雪だるま
次の場所はまた俺の実家の前だった。
季節は冬。そして始めての夜だった。
あたりは暗く雪はやんでいるが足首まだ積もっている。
カイは俺の肩に乗っている、
「さ、さ、寒いにゃ!」カイは震えていた。
雪の夜はなんて静かなんだ、
すべての音を雪が吸収してしまったかのように、すべての音が消えていた。
耳が静けさに慣れてくると「サクサクサク・・・」
サクサクと雪かきをする音がする。
実家の玄関の前の3段の階段を登り庭を見ると子どもの俺が大きなシャベルで雪だるまを作っていた、
雪を転がすほどのスペースが無いから、
シャベルで集めた雪を丸い形に整えて、雪だるまにしようとしているようだ、
「雪足りるか?」父さんが言った。
「雪が足りない、もっと持って来て、」
父さんと雪だるまを作っている?そう言えば大雪が降った時があった、
あれは俺が中学2年生の冬だった。
大雪で父さんはお昼で帰って来たんだ、父さんと久しぶりに話して楽しかった・・・?
いや、楽しく無かった、父さんの話しで気持ちが一変したんだ。
「正樹、学校は楽しいか?」
「うん、楽しいよ、友達もたくさんいるよ!」
子どもの俺は雪だるまを作りながら話している。
「そうか、よかったな!お母さんと良く話すのか?」
「母さんと?話すよ?なんで?」
子どもの俺は雪だるま作りに集中している、
「それがなお父さん仕事が忙しくて、家に帰って来れなくなるんだ、
だからしばらくの間はおまえとお母さんの2人で暮らすことになると思うが大丈夫か?」
子どもの俺の手は止まった。
「父さん帰って来ないの?」
「帰ってくるよ、仕事が忙しくてしばらくは会社の近くに住んで、
そこから通勤することになりそうなんだ、
おまえももう中学生だから大丈夫だよな、お父さんがいなくても!」
子どもの俺はまた雪だるまを作り始めた、
「うん、大丈夫だよ。」
俺とカイは目を合わせた、「あれは強がりにゃ!」
「そうだな、強がってるだけだな。」
少し前から俺は薄々気がついていた、
父さんと母さんの間にある薄い壁に、なにか嫌なことが起こるのでは?
と俺は怖かったんだ。
「親って特別な存在だよな、親だけはいつも自分の味方で、
大きなクッションのように受け止めてくれる存在であってほしいんだよな、
この時に俺は何かが崩れたような、目の前の道が突然無くなったような、
困ったことがあってももう誰も受けて止めてくれないような、
恐怖を感じた、雪の冷たさかもしれないけど、
体中の血液がどこかに行ってしまったような寒さを感じたんだ、
恐怖で言葉が出なかった、将来の不安、まだ来ない未来の不安。
この時の俺には受け止め切れなかっんだ。」
「そろそろ、中に入ろう、風邪を引いたら大変だ!」
父さんが言った。
「うん、わかった。」
子どもの俺は元気な声で言った、それが精一杯の反応だったのだ、
「俺お風呂に入る。」
「そうだな、体が冷えただろすぐに風呂に入れ!」
子どもの俺は走って家に入りすぐにお風呂に向かった。
カイを外に置いて俺も家の中に入った、
子どもの俺は雑に服を脱いで急いでお風呂入りで泣いていた。
俺は俺を抱きしめてあげたかった、「ツライのは今だけだ頑張れ!」
届かない言葉を呟いた。
子どもの狭い世界では親がすべて、それが無くなってしまうということは、
身体の一部をもがれるぐらいの痛手なんだ。
子どもの俺はお風呂からあがり自分の部屋に行った、
部屋の小さな緑の電気ストーブを付けてその前で丸くなっている。
「かわいそうだよなカイ。」
そう言って振り向いた、カイがいない、
「あっ!外に置いて来たんだ!」
俺は急いで外に出た、半分凍ったカイが座っていた、
「オ、オ、オレのこと忘れてにゃいか?」
「まさか忘れる訳ないだろ!」俺はカイを玄関に入れた。
父さんはお風呂、母さんは寝室にいる、カイが玄関にいることは誰にもバレない。
「絶対忘れてたにゃ!」
怖い目でカイ睨んで来た。
「そんな訳ないだろ!」俺はどうにかごまかした。
「それで子どものおまえは大丈夫にゃのか?」
「いや、だいぶ落ち込んでる、勘が良いんだよ俺は、
父さんと母さんの仲が悪いことは知ってた、
この時の俺はこのまま父さんが帰って来ない気がしたんだ、
確かにこのまま帰って来なかったんだけどな。」
昔から嫌な勘だけはよく当たったんだよな!
「ここにも番人はいないにゃ、寒いから次に行くにゃ。」
カイが言った。
「冷たいな、子供の俺があんなに落ち込んでいるのに。」
「大丈夫にゃ、すぐに元気になるにゃ、過去のおまえより今のおまえが大切にゃ。」
カイの言葉が嬉しかった、俺の心配をしている人なんて殆どいないから、
俺たちは外に出て青い螺旋階段を下ろした。
真っ白な雪の中の青い螺旋階段もキレイだった。
「早く行くにゃ。」
カイに続いて俺も急いで階段を上った。
つづく




