プロローグ-ツナギ屋-
この物語は、ただの「ツナギ屋」の話ではない。
異世界に転生した僕、ノア・ユナイトが見つけたのは、物理的な「ツナギ」ではなく、運命と人々を繋ぐという使命だった。
人と人、仕事と仕事、遊びと遊び――世の中には無数の「繋がり」がある。その中でも、僕が選んだのは「ツナギ屋」という仕事。表向きはただの仲介業だが、裏では「世界の裏側」や「異世界」と繋がる力を持つ者として、知られざる役割を果たしていくことになる。
目の前に広がるのは、破壊と混沌が支配する異世界。だが、僕は諦めない。
精霊、夢、異変――すべてをツナぐ力を手に入れ、進んでいく。
僕の手に、世界を繋ぐ力がある限り。
「ツナギ屋さんにお願いがあります」
その声を聞いた瞬間、ノア・ユナイトは何かが引っかかる感覚を覚えた。
ツナギ屋として働く彼の元には、日々さまざまな依頼が舞い込む。商人同士の取引を仲介したり、仕事を探す者と雇い主を繋げたりするのが、彼の生業だ。だが、目の前に立つ少女の雰囲気は、今までの依頼人とは明らかに違っていた。
「……話してみてくれ」
ノアは椅子に腰掛け、興味深げに少女を見つめた。
『A』と名乗ったその少女は、少し戸惑いながらも、ゆっくりと口を開く。
「“ある場所”を見つけたんです。でも、そこを行く為の『トリック』が分からなくて……あなたなら、ツナげるんじゃないかって」
ノアは眉をひそめる。
“ツナギ屋”の仕事は、人や仕事を繋げることだ。だが、少女が言う「トリック」という言葉が、それとどう結びつくのか分からない。
「……“ある場所”?」
『A』は一瞬、言葉を飲み込むような素振りを見せた後、小さく頷く。
「…はい。でもこの話は、限られた人にしか話してはいけないんです。」
その言葉に、ノアの中で小さな警鐘が鳴る。
“限られた人しか知らない話”
“トリックを解かなければ行けない場所”
(何かがおかしい……でも)
それ以上に―― 興味が勝った。
「……話を詳しく聞かせてもらおうか」
そうして、ノア・ユナイトの”本当の仕事”が始まる。