食材はそれほど多くはない。先日狩ったスパイダーウルフの肉が百キロほど残っているが、その他には……。


「ナッツさん、マグロのステーキはどう?」

 魚のヒレ肉に夢中でかぶりつく白い猫を見ながら、僕は笑いかけた。

『美味いぞ……このマグロというヤツは絶品だ。もっとくれ』

「あ、ごめん。実はそれマグロじゃなくて、この間ダンジョンで獲ってきたクリスタル・サーモンの肉なんだ」

『どっちだっていい。美味いものに変わりはない』

「あはは、いつも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があるよ」


 夕食をすませた後、僕はこうして食材の在庫を調べていた。

 亜空間収納(ストレージ)は、時間が停止する巨大な長期保存用冷蔵庫のようなものだ。ただ、便利な半面、中に入っているアイテムの在庫残量までは自動で教えてくれない。だからこうして、定期的に食材の点検をするのも僕の毎日の日課になっていた。


「そろそろダンジョンへ仕入れに行ってこない……とね」

『行くのか』

「今日は行かないよ。もう遅いしね」

 僕が夕飯の後片付けをしていると、ナッツがてこてこと足元へやってくる。


『ミナト……始原のダンジョンのこと、気にならないか?』

 念話ではなく、魔力を声に変換させた音のある言葉で、ナッツが静かに問いかけてきた。

「さぁ、ね。……僕は今、この生活が好きだよ」

 ……気にならないわけではない。

(でも……)

『私も、今のこの生活が気に入っているぞ』

 僕の心を見透かしたように、ナッツも同じ気持ちを伝えてくれる。

「だったら、それだけで十分だよ。今はね」


 シャー、とスポンジを滑らせ、カチッ、とお皿を重ね、キュッ、と蛇口をひねる。

 静かな日常の、ごくありふれた音の響きが心地良い。のんきに食器を片付けて、明日に不安を抱くことのない穏やかな時間……。


 カエデが言っていたように、僕たちの目の届かない世界では、色々な組織や思惑が複雑に絡み合いながら動いているのだろう。

 カエデが求めている魔素の探求や世界の真実も、彼女にしか見えていない領域の戦いなのかもしれない。だから僕は、彼女の背中を素直に応援したいと思っている。

 たとえそれが、触れることの許されない『開かれざる箱』だったとしても……。


――ビビビッ、ビビビッ……。


静寂なキッチンに、無機質な電子音が低く響き渡った。

 振り返ると、後ろのダイニングテーブルに置かれたスマートフォンが震え、画面を白く発光させている。

こんな夜更けに連絡をしてくる相手は、一人しかいない。


「……はい、ミナトです」

 電話を取ると、カエデの切迫した声が飛び込んできた。

『夜遅くにすまないわね』

「どうかしたの?」

『ミナト。急で悪いんだけど……明日、研究所(ラボ)まで【お弁当】を届けてもらえないかしら?』


 ……何かがあった。

 即応探索者ラピッド・シーカーである僕に対する、カエデからの『弁当の注文』。それはすなわち、ダンジョンの調査と『食材(魔物)の調達依頼』を意味する。


「……弁当?」

『ええ。先ほど、すすきの付近にランダムダンジョンが突発的に出現したわ。内部の規模は未知数だけど……入口の大きさから推測される危険度は、A級相当よ』


 通話を終えると、僕は急いで出動の準備を始めた。

 カエデからの電話は事実上、ダンジョンの早期閉鎖と、内部にうごめく魔物の討伐依頼だ。


「ナッツさん! すぐに出発するよ」

『わかった』


 ちょうど、そろそろ新鮮な食材がほしいと考えていたところだった。

 出現したのがランダムダンジョンというのは想定外の誤算だが、未踏破のA級領域なら、極上の良い食材まものに出会えることは間違いないだろう。


 ただ一つ気がかりなのは、今現在、現地にARCANA(アルカナ)の討伐隊が十分に到着していないことだ。

 週末の夜のすすきの。多くの人でごった返す札幌最大の繁華街で、もしA級相当の魔物たちが地上に解き放たれでもしたら、目も当てられない大惨事になる。


「行くよ」


 僕は上着を羽織ると、ナッツと共に愛車のキッチンカー『ハクリュウ』に乗り込み、深夜の雨の街――すすきののダンジョンへ向けてアクセルを踏み込んだ。

 もし本作を読んで「ちょっとお腹が空いたな」「湊の料理を食べてみたいな」と思っていただけましたら、

 画面下の【★★★】を押して応援していただけると、作者のモチベーションという名のスパイスになります!


 ブックマーク登録も、ぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ