表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/40

目覚めの兆し

 調査を続けるうちに、ノアの違和感は確信へと変わりつつあった。

 ツナガリが揺らいでいる。

 この村全体に、何かが覆いかぶさっているような感覚――まるで見えない網が、村のすべてを”繋ぎ止めている”かのようだった。


 「……おい。」


 ノアが足を止める。


 突如として、村の空気が変わった。


 まるで、何かが”動いた”かのように――


 「ノアさん……?」


 『A』が不安げに声をかける。しかし、ノアはそれに答えず、じっと周囲を見渡していた。


 風が、重い。


 記録に書かれていた言葉が脳裏をよぎる。

 そうだ、“風”だ。確かに、今までと違う。


 それは、まるで村全体が息を吹き返そうとしているかのような感覚だった。


 そして――


 「……ッ!」


 ノアの視界が揺れた。


 ツナガリが、暴れ出す。


 通常なら滑らかに伸びる線が、まるで荒れ狂う波のように脈打ち、激しく揺れ動いていた。


 「何が……」


 その瞬間、どこからともなく**“囁き”**が聞こえた。


 『――目覚メロ、目覚メロ、目覚メロ』


 頭の奥に直接響くような、奇妙な声。


 「……誰だ?」


 ノアは反射的に振り返る。しかし、そこには誰もいない。『A』すらも、その声には気づいていない様子だった。


 (俺にだけ……聞こえている?)


 疑問を抱く間もなく、突如として村の奥から轟音が響いた。


 「な……!?」


 『A』が息を呑む。


 村の中心――エルナが眠る家の方向から、強い風が巻き起こっていた。


 「行くぞ!」


 ノアは迷わず駆け出した。



 エルナの家に飛び込んだ瞬間、ノアは異様な光景を目の当たりにした。


 エルナの体が、宙に浮いている。


 彼女の周囲には、目に見えない何かが渦巻いていた。

 ツナガリが……暴走している。


 「エルナ!」


 『A』が叫ぶ。しかし、エルナの意識はまだ戻っていない。彼女の身体は何かに操られるようにゆっくりと動き、まるで別の存在が宿っているかのようだった。


 「……まずいな。」


 ノアは歯を食いしばる。


 ツナガリを視る力を持つ彼には、はっきりと分かっていた。


 エルナのツナガリが、異常なものと結ばれかけている。


 このままでは――エルナが完全に”乗っ取られる”。


 「止めるぞ。」


 ノアは、一歩前に踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ