夢の中
その時に下からカイが階段をトントントンと急いで上がって来た、
「何かおかしいにゃ!」カイは部屋の前で焦っている様子で話した、
俺は何も言わず指でそのきつねのお面の子を指した。
カイは俺の指した方向をゆっくり見た、
「あ、あれはだれにゃ?」
「し、し、しらないよ!」俺は声にならない声で言った。
「周りを見るにゃ!ぼやぼやしてベールに包まれているみたいにゃ、
これはおまえの夢の中かもしれにゃい!」
「えっ夢の中?夢の中にも行けるのか?」
「現実でも夢でも関係にゃい、記憶は記憶だにゃ!」
そんな話しをしていると、
さっきまで寝ていた子どもの俺はゆっくり起きて、
きつねのお面の子と向き合って立っている、
きつねのお面の子がゆっくり手を出すと、子どもの俺はその手を握った、
そして2人は手をつなぎ俺たちの前を通り階段を下りて行った。
「あとを追うにゃ!」
「えっ!あ!そ、そうだな!」俺はまだ事態を把握できなかった。
2人は家を出て真っ暗な道をゆっくり歩いている、
何も話しはしていない様子だった、昼間の暑さが嘘のような寒さだった、
「やけに寒いにゃ!」
「これは夢の中だから季節は関係無いのかもしれない。」
カイは俺の肩に乗って来た、
「どこに向かっているにゃ?」
「この先にあるのはさっきお祭りをしていた神社だけだ!」
「そこに向かっているにゃか?」
「わからない、でも多分そうだ!」
俺たちの予想通りさっきの神社の前に来た、
2人は行き先が決まっているのか迷い無く細い石階段を上って行った。
俺とカイも細い階段を上った、
階段を上ると2人はさっきお祭りをしていた場所ではなく神社の祠の後に行った。
数時間前のお祭りが幻だったかのような静けさだった、
夢の中だからここでお祭りは無かったのか?頭が混乱している。
祠しかない小さな神社で人は誰もいない、夜に泣く虫の声だけがやけに響いていた。
俺とカイは祠の後ろに消えた2人を急いで追いかけた、
何度か祠の後ろには行ったことがあった、
夏にみんなでカブトムシを取りに行き、夜は肝試しもしたことがあった、
なのにそこは始めて来たような知らない場所だった、
なぜなら、祠の後ろに道があったからだ。
「こんなところに道なんてあったかな?」
それは道とは言えないような、木と木の間の小道だった、
2人は迷いなくその小道を進んで行った、
俺とカイも置いて行かれないようにその小道を歩いて行った、
少し歩くと崖がありそこに木で出来た古い橋が掛けてあり、
崖の向こう側と繋がっていた。
「あの橋はイラストの橋だ!」俺はカイに言った、
「2人は橋を渡って向こうに行ったにゃ!」
俺たちも急いで橋を渡った。
古い橋だが作りはしっかりしていた、
橋の欄干から下を覗いたが暗くて何も見えなかった、かなりの高さがあるのはわかった。
微かに水の流れる音がする、でもこの近くに川は無い、
いったいどうなっているんだ?
「早くするにゃ!」カイに言われて俺は急いで橋を渡った。
「2人はどこだ?」
「あそこにゃ!」
カイが指した場所を見て驚いた。
そこにはツリーハウスがあった、
太く大きな木の上にある小さな小屋、昔アニメで見たようなツリーハウスだ、
ドアに扉はなく屋根があり壁があるだけだ。
木の横にツリーハウスまで上がる為の赤い螺旋階段が設置してあった。
「赤い螺旋階段・・・」
「どうやらあそこに何かが隠されているみたいにゃ!」
「2人が下りて来るのを待とう!」
俺とカイは少し離れた場所からツリーハウスを見ていた、
俺は冷えた土の上に腰を下ろした、
カイは俺の横で草の上で丸くなっている、
真っ暗な森、誰かに見られているような感じもする、
気が付くと虫は1匹も泣いていない。
虫は寝てしまったのか?静か過ぎて耳が痛い、
昔から暗闇が苦手だ、暗闇が好きなのは泥棒ぐらいで普通の人は苦手だと思うが、
暗闇にいると闇に吸い込まれて二度と帰って来れない気がするから苦手なんだ。
我ながら子どもみたいだな。
ツリーハウスの中で2人は何をしているんだ、
覗きに行きたい、でも俺はお面の子が怖かった、
理由はわからないがとにかく恐怖を感じていた。
そんな考え事をしていると、カイが急に頭を上げてこっちを見た、
ツリーハウスを見ながら、
「あの2人は、おまえのことは見えないにゃ!」
「そうだな・・・だからなんだよ?」
「おまえだけツリーハウスに行ってみるにゃ?」
「えっ?だけどあのきつねのお面の子の正体がわからないしな・・・」
「おまえ怖いにゃか?」
「ち、ちがうよ。そんな訳ないだろ!」
カイは目を細めて疑り深い顔でこっちを見ていた。
「こんなよくわからない世界であやしい子どもの近くにはいけない、
ここで様子を見てから行こうと考えていたんだ!」
「うそが下手にゃ、じゃもう少し様子を見るにゃ!」
そう言ってカイは葉っぱの上で座り直してツリーハウスを見た。
気まずい空気が夜の深い森の中に流れていた。
つづく




