証明
翌朝、ノアは村人たちとともに広場へと向かった。
そこには、大きめの木の台が用意され、その上に新鮮な肉の塊が並べられていた。
「さて……やるぞ。」
ノアがそう言うと、エルナは腕を組んでため息をついた。
「ったく……なんで私がこんなことしなきゃならねぇんだ。」
「お前の力かどうか、はっきりさせるためだ。」
「……わーったよ。」
エルナは不満げに肉の前に立つと、ためらいながらも手を伸ばした。
彼女の指先が肉に触れる。
――その瞬間、ノアの目にははっきりと”ツナガリ”が見えた。
(……やっぱりか。)
エルナのツナガリが、肉と結びつく。
それは通常のツナガリとは違い、微かに揺らぎながら、じわじわと変化を促しているようだった。
だが、エルナ自身にはそれが見えていない。
「……何も起こってねぇけど?」
「いや、確かに”何か”が起こってる。」
ノアは静かに言った。
「これをしばらく置いて、夜にもう一度確認する。それで結果が分かるはずだ。」
◆
そして、夜。
「な、なんだこりゃ……!?」
村人たちは目の前の肉を見て驚愕していた。
「こんな短時間で、まるで数週間熟成させたみたいな……!」
見た目はさほど変わっていないが、肉の表面にはわずかに深みのある色合いが出ている。
一口食べてみた村人が、目を丸くした。
「……旨い。信じられねぇくらい旨味が増してる!」
ノアは満足そうに頷いた。
「エルナ、お前の力は”熟成を促す”ものみたいだな。」
エルナはまだ信じられないように、自分の手をじっと見つめていた。
「……本当に、私がやったのか?」
「お前が触れた肉だけがこうなったんだ。他の肉は変化していない。だから、間違いない。」
エルナはしばらく考え込んだ後、ぼそっと呟いた。
「……悪くねぇな。」
ノアはその言葉を聞いて、少し笑みを浮かべた。
こうして、エルナの力が明らかになり、村の特産品改良に向けた第一歩が踏み出された。