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学園

 ソフィアは目を覚ました。初めに目に入ったのは知らない天井。いや、知っている天井だ。入学式の日。あの日もソフィアはここに運ばれた。


「うっ……」


 急に動かしたからかズキっと頭が痛む。ゆっくり状態を起こそうと身体を動かそうとすると、すぐ隣から声を掛けられる。


「起きた?大丈夫?」


 彼女は前の時もこの部屋にいた女性だ。多分この医療室で働いているのだろう。


「回復魔法を、かけたけど、一応無理はせず安静にしていてね」


 ソフィアは自分がどんな状態かも分からないが、とりあえず頷いた。


 そしてソフィアは一つ重大な事を思い出した。


「アメリアは大丈夫だったんですか?」


「彼女は大丈夫だったわよ。まだまだ目覚めてはいないけどね。しかし驚いたわ。回復魔法は掛けたとはいえ、まさかお腹に風穴を開けられた状態から回復するなんてね」


 彼女は驚いた様に言った。


「貴女もよ。まさかもう意識を取り戻すなんて。あと貴方戦う時に魔力を消費し過ぎよ。闘いを直接見た訳じゃないからなんとも言えないけれど、そんなことを続けてたらいずれ身体が動かなくなるわよ」


 ソフィアは、はいと頷いた。


「まぁいいわ。とりあえず今は休みなさい」


 そう言って彼女は部屋から出ていった。そんな彼女と入れ替わるように部屋にアイリスが入って来た。


「おはよ。目が覚めた?」


「おはようございます」


「単刀直入に聞くけど、何があったのか教えてくれる?」


「はい。分かりました」


 ソフィアはアイリスに説明した。獣人との事を……


「なるほどね。だから貴女はそんなにボロボロなのね」


 ソフィアの身体には無数の傷がついていた。それは回復魔法で治りきらず、傷の箇所が分かる程にだ。


「はい。それでですね……」


 ソフィアはもう一つ言うべきことがあった。あの謎の組織のことそだ。ソフィアはあの組織のことについても、アイリスに話した。



「あ、あーその組織ね。私も貴女に言われるまですっかり忘れていたのだけれど、思い出したわ」


 ソフィアは驚いた。まさかアイリスが知っていたとは思いもしなかったからだ。


「それで……その組織って一体何なんですか?」


「それはね……」


 アイリスが話そうとしたその時、急に物置がした。


 アメリアが、目覚めたのだ。


「アメリア!」


 ソフィアはベットから飛び降りると、すぐにアメリアに駆け寄った。


「大丈夫?身体は?」


 心配そうな目で見つめるソフィアに対し、アメリアはいつもの口調で答えた。


「大丈夫です。そして私が倒れたあとどうなったんですか?」


 ソフィアはアメリアに今までの経緯を話した。


「そして、先生としてはとしてはどう対処するのですか?」


 アイリスは顎に手をやり、考え込んだ。


「そうねぇ……とりあえずは学園長に相談かしらねぇ。貴方たちも着いてきてくれる?」


 ソフィアとアメリアは頷いた。


 アイリスを先頭に、三人は学園長室へと足を運んだ。そしてノックをし中に入る。


「失礼します」


「あら?貴女達どうしたの?」


「実はですね……」


 アイリスが事の顛末を話すと、学園長も驚いた様子を見せた。


「そう……そんな事があったのね」


「参考人としてこの二人を連れて来ました」


「分かったわ。ご苦労様」


「ありがとうございます」


「怪我はもう大丈夫なの?」

 学園長が聞いた。ソフィアとアメリアはお揃いで応えた。



「あらそう。それは良かったわ。それでその組織を名乗った男はどんな人だったのかしら?」


「はい。それがですね、謎の仮面を着けた男だったんです。それと謎の薬を服用していました」


「仮面に薬……もしかして奴らかしら」


 学園長の呟きを聞き逃さなかったアメリアが反応する。


「何か知っているのですか?」


 学園長は頷いた。そして話し始める。


「その組織の名はアンブラ。魔王を崇め、復活を企てる組織よ」


「魔王は死んだはずですよ」


 学園長の噂を聞きソフィアが言う。しかしそれでも学園長は話を続ける。


「そうね。でも、その組織は魔王が復活すると信じている。そして、魔王がもう一度この世界に君臨することを望んでいるのよ」


「でも一体なぜ魔王側についているのでしょう?」


 アメリアがさらに質問をした。その眼差しはとても真剣だ。


「色々よ。魔族への差別が強い地域で育った魔族だったり、この世界に絶望した人間だったり、あとは単に昔の戦争のことを忘れた人間が多くなってきてるのよ」


 魔族と人間が友好関係を結んでから幾年の月日が流れた。だが人々の間の差別は無くなってはいない。未だに魔族を目の敵にし、虐殺しようとするものですらも居る。


 だがそうではなくただ個人として忌避する者も多くいる。

 それらが混ざり合わさり、やがて一つの組織となったのだ。


「それで学園側としてはどのような対処を取っていくのでしょうか?」


「対処?」

 学園長がギロリとアメリアの方を睨んだ。その眼の奥が光ったように見え

 た。


「『対処』です。彼等を、あの組織をどうするのですか?」

 さらに学園長は睨みを利かせながら言う。アメリアも怯まず、聞き返す。


「あのね。学園は警察じゃないのよ。一々そんなめんどくさいことやってられないのよ。それに、貴女はあの組織に喧嘩を売ろうとしてるのよ?そんな危険なことさせる訳ないでしょ」


 学園長の口調が強くなる。


「学園は実力主義なの、どんな組織に所属していようが、実力が全てなの」


「それで、生徒が襲われたのもそれでいいのですか?」


「……確かにあの子達は襲撃を受けた。けどそれは運が悪かった。それが答えよ」


 学園長は深いため息と共にそう応えた。


「組織に対処にた方が学園にもいい影響があるんじゃないですか?」

 今まで黙っていたソフィアが口を開いた。


「それはどういうことかしら?」


「この学園が実力主義だというなら、謎の組織にちょっかいを掛けられたままでいいんですか?実力主義の学園が謎の組織に負けたままでいいんですか?」


 学園長はソフィアの話に聞き入るように少しだけ身を乗り出した。


「先程、貴方が組織の名前を出しましたよね。そしてその対処をしようともしない。これだと勘繰ってしまいますね」


「何がいいたいの?」


「いえいえ、何も。そんな学園長様を疑うなんてとんでもない」

 ソフィアは嘘のような笑みを顔に貼り付けながら言う。


「それに実力主義だって言うのなら弱い生徒が組織に負けたっていいんじゃないですか?」


「そうね。貴方の言うことも一理あるわ。だから、学園でも対処を考えておくわ」


 ソフィアとアメリアは「分かりました」と言うとそのまま扉を開け、部屋を出ていくのだった。


「ありがとうございます」

 するとアメリアが即座にソフィアに向かってお礼をした。


「さっきはありがとうございます。本当に助かりました」


 アメリアは頭を下げた。その勢いの良さにソフィアは一歩だけ仰け反った。


「いいわよ。私も思ったことをただ言っただけだから」


「いや、それでもです」


 アメリアは下を向いたままで言った。お礼をし終わったアメリアは頭を上げ、ソフィアに向き直る。


「それで、これからどうします?学園長が組織に対してどのような対処をするかも分かりませんし……」


「そうね。とりあえずは様子見ね」


 そうして二人は家に帰ったのだった。


 ***


 ソフィアは帰路を辿っていた。辺りはもう暗くなっている。ソフィアは今日一日のことを思い返していた。


「今日は一日とは思えないほど色々なことがあったわね」


 ソフィアは今日あった事を思い出していた。そして、ふと呟く。


 ソフィアが考え込んでいると家に着いた。もうそんな所まで歩いてきていたのだ。


「ただいま」


 ソフィアは家の扉を開ける。するとソフィアに向かって泣きながら飛び付いてくる女性がいた。母親であるサラである。


「今日、学園から連絡があって、それで……全速力で帰ってきたのよ」


 サラは涙でつっかえながら喋る。ソフィアに抱き着きながら嗚咽を漏らしている。

 そしてサラはソフィアに対して「無事でよかった」と言いながら髪を撫でた。


 ソフィアは、その母を安心させるように「大丈夫だよ。お母さん。私なら大丈夫だから」と何度も言った。

 そしてしばらくし、サラは泣き止んだ。

 そしてソフィアの方を向いた。

「それで……どこが痛むの?」


 それに対し、「学園で回復魔法を掛けてもらったから大丈夫だよ」と説明を付け加えておく。


「あらそう?でも今日は早めに寝なさいよ」


「うん。分かってる」


 ソフィアはそう返事をすると自分の部屋へと戻って行った。そしてベットに寝転がる。

 すると、ある一つの疑問が頭に浮かぶのだった。

 それはあの組織はいったいどんな存在なのかということだった。


「魔王を崇めている組織だって学園長が言っていたけれど実際はどんなことをしてるのかしら」


 ソフィアがさらに考えを深いとこにまで巡らせる。だが、思案しようともそれ以上進展はない。


 ソフィアは考えることを諦めたのか、仰向きに寝転んでいたのを、寝返りを打ちうつ伏せとなり枕に顔を埋めた。今日の疲れもありソフィアはそのままぐっすりと眠ってしまった。

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