15話
リーダーさんの号令で移動を始め、現在セフトホークの巣が見える位置で待機しています。
作戦の第一段階として、セフトホークの親が飛び立った瞬間を狙い、私とロゼリアが巣に飛び込み貴金属をいくつか奪うつもりです。
「まだ?」
セフトホークは現在、ちぎった肉を雛に与えています。これが終わったら飛び立つはずです。
「クァ!」
肉を与え終わった途端、セフトホークの番は同時に翼を広げ、バサッと音を立て飛び立ちます。
「今!」
リーダーさんの合図で私とロゼリアは草むらから勢いよく飛び出し、巣に侵入しました。それを見たセフトホークが旋回し、戻って来る前に貴金属を手で掴み揃って脱出します。
「じゃあまた後で、ロゼリア!」
「うん、そっちも気をつけてね!」
脱出したと同時に私達はアベリア領に背中を向け、全力で走り出します。領地からできる限り遠ざかりつつ、セフトホークを一体ずつ相手するためにロゼリアとは別れました。
「ウッソ、速すぎ!」
ここまでは一応順調ではあったのですが、予想より余りにも速いセフトホークのスピードに焦っています。巣から離れたところから追いかけてきたのに既に姿がはっきり見えるようになっています。
「こないだのときは本気じゃなかったの!?」
巣から引き離す距離は最低でも三キロメートル。まだ半分も来ていません。
「クァ!」
それにセフトホークも今のところ私に怒ってついてきてくれていますが、私が逃げすぎて追いかけるのを諦められたら意味無いです。
だから弓をある程度打ちながら逃げたいんですが、そんな暇あるかな。
―――キシリカ・ソレイユ
「行ったわね」
ルド達がセフトホークを引き離し始めて数分。もう二人の姿が見えなくなった頃、巣の周辺に残っていた私達も行動を始めたわ。
こっちはセフトホークの雛の討伐担当。できる限りこちら側の被害を減らすために短期決戦で終わらせられる作戦をすることになったんだけど、その為に今は匍匐前進でめっちゃゆっくり進んでるわ。
雛十二羽をまとめて討伐するために立てた作戦は熱殺。騎士の皆で雛を円形に囲んで逃げられなくしたあとに私が炎魔法で焼き尽くすわ。逃げさせないために皆には大盾で囲んでもらうことにしたからゆっくり進んでるわ。
「リーダー、平気?重いでしょ?」
「このくらいできなきゃ、騎士失格ですよ。それより、キシリカ様も自分の仕事に集中なさってください」
そんな感じで士気もよく順調に進んでいた中、雛の方に動きがあったわ。
「?」
敵を追って中々戻らない親を心配したのか外の様子を見に雛が巣の端まで歩いてきた。
「やばいわね」
今は円形の巣の周りに皆がいる状態。まだ近づききれてなくて一人一人の間に隙間があって雛が逃げられる。
もしバレて一匹でも逃がしたら苦労が水の泡どころか作戦失敗ね、でもこのままじゃバレるのも時間の問題。どうしようかしら。
「キシリカ様、雛の気を引いてくれますか?私達はその間に全速力で巣まで駆け抜けます。その後は作戦通りに」
「けど、アンタらじゃ間に合わないわよ。」
「…間に合わせます、絶対。」
「…なら、頼んだわよ。」
「はい!」
そういうことなら全力を出すのみね。私は身体強化全開で走りながら大剣を抜き、唱える。
「炎魔法!」
全てのパーツが金属製の新調した大剣。私から放たれた炎の熱は瞬く間に伝わり、高熱となった剣は赤く光る。
「覚悟しなさい!」
「キュリィ!?」
こちらを認識した雛も私の炎を見て思わず驚いたわ。そして巣の中に走って逃げていったわ。そのタイミングで騎士の皆も全速力で走り始めた。
「逃さないわよ」
巣の中心、他の雛の姿も見える中、私の炎を見た雛が何かを伝え、全ての雛が私の反対側に向かって逃げ出そうとしたわ。
けど、「逃さないって言ったでしょう。」
噴射した炎の勢いを利用して普通に走るより何倍も速く雛達の真正面に立ち、剣を振り回して逃げ場を無くしたわ。
また私から逃げようと反対に振り向いたけどそっちにはもう皆が待ってるのよ。
「キシリカ様!」
皆は大盾を前に持ち、少しずつ雛に向かって距離を詰めてるわ。私の後方からもとっくに他の皆が到着し、円形状になるように雛を囲んだわ。
「怯むな!押せ!」
リーダーが皆に声をかけながら、皆は雛が出て来ないように盾で必死に抑えてるわ。逆に囲まれた雛は逃げ道がないことを察してなんとか突破口を作り出そうと暴れてるわ。
「すみません、キシリカ様!そんなに長く保ちません!」
自分達とほぼ同じ大きさの雛相手だと力が強すぎて抑えきれないようね。
「えぇ、平気よ。一撃で沈めるもの」
「お願いします!」
「皆、熱いから我慢しなさい!炎魔法、最大出力!さらに出力向上!」
鉄板のスキル重ねがけで上空から雛達のところへ突っ込んで一気に雛達を焼いてやるわ!
火力が高すぎて火柱も上がってるから、騎士の皆の盾も溶け始めたようで熱がっている人も居るわね。
「アンタら、もう十分!離れなさい!」
雛はもうとっくに動く力も残っていないみたいだから後は跡形も無くなるまで炎を出し続けるだけ!
それから一分ほど燃やし続けると雛の体ももう炭しか残っていなかったわ。リイキラを食べたくせに、呆気ないのね。
「キシリカ様、やりましたね」
「…えぇ、そりゃもちろん。大勝利よ!」
―――ルド・エタニティ
「最っ悪!」
ただ逃げるだけなのに三回も治癒魔法を使わされた!けど、その甲斐もあってか、三キロメートル。ちゃんと離れられた。反撃開始!
「双剣術!」
「クァァァ!」
私が今までの逃げに徹したモードから、反撃し始めたことからセフトホークも本気を出したのか、動きが変わり始めました。
空へ逃げたかと思えば、急降下してきて脚で私を蹴り飛ばします。吹き飛ばされてぶつかった勢いで木が何本か折れてしまっています。
「…っ!?…治癒魔法。」
これで治癒魔法は残り五回。獣戦のときから一回分使用回数が増えたけど、雀の涙。
「空飛ばれるとやりにくいなんてものじゃないね」
どうにかして空から引きずり下ろせればいいんですが特に何も思いつかず。正直手詰まりです。
「クァクァクァ!」
セフトホークは笑うように翼をバタつかせてくる。こういう鳥系の魔物は総じて知能が高いのもあって、今のみたいに時折こっちを馬鹿にしているような態度をとるので本当に腹が立ちます。
「当たって!」
弓を打ってみても簡単に避けられてしまい、もはや牽制にもならなくなってきました。けれど確実にセフトホークの気を引ける案を思いつきました。
あえてセフトホークの目の前で貴金属を取り出して見せびらかしてみます。前回戦ったときには私には目もくれず貴金属を取ろうとしていたので、今回も降りてくるはずです。
しかし、今回はただセフトホークに渡すのではなくとある物を一緒に投げようとおもいます。
「クァ!」
貴金属を取り出して見せるとセフトホークは予想通り目の色を変えて降下してきました。真正面から飛び込んできたので今貴金属を投げたら確実に嘴でキャッチするはずです。
そうしたら、私が貴金属と一緒に投げる嘔吐剤が口の中に入る!
「喰らえ!」
「クァクァ!…クァ!」
予想通りセフトホークは貴金属と嘔吐剤を共に飲み込みました。すると口の中で瓶が割れた音がしました。貴金属を取り戻した嬉しさから飛び跳ねていたセフトホークはみるみるうちに顔を青ざめます。
「クァ!クァ!」
セフトホークは下を向き、口から様々なものを吐き出します。その中にはとても小さい指輪であったり、血のついた服の切れ端のようなものまであります。
「やっぱり…人、食べたんだ。なら、私は君をここで確実に倒さないと」
セフトホークは黙ったままこちらを向いて睨みつけてきました。ですが、こちらも負けてられません。
「かかって来て。倒してあげる」
こう言うとセフトホークは羽を広げ、飛び去ってしまったと見間違う程の速度で突進してきました。やはりここまで本気を出してなかったんでしょう。
それにしても、本気を出すタイミングからして人語を理解してそうで恐ろしいです。
その後、一定の間隔で突進しては離れ、突進しては離れを繰り返してくるので、防戦一方になり防いでいる腕が痺れてきました。
突進してきたタイミングで反撃しようと思っても、上手く身体を翻しかわされます。嘔吐剤も流石に二度目は学習されていて効かないでしょう。
ただ、何回も動きを見ている内にとあることに気が付きました。突進の後、あまりの速さに方向転換が上手く出来ていないのです。それはつまり、突進先に私以外の障害物があった場合、避けられないということです。
岩かなにかにくちばしが突き刺されば動きを止められそうなので、いい感じの物を探すと近くに斜面がありました。どうやら岩でできているようなのでそこにおびき寄せることにしました。
ブォン!という怖すぎる翼の音が鳴り響く中、なんとか耐えきって、背中に斜面を感じるところまで来ることが出来ました。あとは次に真正面から突っ込んできたらそれを避けるだけです。
「クァ!」
「痛った!」
突進してきたタイミングで左に跳んで避けることは出来ましたが、右腕に嘴がかすって出血しています。
対するセフトホークは、嘴が完全に岩に刺さって身動きが取れなくなっています。
翼と脚をバタバタと動かして抜け出そうとしていますが、嘴はピクリとも動かず無防備な状態です。
その隙に、嘴の隙間から嘔吐剤を直接口の中に入れて破裂させました。
四本の嘔吐剤を全て飲み込ませるとセフトホークは聞いたこともない声で小さく鳴きました。
口の中のものをまともに排出できない状態になり、その場に倒れ込み動かなくなりました。
「はぁ…勝った…!」
復活されても嫌なのですぐにとどめを刺すことにします。
出来れば首を落とすのが一番なのですが、一発で落とせるほどの技量はないので素直に胸に剣を突き立てることにしました。
剣を刺すとセフトホークが反射で少し動いた後、また動きを止めました。やっぱり生き物を殺すのはあまり気分のいいものではないです。
「早く、皆に合流しなきゃ」
そう思ってセフトホークに背を向け歩き出した瞬間、視界が逆さまになりました。
「ゴホッゴホッ!」
口から血が止まりません。
どうやら吹き飛ばされて脇腹を強く打ったようです。
さっきまで居た所を見ると、そこには真っ黒なセフトホークが立っています。
「嘘でしょ。…黒化?」
治癒魔法で治して立ち上がると黒いセフトホークはまるでそうだと言わんとばかりにこちらを見下ろしてきます。
今使わされた治癒魔法は五回目。
残り回数は四回で、もう折り返してるっていうのによりによって黒化ですか?
低確率で死んだ魔物が蘇り、さらに凶暴性、強さを増す黒化。初の大森林戦の時に遭遇したオーク以来です。
ビュンと音が鳴ったことを認識した頃には既に私の体は空中に投げ出されていました。
「え?」
また吹き飛ばされました。
もう見るとか音を聞くとか関係ない速さです。
そしてまた治癒魔法を使わされました。
残り三回、これは本当にやばいかもです。
「グァ?」
セフトホークは首を傾げこちらを見つめています。
認識できない以上どうあがいても負けだから早く逃げたいのに、逃げる隙すらない。
一瞬でも目を離したら死ぬ、そんな予感。
次に目にしたセフトホークは目の前にいました。
「…っ!」
正確に言うと少し左前。
私の左腕に嘴が貫通しています。
普通に吹き飛ばされるとかよりも痛みが続いて、声も出ないです。
治そうにも刺さったままなので治せません。
その状態のまま、セフトホークは上を向き始めました。
当然嘴も上を向くので、私の足は地面を離れ宙ぶらりんになります。
左腕だけで私の全体重を支えているので肉が裂けてきて千切れそうです。
「グァグァ。グァ!」
どうやらセフトホークはこのまま私にとどめを刺すつもりのようです。
その前にどうにか奥の手を使って道連れにしようとした時、左腕から流れてきた血が右腕までつたり、なんとか握りしめていた竜剣を濡らします。
「グァ!?」
次の瞬間、私は無意識にセフトホークを蹴り飛ばしていました。
「治癒魔法、はいいや。」
左腕は治さず、そのまま左腕で落としてしまっていた剣を拾います。
私を見て、セフトホークの纏う雰囲気が変わりました。いいえ、変わったのはこちらかもしれません。
「続き、しようか。かかってきて」
そう言うとセフトホークはまた私を吹き飛ばそうと後ろに凄まじい速さで回ってきます。
ですが、もうそれは見えています。
「双剣術」
私に触れようとしてきた翼を剣で弾き、逆にこっちから斬りつけます。
思わず空に逃げようとしたセフトホークに右手の剣を投げ、空いた手で顔を掴み先ほどの斜面に叩きつけました。
セフトホークの身体から剣を抜き、今度は私がセフトホークを見下ろすように立っています。
「私の勝ちでいい?」
決着をつけようとした時、聞き慣れた声が耳に入ってきました。
「ルド!」
「…ルドちゃん?」
「アンタ、その目どうなってんのよ!?」
「え?」
―――キシリカ・ソレイユ
セフトホークの雛を討伐した後、急いでルドがいる方向に走ってきたわ。
言っちゃ悪いけど私達の中で一番弱いのはルドだから、早く援護しに行かなくちゃ。
その途中でもう一体のセフトホークの討伐を終えたロゼリアと運良く合流したから二人で一緒に先を急いだ。
三キロメートル付近に着いた時、近くでなにかが叩きつけられたような鈍い音が聞こえたから、ルドかもしれないと思ってそっちの方を見に行ったら、セフトホークの前に立って見下ろしてるルドがいたわ。
「ルド!」
「…ルドちゃん?」
「アンタ、その目どうなってんのよ!?」
「え?」
ルドの右目はいつもの銀色から赤色になっていて他のところもなんとなくルドっぽくないわね。
特に変なのは、雰囲気。
―――ルド・エタニティ
「キシリカ、なに急に変なこと言ってるの?」
「いや、変ってアンタのほうが…」
「ルドちゃん後ろ!!」
「嘘!?」
完全に油断していました。
セフトホークが私が二人と話している内に立ち上がって攻撃してきました。
反応できなかった私を、攻撃が当たる前にロゼリアが水魔法で包んで運んでくれました。
ついでに血の汚れも落ちて身体が綺麗になって最高。
「ごめん、ありがと。ロゼリア」
「どういたしまして。それよりルドちゃん、なにがあったの、っていうか。なにその腕」
「嘴が貫通しちゃって。あはは」
「あははじゃないわよ」
「平気平気。今の私ならなんでも出来そう、だったんだけど、あれ?」
なんかすごい左腕痛いんですけど。
というか、色々戻ってる?
「アンタ、目の色戻ったわね」
「…えぇ?」
「二人共、来たわよ!」
目の色が戻ったことに動揺しているとセフトホークがまた空を飛んで突進しはじめました。
「あれ、どうやって倒したのよ?」
「さっきは岩の斜面におびき寄せたんだけど、二度目は効かないと思う」
「じゃあどうすんのよ?」
「わかんない」
「はぁ?」
二人も戦闘後なのでまともに戦えず、どうしょうもない感じがしてきます。
とりあえず、二人が突進をまともにくらうと致命傷なので、治癒魔法で全快した私が前に出て突進を受けることになりました。
その間に二人にはこの状況を打開するための案を考えてもらうことにしました。
「そういえばルドー!アンタ、騎士団長から奥の手貰ってなかった?」
「あ…忘れてた」
さっき使おうとしてたのに頭からすっかり抜けてました。
「奥の手ってどんな感じなのよ?」
「シエル団長によると広範囲を消し飛ばす武器らしい。シエル団長のスキルの一端を封じ込めてるみたい」
「てことは近くにいると危ないのかしら?」
「たぶんね!」
奥の手の情報を伝えるとどうやら作戦が固まったのか二人が動き始めました。
「どうなったの?」
「崖から飛び降りるわよ!」
「はい?」
二人の言う崖の方向に走りながら詳しく話を聞くと、崖から下の川まで飛び込む時に、後ろを追いかけてくるセフトホークに奥の手をぶん投げるという作戦らしいです。
「頭おかしいんじゃないの?」
「下が水なら平気よ!」
「水に飛び込んだら普通死ぬよ?弾け飛ぶよ!?」
「しょうがないじゃない、他の案はないの!それに普通に奥の手を投げたら避けられるでしょう!?」
確かに案が他にないのも事実だし、避けられるのもその通りなのですが、流石に水に打ち付けられたら死にます。
一応ロゼリアが先に行って衝撃吸収用の泡をいくつも作ってくれているそうなのですが、こないだのと一緒だったらほとんど意味がないような。
「ロゼリアー!準備できたー!?」
「完璧よ、キシリカちゃん!」
「なーにが完璧なのか一から教えてくれない!?」
「行くわよ、ルド!」
「グァ!」
崖の端に着いて、後ろを見るとセフトホークがもうすぐそこに迫っていたので諦めて跳ぶことにしました。
「先に行って!」
キシリカとロゼリアが先にジャンプして落ちていったのを確認した瞬間、私も腰につけてあったオーブ状の奥の手を取り出し、それを手で砕きセフトホークに投げました。
「グランシャリオ!」
次の瞬間、私の視界は黒一色になりました。
黒い球体状の空洞が生まれ、セフトホークを丸ごと、いや周りの空間を丸ごと飲み込みました。
それはまるで、ブラックホール。
「炎魔法!」
「水魔法!」
二人は自分の魔法でなんとか降りられたようです。
キシリカは足から炎を噴射し、ロゼリアは水に当たる直前に水をトランポリンみたいな形に変形させて勢いを殺していました。
私は、どうしましょう。
「ルドちゃん!キャッチするから!」
前にセフトホークに掴まれて落とされた時のように泡を使い、ロゼリアが私をキャッチしようとしますが、奥の手の影響であの時より私の落下スピードが上がっているのであまり効果がないです。
「さっきロゼリアがやってたのはもうできないの!?」
「ごめんね!体力がもうなくて!」
「ロゼリア!限界まで泡で勢いを殺しなさい!私が空中まで直接ルドをキャッチしにいくわ!」
泡で勢いを殺す時に地味に負傷しているので治癒魔法を使おうとしましたがなぜか使えませんでした。
残念ながらもう治癒魔法は使えないのであとは二人に任せるしかなくなりました。
「ルドォォ!!」
水面からあと十メートルほどの距離まで落ちてきたとき、キシリカが私の方に飛んできて私を抱きかかえることに成功しました。
そのまま足からの炎を少しずつ弱くして、なんとか水面への着地をすることが出来ました。
「限…界」
「…私も」
着地したキシリカは限界が来たらしく私を抱きかかえたまま、水の中に倒れました。
横にいたロゼリアも限界だったらしく前方向に倒れて川に浸かりました。
「ありがとね、二人共」
「いいのよ、それに無茶な作戦にしたのはこっちだもの」
「生きててよかったわ、ルドちゃん」
そんな会話をしながら三人で流されています。
「…ちなみにさ、体が動く人っている?」
「指一本動かないわ」
「私もよ」
「私もなんだけどさ…このまま流されるのってまずくない?」
「「…」」
沈黙が続きます。
「…遺書でも書いてきたほうがよかったわね」
「まだ死ぬって決まったわけじゃないから!」
「どうしましょうね、これ」
「アンタ、治癒魔法は?」
「なんでか分かんないけど使えないんだよね」
「…そう」
「「「………」」」
こんな会話をしながら、死を覚悟し目を閉じようとした時、さっきまであった崖の方から声が聞こえてきました。
「皆さーーん!!!」
「リーダーさん!」
「今助けますから少しだけ待っていてください!」
リーダーさんを筆頭に騎士の皆さんが助けに来てくれました。
どうやら私達のことをずっと追いかけてきてくれていたようです。
「すみません、ほんと助かりました」
「いえ、こちらこそ戦闘ではほとんどお役に立てずすみません」
時間は掛かりましたが、なんとか川から陸まで引きずり出してくれました。
感謝しかありません。
「セフトホークは一体どうなったんでしょうか? それに、あの穴は一体?」
リーダーさんの指差す方を見ると跡形もなく消え去った崖が目に入ります。
「奥の手を使ったんですけど、それで消し飛んだみたいです」
「…とんでもない威力ですね」
ほんとに、とんでもない威力です。
まさか地形が変わるほどとは思っていなかったです。
ですが、崖が緩やかな斜面になったおかげで助けてもらえたので結果オーライですかね。
「ルドさん達は私達が担架でお屋敷まで運びますのでごゆっくりなさっててください」
「ありがとうございます」




