交わる力
盗賊たちは各々、ボロボロの剣や棍棒を手にしている。
装備こそ粗末だが、慣れた手つきで取り囲んでくるその動きは、単なる野盗よりも手強そうだった。
「おいおい、そんな短剣一本で俺たちを相手にするつもりか?」
リーダー格の男が、剣を軽く回しながらニヤリと笑う。
ノアは短剣を構えたまま、冷静に敵の動きを観察する。
「さあな。どうなるか、試してみるか?」
挑発するように言いながら、一瞬で間合いを詰める。
「なっ……!」
盗賊の一人が反応する間もなく、ノアの短剣が腕の隙間を掠めた。
「チッ、やるじゃねぇか!」
盗賊たちが一斉に襲いかかる。
◆
「エルナ、援護頼む!」
ノアが叫ぶと、エルナはすでに風を練り上げていた。
「分かってる!」
彼女の手元に集まる風が、やがて渦を巻き、ノアの周囲を駆け巡る。
その瞬間――
ノアの短剣が、かすかに風を帯びた。
「……?」
ノアは一瞬の違和感を覚えた。
(なんだ……今の感覚?)
だが、考えている暇はない。目の前の敵が斬りかかってくる。
ノアは直感に任せ、短剣を振るった。
すると、刃が”通常よりも軽く”動き、盗賊の剣を弾いた。
「っ!? なんだ、今の……!」
盗賊が驚いたように後ずさる。
一方、エルナも息を呑んでいた。
「……今、ノアの短剣に……?」
彼女の手元の風が、一瞬だけノアの武器と”ツナガッた”気がした。
だが、それが何なのかは分からない。
ノアもエルナも、互いに一瞬視線を交わしたが、戦闘が続く以上、今は深く考える暇はなかった。
「……とりあえず、この戦いを終わらせるぞ!」
ノアが前に出て、エルナは再び風を操る。
そして――偶然の”ツナガリ”を残したまま、戦闘は激しさを増していく。