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転移世界のあなたと私  作者: ツミハミ
起源の国 オリジナ
4/26

4話

「ルドー!」


「キシリカ!」


「久しぶり!」


「うん、久しぶり!元気にしてた?」


「そりゃあ、もちろん。」


「二人共、久しぶりね。」


「「ロゼリア!」」


 三日後、入団式も終わり寮に荷物を運びに行くところです。部屋割りを見るとキシリカとロゼリアと同じ部屋だったので先に合流してから行くことにしました。


 三日ぶりの二人も元気そうで皆でハグしあっています。


「ほらほら、早く部屋に行くわよ!」


「キシリカちゃんは相変わらず元気ねぇ。」


「本当に元気だね。」

 





 部屋に着いて明かりを付けると思っていたよりも広い部屋に驚きました。ベッドがしっかり三つ用意されていて三人で暮らすには十分すぎるほどの部屋です。


「私は真ん中のベッドを貰うわよ!」


「じゃあ私は右ので。」


「私は左ね。」


 キシリカは真ん中のベッドを貰うとダイブしていました。そしてそのまま夢の世界へ…。


「寝ちゃ駄目よぉ、キシリカちゃん。この後騎士団の制服貰いに行かなきゃいけないんだから。」


「は!そうだったわ!早く行くわよ!」


「ちょっと待ってって、キシリカ!忙しすぎだって!」


「せめて荷物ぐらい置きたいわぁ。」


「し、しょうがないじゃない、楽しみなんだもの。」


 流石に思いつきで行動しすぎなキシリカです。まだこちらは何もできてないので少し待ってほしかったです。


「よし、じゃあ行こう。キシリカ。」


「よっしゃ、行くわよー!」


 少し落ち着いたのでキシリカに声を掛けると凄いスピードですっ飛んでいきました。追いつけそうにないので私達はゆっくり追いかけることにします。






 制服を取りに行くと先に行っていたキシリカが怒られていました。


「廊下は走らないで下さい。というか、もうあなたは騎士団の一員なんです。もう少し自覚を持って行動して下さい。」


「すみませんでした。」


「キシリカ?」


「ん?どうしたの?ルド。」


 怒られたキシリカは花が枯れたときみたいにシオシオになっていました。ちょっと心配になるぐらい落ち込んでいます。


「その、平気?」


「私は平気よ、ハハ。」


「ロゼリア、どうしよう。キシリカが変になっちゃった。」


「うーん、多分勝手に戻るから放っておきましょう。」


「本当?こんななのに?」


「…。」


「多分、平気よ。…多分。」


 声を掛けても思っている反応が得られなかったので取り敢えず制服を貰いに行く事になりました。一応キシリカもちゃんと付いてきてくれています。


「ルドさんですか?ルドさんの装備はこちらとなります。お受け取り下さい。」


「はい、ルドです。ありがとうございます。」


 制服は黒が基調となり、赤が差し色のデザインで、肩には騎士団のマークである花と剣があしどられたパッチが付いています。それに加えて、肘当て、膝当て、胸当て、二振りの剣をいただきました。


「ルド!見なさいよこれ、かっこいいわよ!」


「うん、かっこいいね!」


 キシリカも制服を貰ってご満悦のようで元気に戻っていました。…言っちゃなんですが、単純ですね。






 部屋に戻り、一回制服を着てみることにしました。


「なんかアンタ達、胸当てデカくない?」


「確かに、私達の方が大きいわね。」


「…いいなー。」


 キシリカが私達の胸元を見ながらポツリと呟きます。


「キシリカもその内大きくなると思うよ?今キシリカ何歳だっけ?」


「十五だけど。」


「…私と一緒かー。」


「胸でその人の評価が決まるわけじゃないんだからそんなに気にしなくてもいいんじゃないかしら?」


「フォロー下手ね、アンタ達。」


 少し悲しい会話をしながらも制服を着てみます。胸当てとか肘当てでかなり苦戦しました。

 

 着けた後も、今まで一度も着けたことがないので、感覚にあまり慣れません。そして、一番苦戦したのは武器でした。


「何これ、どうするの?」


「こうじゃないかしら?」


「うーん、なんか違う。片方ブランブランになってるよ。」


 お互いに相手の武器を体に着けられるように試行錯誤しています。私は双剣術だったので双剣を、キシリカは大剣、ロゼリアは大斧と呼ばれる武器を受け取っていました。


「見なさいよこれ、めちゃくちゃかっこいいわよ!」


 一足先に装備できたキシリカが自慢してきます。正直すごいかっこいいです。


「私も早くつけたい。」


「かっこいいけど、面倒ね。明日から毎朝着けなきゃなんでしょう、いやね。」


「そっか、明日から毎日か。本当に面倒くさいね。…もう少し練習しておこっと。」


「私も自分で着けられるようにしなきゃ。」


「アンタ達、早くしなさいよ。お腹すいたから食堂に行きたいのよ。」


「先行ってていいよ、キシリカ。席だけ取っといてくれない?」


「まっかせなさい!最高の席を取ってみせるわ!」


「別にどこでも変わんないと思うけど。」


「キシリカちゃんは元気でいいわねぇ。」


「ロゼリア、こないだもそんなこと言ってなかった?」


「だって実際元気じゃない。」


「まぁ、確かにそうだけど。」


「ほらほら、急ぎましょう。キシリカちゃんが泣いちゃうわよ。」


 別にゆっくり行っても泣かないと思うけど、待たせるのも悪いのであと一回だけ練習してすぐに行くことにしました。






「シエル団長?」


 練習を終わらせて食堂に行くとキシリカと、その横にシエル団長が座っていました。


「おぉ、ルド。来たか。」


「昨日ぶりですね。」


「そうだな、騎士団の制服、似合ってるぞ。」


「そうですか?ありがとうございます。その、ところで何でキシリカと一緒に?」


「ん?ルドから話は聞いていたが、どんな子か直接見ておこうと思ってな。それに久々のスキル持ちだ、話をしておきたかった。」


「こ、光栄です!騎士団長!」


 何かキシリカの様子が変。なんというか硬いというか、緊張しているというか。入団試験の時よりガチガチになってる。


「キシリカちゃん?何か緊張してる?」


「き、緊張しない訳ないじゃない!てか何でルドはシエル騎士団長と仲が良さそうなのよ!羨ましい!」


「取り敢えず話は食事を摂りながらにしよう。ルド、食事を貰ってきたらどうだ?」


「そうさせてもらいます。」


 というわけで食事を摂りながら話をすることになりました。今日の夕飯はカレーライスです。そういえば気にしていなかったけど異世界にもカレーライスとか存在してるんですね。まぁ、どうでもいいですね。


「で、シエル団長は何の話をしに?」


「忠告、のような物をしにきた。」


「忠告ですか?」


「あぁ、君達はスキル持ちの殉職率を知っているか?」


「いえ、知らないです。二人は?」


 二人に尋ねると同時に首を横に振ってきました。 


()()だ。特に初陣ではさらに高くなる。何でだと思う?」


「はい!過度な自信、とかですか?」


「キシリカ、半分正解だ。確かにスキル持ちの中には全能感に襲われ、敵陣に突っ込んでいき死ぬ奴が一定数存在する。」


 騎士団には現在スキル持ちが七人しか存在しません。その中で残った二人の戦闘用スキル持ち、シエル団長ともう一人は高い殉職率に引っかからず現在まで生きています。


 この二人はまさしく歴戦の猛者と言えます。しかし、二人ではやはり人手が圧倒的に足りません。なのでこの二人が狙っているのは私達三人をシエル団長達と同じステージの強さにすることです。


「良いか、よく聞け。もう半分の理由は単純に魔物に負けるからだ。」


「そんなに強いんですか?」


「いいや、慣れるとスキル持ちなら油断することさえ無ければ簡単に倒せるだろう。」


「なら何で?」


「皆、生き物を殺すのが怖いんだ。魔物を殺した時の感覚に恐怖を覚えて立ちすくんでいる時に魔物に不意打ちされて死ぬなんてのが一番多い。」

 

「不意打ちですか。」


 小さな生き物、例えば蚊や蟻を殺すときには特に罪悪感を覚える人は居ないです。居たとしても少数だと思います。


 それに対して、少し大きくなった生き物、虫やネズミとか。こういうのを殺したり、死体を見ると何故か蚊や蟻の死体を見たときには感じなかった変な感情が生まれます。


 魔物を殺した時にも同じ事が起こって、なんとも言えない、悲しいとも虚しいとも違う、形容できない感情が心を支配して、その間に多くのスキル持ちが殺されてしまいます。


「実はスキル持ちは初陣から最前線で戦うことになっている。そのせいで否が応でも魔物を殺さないといけない状況になりスキル持ちは命を落とす。ルド達も遊撃小隊所属になっていただろう?」


「はい、なっていました。」


「すまないな、昔からの規則を変えるのがなかなか難しくて遊撃小隊から外せなかった。だが殉職率を少しでも下げるためにこれから一週間は特殊訓練になっていたはずだ。たっぷり訓練して初陣で死なないようにしてくれ。」


「分かりました、誰かがボーッとしてたら声を掛け合って頑張ります。私達は運がいいことに三人もいるので。」


 まだ騎士団に入ったばっかだし、キシリカやロゼリアとももっと一緒に居たいから絶対に死なないように頑張りたいです。


「暗い話になってしまったな、済まない。そうだな、何か面白いこととかなかったか?」


「シエル団長、話題の切り替え下手ですね。」


「そうか?」


「あーっ!そうよ!結局何でそんなに騎士団長と仲がいいのか聞いてないわ!答えなさいルド!」


「え?いやそれは、なんやかんやあって。」


「そのなんやかんやが知りたいのよ!」


「じゃあ私が教えよう。」


「いいんですか?騎士団長!」






 キシリカがしつこいからシエル団長がわざわざ教えてあげました。けど、異世界関連の事を伏せるためにちょっと話が変わっていて。


「アンタ馬鹿ね!ルド!」


 私が道に迷って東の大森林迷い込んでしまったことになっていました。そのせいでキシリカにめちゃくちゃ馬鹿にされています。取り敢えず後でキシリカとは話をしようと思います。


「済まないな、ルド。」


「いや、むしろ濁してくれてありがとうございます。私はうまく誤魔化せないと思うので。」


 シエル団長が謝ってくれました。キシリカとは人としての格が違いますね。


「私はそろそろ行く。明日からの訓練、頑張ってくれ。それじゃあまた会おう、三人とも。」


「シエル団長、忠告ありがとうございました。」


 シエル団長が手を振って去っていきます。やはりシエル団長は綺麗だなと思います。


「それじゃ、私達も早く寝て明日からの訓練に備えましょう。」


「分かったよ、ロゼリア。けど、このキシリカとかいうのが話に夢中になって夕飯を食べ切ってないんだけど。」


「キシリカちゃん…。」


「何よその、蔑むような目は!?」


 一番初めに食堂に来て一番遅く食堂から出たキシリカでした。






 朝になりました。騎士団員としての生活も二日目です。朝食も軽く済ませ、今はグラウンドで小隊長が来るのを待っています。


「サリナ小隊長に敬礼!」


 ザッ!


 私が所属するこの遊撃小隊に一人だけいる先輩の掛け声で皆一斉に敬礼をします。小隊長が来たようです。


「皆のもの、おはよう。私がこの遊撃小隊の隊長のサリナだ。これからよろしく頼む。」


 サリナ小隊長は私より少し背が小さくて白色の短く切りそろえられた髪が風に揺れています。サリナ小隊長はシエル団長の他に一人だけいる戦闘用スキルの持ち主で騎士団の最強格の一人らしいです。


 そんなサリナ小隊長が隊長を務めるこの遊撃小隊は総勢七人の少人数の部隊ながら精鋭部隊と呼ばれています。なぜかというと戦闘用スキル持ちが集められ、スキル持ちでなくても入団試験で高い成績を出した者が所属しているからです。


「我ら第一遊撃小隊はこれより七日間にわたって特殊訓練を行った後に東の大森林にて最前線で戦うことになる。皆、気を引き締めて掛かれ!」


「はい!」


「まず、スキル持ちで無い者はグラウンド二十周!スキル持ちは私が直々にスキルについて教えよう、こっちに来い。」


 指示を聞き、スキル持ちでない先輩と同期二人はグラウンドに走っていきました。グラウンドで走るというのにグラウンドに行くときも走るんですね。






「よし、ここにしよう。」


 サリナ小隊長が私達に座るように言ったのは屋内の使われていない倉庫でした。


「今年は三人も居るのか、豊作だな。まずは自己紹介からだ。左のから行こう。」


 私の横に座っていたロゼリアが立ち上がります。


「ロゼリアです。今月で十七歳になります。スキルは身体強化、大斧術、水の加護、水魔法です。」


「水の加護持ちか、いいな。次の奴。」


「えと、ルドです。十五歳です。スキルは身体強化、双剣術、治癒魔法、龍です。」


「龍?それに双剣術か、鍛えがいがありそうだな。最後。」


「キシリカといいます。私も十五歳です。スキルは身体強化、大剣術、出力向上、炎魔法です。」


「うん、お前も戦闘用として文句無しだ。私も改めて、サリナだ。スキルは身体強化、双剣術、自動回復、特殊硬化を持っている。」


 皆それぞれスキルが違います。それでも四つというのと身体強化があるのは変わりません。


「お互いについてはまぁ、戦闘の中で分かるだろう。よし、では早速スキルについて教えよう。」


 サリナ小隊長はスキルについて解説してくれました。要約すると、

・スキルは基本四つしか与えられない、

・身体強化が有るかどうかで戦闘用かどうかが変わる、

・同じ名前のスキルでも細かい内容には個人差がある、

ということでした。


 戦闘用スキルで基礎となるのは身体強化で、これについては二十四時間回しっぱなしが目標だと言われました。もちろん寝ている間もです。


 次に何とか術系のスキルで、これは何とか、の部分に対応する武器を持つと素人でも達人のような動きが出来るようにアシストが入る能力のようです。


「ただし、お前らの場合、まだ術系スキルの本領発揮とはいかない。素人が使うと達人の動きができるようになる。なら達人が使うとどうなると思う?」


「もっと強く?」


「そうだ。達人が術系スキルを使うと人間を辞めた動きが出来るようになる。これがスキル持ちが強いとされる理由だ。多少は物理法則を無視できるようになる。」


「え?」


「斬撃を飛ばしてくる馬鹿も居るんだ。極めればそのへんの奴に負けることは無くなる。」


 スキルってとんでもないようです。


「後、ルド、お前は少しやることが多い。双剣術は両方の手で剣を持った時に発動する、つまり片方の腕を落とされたりするとただの雑魚になる。それを避けるために片手剣の使い方もある程度は出来るようになってもらう。」


「え、片手剣もですか?」


「あぁ、術系スキルに該当していないということは才能が無いんだろうが一般兵とおんなじレベルまでは持って行く。」


「了解しました。」


「さて、こんなところだな座学は。後は模擬戦でもやって学んでもらうか。」


「も、もう模擬戦ですか?」


「もちろん。実践あるのみ、というやつだ。」


 模擬戦をする、と決めたときに一番目が輝いていたサリナ小隊長はめちゃくちゃ怖かったです。






「ロンです。よろしくお願いします!」


「あぁ、はい。ルドです。お願いします。」


 グラウンド二十周を終えた同期と模擬戦をすることになりました。同期は騎士団に入るために訓練を積んできていて、実際に魔物と戦ったこともあるそうです。


 沢山いた候補者の中から選ばれ、その中でも精鋭であるこの部隊に居るということはやはり剣の腕は相当なものでしょう。そんな人と初めて剣を振るどころか誰かと喧嘩したこともない私が戦えるのはスキルのおかげです。


 とはいえ、真正面から剣を構えられるとかなり怖いです。しかも、模擬戦で使う剣は支給された本物の剣です。こういうのって木刀とかじゃ駄目なんですかね。


「試合は一本勝負、有効打が入れば即終了だ。剣で斬らないように気をつけろよ。あと、ルドは身体強化禁止だ。」


 そもそも身体強化なんて使い方知りません。


「行くぞ。模擬戦、開始!」

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