心の闇
俺とカイは子どもたちの後をつけた、
子どもたちは食べたお菓子を黒いビニールの大きなゴミ箱に入れて、
ヨーヨー釣りで取った水の入ったヨーヨーを何個か持って、
細い階段を降りてそれぞれの自転車に乗って帰って行った。
夏のまとわりつく風と止むことの無い虫の声、土と木の自然の匂い、
いつもは静まり返っている祠しかない神社が明るく賑やかで、
お祭りの日だけ異空間のようになるのが俺は好きだった、
この日だけは夜まで遊んでも誰にも怒られない、
みんなが今抱えている悩み、不安を横に置いて、
お祭りという異空間を楽しんでいる。
そんな特別な時間が終わった後のお祭りの帰りはやけに寂しかった。
みんなと別れて、子どもの俺は寂しく家に帰った、
俺とカイも一緒に実家に帰って来た、「おかえり!」母さんの声がする、
子どもの俺は何も言わないで階段を上り部屋に向かった、
俺とカイは目を合わせた、
「反抗期だにゃ!」
「うん、そうだな!」
この時の俺は中学3年だ、この前見た雪かきをしていた時より、
背も高くなり、声も変わり、目も鋭くなり、
洋服も半ズボンは履かないで、
デニムにTシャツとシンプルな服装に変わっていた。
父親はあの大雪の日から帰って来ていない。
高校受験まであと半年、俺は近所の塾の夏期講習に参加していたはずだ。
子どもの俺は2階から降りてくるとお風呂に向かった、
その間にカイと俺は俺の部屋に行った、
部屋の中のおもちゃが減り、洋服と漫画で部屋の中はごちゃごちゃしていた。
「おまえ受験勉強してたにゃか?」
「してたよ!」
「結局、きつねのお面ちゃんはいなかったにゃ!」
「おかしいな?確かにいたはずなのに?違う場所だったのかな?」
カイは机に乗って俺に顔を近づけて話して来た、
「どうするにゃ?次の場所に行くにゃか?」
「う〜ん・・・もう少しここにいていいか?」
カイは外で俺は子どもの俺の部屋で少し様子を見ることにした。
子どもの俺はお風呂から上がるとベッドに寝転び漫画を読み始めた。
俺は部屋の端に立ってその様子を見ていた。
この頃の俺は何もやる気になれなかった、
塾、勉強、宿題とやらないといけないことが多すぎて、
すべてを投げ出して逃げ出したかったんだ、でも簡単には逃げられない、
自分の将来や母親のことを考えると逃げることが出来なかった。
やる気になれないでもやらないといけない、
大きな黒い影に追われて、逃げても逃げても追いつかれて、
気がついたら逃げる場所がなくなっていたような気がした。
俺はたまに帰って来る父が好きだった、
理由はわからないが安心出来る存在だった、
それは何が俺の中の遺伝子や細胞が感じたものなのかもしれないが、
俺は父親に会うと無条件で心が落ち着いたんだ、
その父親ともう半年も会えていなかった、
「父さんに会いたい」母さんに言ったら、
母さんはどう思うか?母さんの気持ちを考えたら、
その一言が喉に詰まり言い出すことが出来なかった。
色々なことが重なり、誰にも自分の中の「弱さ」を話すことが出来なくて、
俺は心を閉ざし、誰も心が開けないようになっていた。
そんな俺の心の支えが絵だったんだ、この時良く絵を描いていたはずなのに、
この部屋にはスケッチブックが1冊も無かった。
少しすると子どもの俺は漫画を読んで寝落ちしてしまった、
俺はスケッチブックを探したけど見つけることは出来なかった。
「おかしいななんで無いんだ?」
カイが外で待っているからそろそろ次の場所に行こうかと思い、
俺は探すのを諦めて部屋を出ようして、部屋の空気が変わったことに気がついた。
何かおかしい・・・
大きなベールで覆われたような、視界がハッキリしないモヤモヤしているような
「え?空気が変わった?」俺は独り言を言いながら振り向くと、
ベッドの横に誰か立っていた。
俺は驚いて声がでなかった、立っていたのはきつねのお面を付けた子どもだった。
つづく




