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記憶の世界の探しもの  作者: yukiko
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暗闇の中に

人の気配がする、真っ暗な空間の中に誰かがいる、

立ち上がろうとしても足も腕も動かない、

何がいるのか見ようとしても目も開かず声も出ない、

すると部屋の中にいる何かが1歩づつ近づいて来た!

早く起きないと心臓が俺とは別の生き物のように高鳴っている、

部屋にいる何かはゆっくり近づきベッドに乗って来た、

ベージュの掛ふとんが沈み「何か」がだんだんと顔に近づいて来る、

ゆっくりゆっくり動いて上がって来るのがわかった、

俺の腕はまだ動かない、目も開かない声も出ない。

いよいよ「何か」が顔のところまで来た、

もうダメだ殺されるかもしれない!頭がいっぱいになった時に、

腕が動いた、ベージュの掛ふとんを引っ張り頭まで掛けた。

布団の中で丸くなり、腕と足が動くことを確認してから布団を勢いよくめくり、

ベッドから降りて急いで電気を付けてベッドの方に振り返った!


しかし、そこには誰もいなかった。


こんな俊敏に動いたのはいつ以来だ?

ヒンヤリと冷えた部屋なのに俺は汗ばんでいた。

冷蔵庫を開けてペットボトルの冷えた水を飲んだ、

ソファに座りカーテンを開けた細い月がこちらを見ていた、

リアルな夢だった。本当に夢だったのか?

トイレや風呂場も確認したが誰もいなかった。

まさかお化け?そんなモノがいる訳ない、電気を消してまだ温かい布団に入った、

スマホを見るとまだ午前3:27分だった。もう一度寝よう。

俺は目を閉じたなかなか眠れないかもしれない、

そんなことを考えていたが眠りはすぐに訪れてくれた。


次に目が覚めたのは午前6時だった、ベッドの横のカーテンを開けて、

エアコンのスイッチを入れた。

部屋が温まるまでスマホを手に取り朝のニュースを読んだ、しかしいつもと違い頭に入って来ない、

昨日のこともあり熟睡は出来なかったようで身体がダルかった、30分は温かい布団に捕まり、

重い体を布団から出して温まった部屋で朝の支度を始める、

歯を磨き食パンと目玉焼きを焼きコーヒーを入れる、

いつもと同じ日常、違うのは昨夜の訪問者と真夏の空色の手紙だけだった。


朝ごはんを食べて、赤い螺旋階段を降りてポストに行くと、

ポストの暗く狭い空間に真夏の空色の手紙は入っていた。


手紙を取ってため息と共に家に帰って来た。

開けなくても数字はわかるがイラストが気になり手紙を開けた、

数字は7だった、裏のイラストはアップルパイのイラストだった、

絵本で見るシマシマ模様のアップルパイのイラストだった。

すべての手紙を並べて考えた何か共通するものがあるのか?


滑り台、プール、手紙、アップルパイ・・・ますます謎は深まるばかりだった!

こんなクイズをテレビで見たことがある。何かのクイズなのか?誰のイタズラなのか?

考えても答えは出ない、俺は残っていた依頼された絵を描き始めた。


依頼を受ける時は写真を送ってもらい頼まれた似顔絵を描く。

今は還暦の母の絵と結婚が決まったカップルの絵を描いている。

たいしたお金にならないが今はこの生活を楽しんでいる。

絵の具を出して今日も色を塗る。絵に集中するとあっと言う間に時間は過ぎる。


時計を見ると午後7時を過ぎていた、

今日は1日家にいたのでたいした買い物は無いがいつものスーパーに行くことにした。

昨日の夜のこともあり少し家から離れて気分転換したかった。

俺はまた茶色のトレーナーとジーンズに黒の古いダウンを来て夜の住宅街に出た。


冬の夜。

張り詰めた冷たい空気。

静まり帰った住宅と逆に家の中は温かく幸せな空間なのだろう、

そんなことを考えながら俺はまた一人で歩いて行く。


いつものスーパーいつもの店員いつもと同じお惣菜。

スーパーの店員の顔を覚えた。夜働いているのは、おじさんと高校生が多い。

俺はまた値引きされた惣菜に手をのばす。しんなりしたカツを見ながら考えた。

俺はこのカツが食べたいのではなく安いから食べるを選択した。

本当に食べたいモノはなにか?思いつかない。いつも俺には自分の意見が無い。

値引きされているという理由だけで食べ物を選んでいる自分が悲しくなる。

このカツのように誰にも買ってもらえず俺の価値が下がって行くのか?

そんな人生でいいのか?

そんなことを考えていると、LINEが入った。

人が少ない夜のスーパーに響いたスマホの通知音に驚きながら画面を見ると。

竹村大翔たけむらひろとからご飯の誘いのLINEだった。

俺は少し考えて空の買い物かごを元の場所に戻してスーパーを出た。


つづく


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