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黒い仮面のジョーカー

鏡の星矢が実習で脱落した翌日、


無職の塾は見た目は普段と変わらなかった。




鐘は定時に鳴り、


生徒たちは教室に向かい、


教官たちは何事もなかったという顔で講義を始めた。




けれど、


空気は明らかに変わった。




「ねえ、聞いた?"




廊下の片隅で誰かが低い声で話した。




「鏡、本当に実習に出ましたか?」




「うん。公式記録には『システム過負荷』と。」




「笑えない。


そこまで出るやつじゃないだろう」




ささやきは謙遜だった。


まるで名前を呼んで間違えただけでも


何か飛び出しそう。




「じゃあ、いったい誰が--」




その質問の最後は


誰も口外しなかった。




長官、


視線が動いた。




窓際の一番後ろの席。


いつも一人座っている少年。




ほたる。




彼は教科書をめくっていた。


常常と変わらぬ姿。




しかし、誰かが言った。




「あそこも」




「ん?」




「鏡を板から下ろしたのが…···


能力のないあの子も。 "




「とんでもない」




「だからもっと怖い」




その言葉に、


近くにいた一人の生徒が声を落とした。




「直接戦ったわけではない」




「じゃあ?」




「ただ--」


見て、避けて、


誘導して···終わらせたようだ」




唾を飲み込む音が聞こえた。




「そっちの方がおかしいんじゃないか」




ランチタイム。




レストランの隅のテーブルです。




上級生数人が集まっていた。


そのうちの1人が携帯端末を置きながら言った。




「鏡誠也の実習ログ、見たよ」




「見れた?」




「削除される直前のもの」




暫し沈黙。




「能力衝突記録なし。


直接攻撃なし。


ところが敗北処理」




「じゃあ、いったい何だ」




上級生はゆっくりと話した。




「相手がけんかしなかった」




「…何?」




「場を変えたようだ」




他の生徒たちが鼻先で笑った。




「ゲームマスターのふりだったの?」




「いいえ」




彼は首を横に振った。




「ジョーカー」




その単語に、


テーブルの空気が妙に沈んだ。




「規則の中にはないが


ルールを崩すカード




「能力のないやつにそんなことができるの?」




「だから名前がついた」




高位生は低く言った。




「黒い仮面ジョーカー」




「……どうして行ったら?」




「正体を誰も知らないから」




誰かが小さく笑った。




「能力もないし、記録もないし、


顔は平凡だが


結果だけ残してください」




その笑いには


冗談と境界が半分混ざっていた。




その時間。




ホタロウは何も知らないまま


トレーを持って席に座っていた。




今日も一人だった。




しかし—




以前とは違った。




誰も彼を押したことがない。


誰もはっきりと悪口を言わなかった。




長官—




視線があった。




静かに。


執拗に。




「おい」




隣の席で誰かが声をかけた。


3話の時から顔を覚えている赤毛の学生だった。




“…最近噂聞いた?」




保太郎は首を横に振った。




「何の噂」




その学生は周りを一度見て、


声を低くした。




「あなた」




“… 私?」




「黒い仮面のジョーカーも」




ホタロウの手が止まった。




「何···?」




「能力のないくせに


鏡を板から下ろしたやつ。 "




彼は苦笑いをした。




「面白くない?」




ホタロウはしばらく沈黙した。




「私····仮面をかぶったことはないんだけど」




「知っている」




その生徒は肩をすくめた。




「だからもっと怖い」




「…怖いの?」




「顔がないから」




その言葉は冗談のように聞こえたが、


どこか本気だった。




その日の夕方。




教官会議室。




「問題はたった一つです。」




中年の教官が言った。




その子は「規則外」に




「能力も系列も覚醒もない」




「ところが、結果を生み出しました」




別の教官が言った。




「これは危ない」




「統制不可という意味だから」




暫し沈黙。




そして誰かが言った。




“…だから、,


見守らなければなりません」




「除去じゃなくて?」




「まだ」




教官は記録を閉じた。




「ジョーカーは--」


急いでしまうと板が折れる




その夜。




ホタロウは寮の屋上で


欄干にもたれて立っていた。




風が吹いて、


街はいつものように輝いた。




「黒い仮面のジョーカーだ…···




独り言のようにつぶやいた。




笑いは出なかった。




ただ—




少し疲れた。




能力もないし、


力もないし、


まだ何も得ていませんが




もう名前が先になってしまった。




「本当に勝手に」




けれど、




彼は分かった。




この名前は


褒め言葉でも誤解でもない。




警告だ。




その日から


無職の塾で


ホタロウを呼ぶ名前は一つに収斂し始めた。




カードではない存在。


手持ちのない手。




黒い仮面ジョーカー。




そしてその事実を—


真っ先に楽しみ始めたのは、




他でもない。


強者だった。

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