24話
ソレイユ領での私の一日はパンではじまります。
「いただきま〜す」
全員揃った食卓でロゼリアのお母さんの焼いてくれた熱々のパンにバターを塗り、一心不乱に噛みつきます。
食事を終えると、ロゼリアの妹ちゃんたちのお見送りで騎士団に向かいます。
朝イチの業務は夜中に溜まってしまった魔物の間引きです。
「竜剣起動!」
贅沢に竜剣まで使って爆速で魔物を片付けるとその日の訓練に移ります。
走り込み等の体力づくりを終えると、剣の素振り、弓の練習等の技術系の訓練もこなします。
正直サボりたい気持ちでいっぱいですが、サボると心の中のサリナ小隊長が怒鳴ってくるので涙を流しながら頑張っています。
普通に前線都市に戻ってから怒られそうだし。
なんか日本での学生生活の時より勤勉な気がします。
なんでこんなに頑張ってるんだろ、私。
そして、最後にロゼリア考案お宝探しゲームを一人で寂しくやります。
キシリカとかも巻き込みたかったんですが、他の仕事もあってこれは結局一人でやってます。
「えーっと、で、どっちだろ?」
最近は成果も出てきています。
相変わらず迷いはしますが、こないだほどのひどい迷い方はしなくなってきています。
ただ、問題もあります。
私がこのゲームを頑張っている間も泥棒の被害が減っていないということです。
不安なので私と同じく暇そうなアカリさんに相談したりしています。
「ロゼリアって昔はどんなだったの?」
話の中で一度、昔のロゼリアについて尋ねてみました。
「普通の女の子ですよ。けど、昔からスキルが使えたんです」
「へぇ。なんで最近まで騎士団に入らなかったんだろ?」
騎士団にはスキル持ちなら試験なしで入れるのに。
「私も知らないです。急に居なくなったと思ったら、こうして皆さんの仲間として帰ってきたので」
あれ? こないだの休暇の時帰ってきてたんじゃ?
聞いてみても会っていないとのことです。まぁたまたま会わなかっただけですかね。
―――
このような日々を送り、ついに方向音痴を克服する日がやってきました。
ロゼリアにも付いてきてもらっていつもの宝探しゲームを開始します。
「用意はいい?」
「オッケー!」
ロゼリアの合図でゲームがスタートしました。
まずするべきことは周りの建物を見て自分がどこに居るかを調べること。
アドバイスに従い、立ち止まって地図を見ながら現在地の確認をします。
「あ、ここかな」
数分後、少し移動しながらもなんとか現在地の予想を立てられました。
太陽の位置から東西の向きを確認して、地図の向きを変えて宝のマークが描いてある場所に向かいます。
「えっと、今ここを通ってきたからこっちかな?」
私もついに振り返るという技を覚えました。
この技によって、違う角度から通った道の確認をすることができ、情報の正確度がさらに上がります。
何回か道を間違えましたが、振り返ることでミスを修正し、やっとのことで宝のマークが描かれた場所まで辿り着くことが出来ました。
そこには目印の赤い旗とロゼリアが立っていました。
ついに、ゲームクリアです!
「ここまで長かったわねぇ。おめでとう、ルドちゃん」
「ほんと長かった。じゃ、早速泥棒捕まえに行ってくる」
「ふふ。その前に、ゲームをクリアしたルドちゃんにはご褒美があります」
え? 聞いてない。
「はい。近くのカフェのクーポン」
「え、いいの?」
「頑張ってたから、特別よ」
「ありがとう」
行きたいなと思ってたカフェのクーポンをもらいました。少し話しただけなのに覚えててくれたんですね。
「ロゼリア、今度一緒に行こ?」
「私もいいの? じゃあお邪魔しちゃおうかな」
約束を取り付けた後、私は泥棒を捕まえるためにロゼリアと別れて商店街に向かいました。
―――
宝の次は泥棒を、ということで間髪入れずに捕まえますよ。
前の時とは違い、姿がバレてしまっているので隠れずに道の真ん中で堂々と泥棒を待ち構えます。
しばらく待っていると遠くの方から悲鳴が聞こえました。
「出番かな?」
段々悲鳴の発生場所が近づいてきます。目の前に砂ぼこりができたと思ったら、私の頭上を人が高速で通過していきます。彼女と完全に目が合いました。
「あれ、お姉さん?」
「どうも〜」
「もしかして、リベンジに来たの?」
「そうだよ。今度こそ、逃さないから」
「できるものなら、やってみて!」
わざわざ立ち止まって私に話しかけてきました。どうやら私のことを覚えていたようです。
挑発してきたので竜剣を使ってマックススピードで追いかけます。
「やっぱ速いね、お姉さん!」
単純な速さ勝負なら負けはありません。ただ、この泥棒との勝負で大事なのはどれだけ地形を理解しているかです。
前の私ならただ泥棒についていくだけでしたが、方向音痴を克服した今の私なら違う道から行っても最終的に泥棒のいるところに合流することができます。
泥棒からすると私を撒いたと思ったら突然予想だにしていないところから現れるんですから、驚きでしょう。
「うおっ、危ないなぁ」
しかし、これだけ追い詰めても最後の一手が足りません。最後の手段を使う時が来たようです。
懐から長い布を取り出すと、泥棒のルートに先回りして進路を妨害するように布を張ります。
短距離走のゴールテープのように布を張ると、泥棒が止まりきれずに布に衝突しました。布が絡まって動けない隙に嘔吐剤を飲ませて完全に動きを止めました。
完全勝利です。
「嘔吐剤はやめない?」
手足を拘束された泥棒が話しかけてきます。気分を悪くしたようで青ざめた顔をしながら話しています。
「便利なので」
「便利だからって使うようなもんじゃないでしょ」
似たようなセリフをサリナ小隊長にも言われたような記憶があります。嘔吐剤、評判悪いですね。
―――
泥棒を騎士団まで連れてきました。ヤマト隊長が泥棒をみて驚くとともに私に感謝してきました。
珍しく褒められたので嬉しかったですね。
しばらくお悩み相談に付き合ってもらっていたアカリさんも喜んでいました。今度お礼にお食事でも奢ろうと思います。
泥棒を牢屋にぶち込んで、話を聞くことにしました。他にも仲間が居ることだったので、その人たちの所在を探ることが目的です。
「あなたがリーダーみたいな役なんですか?」
「そうですよ、お姉さん」
「じゃあ、お仲間はどこですか?
教えてくれるとありがたいんですけど」
「言うわけないじゃん」
「言わなきゃ嘔吐剤ですよ?」
「……そ、それでも吐かないから!」
居場所を吐く、というのと実際に口から吐くので掛かってますね。私、センスいいですね。
「別に、片っ端から捕まえようって訳じゃないですよ」
「そうなの?」
「そりゃあ、全員捕まえたら牢屋の数が足りませんし。なにか事情があってのことなら話を聞きます」
「……」
泥棒は少し悩んだ後、話すことに決めたようです。
「いつからか、物が無くなるようになったの」
泥棒の話によると、魔物の増加が問題視されはじめた頃、住んでいた村で窃盗事件が多発するようになったそうです。
どれだけ戸締まりをしても意味がなく、たとえ貴重品を肌身はなさず持っていても手の中から消えてしまうとのことで、段々生活も苦しくなってきたそうです。
「アンタら騎士団も、魔物の増加とやらに夢中で取り合ってくれないし、私たちも盗みでもしなきゃ生きていけないんだよ」
「そ、それはすみません」
睨んでくるので反射的に謝りました。けどその頃私アベリア領に居るんでどうしようもないんですが。というか村の人が全員泥棒とか聞いたことないですね。
そのまましばらく泥棒の愚痴を聞いていると、ロゼリアがやってきました。
「ルドちゃん、どう?」
「うん。思ってたより面倒くさそう」
泥棒の話からして物を盗むことに特化している魔物が居そうなことを伝えるとロゼリアも嫌そうな顔をします。
「目の前で見張ってても盗まれるってことは透明とか、遠距離からも盗めるとかができる魔物じゃないかしら?」
「だよね〜。だとすると、どうやって捕まえるか」
三人で頭を捻っても答えが出ないので、とりあえず
「もう、村行っちゃう?」
「よし、出発よ!」




